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王手☆スイーツたっぷりオフィスラブ ~甘い恋愛なんて将棋しか取柄の無い根暗な私にはマジ無理な世界だよ~  作者: 御実ダン


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10/20

10.この喪女、激ヤバな空気である。

 ついに、彼の部屋の前まで来た。来ちゃった。

 どうしよう、ノープランで頭の中グルグルしたまま来てしまった。


「遠慮は要らない、入ってくれ。ちょっと散らかってるかもしれないが」


 視界に溢れるは異世界。もとい、彼の部屋。


 なにこの広いリビング!!

 部屋の角に観葉植物なんて置いてるし!!

 確認してないけど塵一つ落ちてないんじゃないかしら!?


「あっ、たっ、たけ……」


 暖けえ? 失礼ばかりしている私は彼の名前を呼ぼうとしたけれど、思い出せずにいた。


「『竹中たけなか』でも『やすし』でも、呼びやすいように呼んでくれ」


 彼はカッコいい柄のネクタイを外しながら、ハンガーに引っ掛ける。

 そして私にもハンガーを一つ貸してくれた。


「何か飲むか?」


「あっ、いえっ、お構いなくっ! ……やすしさん」


 気の利いた言葉は出ない。優しいのは彼だけだった。


 スーツの上着を脱ぐその姿を見ているだけで、何か癒されるものがあった。


 ほぼ毎日、同じような服装の私はちょっぴり照れながら、カーディガンを脱いでハンガーに掛けた。室温が常に一定なのか、薄着でも過ごせそうな快適さがあった。


 彼は白のワイシャツ一枚に成り、ボタンを上から二つ目まで外し、たくましい胸をオープンにした。


 袖のボタンも外すとゆっくり捲り上げて、彼はこう言った。


「さて、と。やるか――」


「ひゃぅっ!?」


 口を押えて一人壁ドン。今何て言ったのかしら!?


 帰宅後、いきなりなんて、そんな、私と……


「……おいおい、何を勘違いしている」


 リビングではない、隣の部屋のドアを彼が開けると、そこは畳が広がっていた。


 電気がパッと付くと、殺風景な部屋の中央にあったのは、私が愛しているソレだった。


「――将棋盤!」


「寝るまでの間、少しでいいから俺と指そうぜ」


 座布団を二枚、将棋盤を挟んで置くと、彼は奥へと座り私の顔を見る。


 その瞬間、彼の顔付きが変わった。


 間違いない、棋士の眼だ。


 私は一気に酔いが覚めた。彼の本気と向き合いたい、そう思いながら入室する。


 年季の入った、立派な足付の将棋盤。この香りは本榧ほんかやね。将棋盤の中でも最高峰で、何十年経ってもツヤを失わず、独特な美しさを醸し出している。あぁ、なんてステキなんでしょう。


「ほら、座って」


「……はい」


 私は一礼して座布団に座ると、ゆっくり彼の眼を見た。


 全力で相手すること以外、考えられなかった。


「「お願いします」」

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― 新着の感想 ―
[良い点] よ、よかった。 竹中さんの香車が飛び込んでこなくて本当によかったと心の底から思っています。。。
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