20.この命、大切である。(完)
「ねぇお母さん。この写真の人、お母さんとお父さん?」
「えぇ、そうよ」
「でっかいキノコのケーキだ」
「ウェディングケーキって言うのよ」
「ふーん、お山みたい」
「そうね」
「じゃあこっちの赤ちゃんは?」
「それはアナタよ」
「えーっ、うっそだあ、僕こんな小さくないよ」
「だんだん大きくなるのよ」
「ふーん、そうなんだ」
「いっぱいご飯を食べたら大きくなるのよ」
「このキノコのお山みたいに?」
「そうね」
「お父さん、そろそろ帰ってくる?」
「えぇ、そろそろ帰ってくるわよ」
「早く帰ってこないかなー」
「そうね」
「そしたらみんなでご飯食べるんだもんね」
「えぇ、もうテーブルに並べてあるから、お父さんが帰って来るのを待つだけね」
「お母さんのお腹の赤ちゃんも、ご飯食べる?」
「お母さんが食べたご飯が、赤ちゃんにもちゃんと届くのよ」
「ふーん、そうなんだ」
「あら、今からそれやるの?」
「うん、お父さん帰って来るまでね」
「もうそろそろ帰ってくるわよ?」
「うん、それまでお母さんと指すの」
「しょうがないわね」
「振り駒していーい?」
「いいけど、スープの中に落とさないでね」
「よーし、いくぞー」
その時、玄関のチャイムが鳴った。
――結局、私は一度も恋愛なんて出来なかった。
それは、最初から――
初手▲愛だったから。




