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シルヴァンから手を離し、ようやくあのレンガの家へたどり着いた。だが不幸にも、その前には見慣れた車が止まっていた。
正直、入りたくはなかった。でも今入らなければ、今度いつフルールにあえるかわからない。日はすでにくれようとしている。もう迷っている暇はなかった。
扉を開けると、そこには待ち構えていたように両親が佇んでいた。
「ほら見なさいよ! どこがいないっていうの!」
「確かにそうだねぇ。だが『今まで』はいなかったのは確かだね?」
母は悔しそうに歯軋りしていた。
「とりあえず、こいつは連れて帰る。これ以上止めるなら誘拐として訴えますよ!」
父が強引に腕を引っ張った。きっとひどい跡ができるだろうな。けれどきっとシルヴァンは——。
そう考えると不思議と笑みが浮かんだ。
「は? 何笑ってるんだよ!」
今度は父が僕を殴ろうと腕を振り上げた。だがその手は誰かの手に引き止められた。
「今までの行動を調べさせてもらったが、一言で言うなら親として失格だ。子供の訴えを聞き入れず、かえって闇に拍車をかけた。裁判で親権を争おうが敗色濃厚だ。まして我々の住民を奪おうとするのなら、刑事責任を追及することもできる。」
「あんたは一体何者なんだよ!」
「王立奴隷協会保護観察区管理長。ようするに虐待などによる被害者を保護する場所のお偉い様です。」
うっすらと笑みを浮かべ、父の手をへし折った。
「王立? だったらなんだっていうのよ! あいつはうちの子で、あんたなんかにはどうすることもできやしない!」
「残念ながらそれは間違っている。私はテール侯爵という特権階級でもある。戸籍を改変するぐらい、簡単すぎる。ましてそれは法律でも擁護された私の仕事だ。」
三人が言い合いをしている間を縫って、フルールが僕の手を引いた。
「戻るよ。」




