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After the Bullying  作者: Saki Tachimazaki
Prologue
1/13

Prologue

「弱者にも手が差し伸べられる。それがこの国です。それは家族だけでなく行政からでもあり——」


 先生はそう言った。だがもし本当にそうなのならば、僕は今、こんなにも傷だらけになっていることなどないはずだ。

「よかったじゃんか『モップ』。仕事ができたな。」

 彼はバケツいっぱいの水を床にぶちまけた。消えかけの電気がこの惨劇を薄めてくれるだろうか。残念ながらそうは思えない。

「そうだ! 俺らは『優しい』から手伝ってやるよ。」

 そう言って僕の頭を鷲掴みにし、床にこすりつけた。

「おぉー! ちゃんとモップの仕事できるじゃんか! えらいえらい。」

 額がタイルの角に何度も当たって、きっと赤く腫れているだろうな。

 後ろでは下品な笑い声が聞こえるが、中には作り笑いのものもいる。ついこないだまで友達だと言っていた奴だ。何かあったら頼ってと言っていた奴だ。それになにも制服姿だけじゃない。教科書を小脇に抱えた小太りの大人もいる。ジャージ姿の頑固そうな顔だって。

 僕には味方なんていはしない。


「——ただいま。」

 声が出ずにか細い声で言った。

「どうしてそんなことも言えないの!」

 母だった。

「——ごめんなさい。」

「そんなんだからいじめられるのよ! いい? 相手が悪いんじゃない。アンタが悪いの! そんなぼそーっとしてるからよ! だいたい、アンタがそうしているせいでうちの評価はガタ落ちよ! 一家の恥よ! もう恥ずかしくて生きていけないわ! そもそもなによ——」

 またこれだ。

 どこもかしこも僕が悪い、僕が悪い。言われたことを忠実にこなして何が悪いのか。友達と笑い合って何が悪いのか。髪を伸ばして何が悪いのか。

 僕にはもうわからなくなっていた。

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