12.我感動、手料理である。
――身体には、とてもフローラルな香りのするタオルケットが掛けられていた。
それに何か美味しい食べ物の匂いもする。匂いフェチな私の鼻が反応していた。
お腹が空いたのかしら。はて、今は何時だろう。
「ふぉっ!?」
ガバッと起き上がると、知らない大きなベッドの上に私が居た。
「おう、起きたか」
リビングから彼の声がした。
「ふぁ!? 靖さん!?」
私は慌ててベッドから降り、寝室からリビングへ飛び出した。
「おはよう」
トントントンと軽快なリズムを奏でている、それは調理の音。
えっ、自炊するのですか靖さん!
女子力って何!?
「まだ休んでいても良いんだぞ。昼食の準備にもう少し時間が欲しい」
「……ふえぇ、手伝います」
そう言って私はあることに気が付いた。
明らかにサイズの大きいTシャツと短パンを履いているわけだが、これはどうみても靖さんの物である。
――ということは、だ。
「……靖さん」
私は、無い胸を押さえて恥じらいながら勇気を振り絞った。
「ん? どうした」
「あの……その……着替え……」
鍋をかき混ぜた木のヘラを持ち上げながら私の方へ振り向く彼。
「あぁ、悪いとは思ったが着替えさせた。居酒屋の臭いが移っていたからな。洗える服は洗濯して今ベランダに干してあるぜ」
そう、恥じらわずに堂々とするその気構え、大人なのね靖さん。
その気構え、私が一番欲しいわ。あぁ、赤面。
「……あ、ありがとうございます……うー……」
――洗面台を借りて、顔を洗う。ぶかぶかなシャツの袖にまで水が跳ねてしまった。
彼の指示でお皿をテーブルに並べる。なんかオシャレな食器が沢山並んでしまった。
色々聴きたいこともあったが、さっきからお腹の虫がグーグーと鳴いていた。
そういえば昨日の夜から何も食べてないよ。
「――昨日、安奈は歓迎会の時何も食べてなかったんだろ。さぁ出来た、食べようか」
心を読むプロ。一体何段なの!
「……いただきます」
「お、ちゃんと両手を合わせるんだな。いいね、そういうところ」
ほう、カボチャのポタージュにフランスパンですか……
「たいしたものですね」
カットされたフランスパンはオーブンで焼くときわめて香ばしく、朝も夜も愛食するフランス人もいるくらいなのよね。
「なんでもいいけどよォ、相手は俺だぜ。遠慮なく食べてくれ」
それに緑黄色野菜の生サラダとカットフルーツ。
これも速効性の健康食ね。しかもヨーグルトドリンクもそえて色どりのバランスもいい。
それにしても寝起き直後だというのに、あれだけ動揺せずに食べられるのは超人的な精神力というほかはない。
「よし……と――」
彼が私に問いかける。
「少し、真面目な話をしていいか?」
あれ、なんだろう、靖さんの眼を見ながら話すとなんか落ち着く。
根暗な私が上手く話せる。あの私が、男の人の前で緊張していない。
ポタージュは温かく、優しかった。




