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王手☆スイーツたっぷりオフィスラブ ~甘い恋愛なんて将棋しか取柄の無い根暗な私にはマジ無理な世界だよ~  作者: 御実ダン


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14/20

14.この試練、彼の想いである。

 聞き間違いでなければ、いま妹みたいと言った気がする。

 喪女にとってそれはどう採点すれば良いのかしら。


 目をぱちくりさせる私。


「えっと、俺には妹がいてさ――」


 ここは思わず部屋を飛び出すシーン。


 そう思ったのに、彼が続けた言葉が意外で――


「――5年前、交通事故でな。生きていれば今の安奈と同じ年齢だった」


 私の頬を雫が伝った。


 心を読める、そんな力は私には無い。

 この胸の痛みは何なんだろう。


 彼がそれを私に話してくれたことに意味があった。

 彼の気持ちに寄り添い、泣いた。


「……うっ、うぅ……」


 椅子を持ち、彼が席を立つ。

 私の隣に移動して、肩を抱いてくれた。


「ごめんな、妹みたいだなんて言って。安奈の気持ちも考えずに言ってしまって」


 何も言えない、声が出なかった。首を静かに、横に振るだけ。



 ――しばらく、彼の腕の中で泣いた。でも、泣きたいのは彼だったのかもしれない。


「少し、俺の話をしていいか?」


「……はい」


 ギシッという椅子が軋む音だけがリビングに響いていた。


「俺はこれまでの人生、将棋が全てだった。物心がついた頃から爺さんと親父に叩き込まれてな。でも、俺の時代は将棋が強い奴が多すぎて、結局プロ棋士には成れなかった。25歳までは頑張ったが、爺さんも親父も病気で、妹も……みんな逝ってしまって。田舎のおふくろは元気だけどな」


 コップの水を一気に飲み干して話を続ける。

 私は彼の言葉の一つ一つを胸に刻み込むように聴いていた。


「安奈の強さは、ここ数年ネット将棋を見てきた俺が良く知っている。早指しといっても3切れ(3分切れ負けルール)はやってないんだろ? 3切れなら、プロに後れを取らないどころか、本気で日本一に成れると思ってる」


「……はい」


 見つめ合う二人。棋士の眼をする靖さん。


「安奈は自分自身を奮い立たせる時は、厳しくするタイプか? 甘やかすタイプか?」


 少し考えた。プライベートはお菓子のように甘い私だけれど、将棋に関してはいつでも自分に厳しく向き合ってきた。

 そう、これが私の将棋愛なのよ。


「私は将棋に関しては自分に厳しくするタイプです」


 彼は微笑んだ。そしてこう言った。


「――よし、安奈。俺はキミに告白する」


「ふえっ!?」


「もし、安奈がネット将棋でランキング1位になったら、俺と付き合ってくれないか」


 こ、これが彼の将棋愛!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] つまり、将棋でトップにならないと愛を勝ち取れなくしたわけですね。 確かに、日本一を目指す理由があんなちゃんにしてみれば、あんまりないですからね。 巧妙な物語進行だと思います。
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