Act 2
先ほどにもまして外は闇に呑まれていた。おばあちゃんが杖を取り出し空へ掲げると、その真上に小さな光る球体が浮かんだ。
「魔法族なんですか?」
「まぁ、一応ね。それと敬語は無用だよ。」
そのまま夜道を歩いて行った。やはりというべきか人通りは全くなく、虫の音も聞こえない。葉が微かに揺れるだけで、本当に何もない。
「——ねぇ、どうしてここで生活を?」
無言に耐えられなくなり、聞いてみた。
「どうしてかい。そうだねぇ、神隠しみたいなもんさね。」
おばあちゃんは笑い飛ばした。
「山に魅入られて、そこからいつしか抜けられなくなってねぇ。」
おばあちゃんは初めて弱気になった。
「そういえば、名前はなんていうの?」
「そういう時、まずは自分から名乗るもんだろうに。まぁいい、私はフルール。で、アンタは?」
「ぺラン。」
——フルールか。彼女らしい。
「ちょっと、何笑ってるんだい?」
怒られてしまった。
しばらく歩いたところに、小さい石造の門が現れた。
「はぁ、ようやく着いた。まずは長に挨拶しなきゃダメなんだね。」
門のある部分に触れると、門の色が変化した。
「さ、くぐればすぐだよ。」
背中を強く押され、倒れ込むように門を潜った。すると人間族でもわかるくらい空気が一変して、吹いていた風も急に止んだ。
「ほぉ、この子かい。面白いねぇ。」
声がして前を向くと、上品な着物姿の九尾族が佇んでいた。
「オノリーヌだ。話は聞いた。何はともかく、ここで生活することを許そう。」
「あの! その、学校とかがあるので——。」
オノリーヌの目が光った。
「気にするな、手は打った。」
なぜだろう。彼の目に若干の恐怖を覚える。足を取られているような、縄が体に巻きついているというような、なんとも言えない感覚だ。