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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第三章 リトルウィッチ・ノクターン
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第十二話 捕らわれ少女は今日も幸せだ!②

俺が刀を抜き、目の前に居る誘拐犯達に向けて高らかと宣言した。

すると誘拐犯達は各々の武器を握り締め、戦闘態勢を取る。

そしてその、僅か二秒後。


「逃げるんだよおおおおおおおおおおおおおおお!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!」」」

「「「は、はあああああああッ!?」」」


俺を先頭としていた約五十人ほどの冒険者達が、俺の指示にクルリと踵を返しそのまま走り出した。


「「「…………」」」


そのあまりの急展開に、誘拐犯達は少しの間ポカンとしていたが。


「お、追え! 奴らを逃がすな!」

「何なんだ!? 何がしたいんだよアイツら!?」

「分からねえよ! コイツらどうかしてんじゃねえの!?」


と、口々に言い合いながら俺達を追いかけてきた。


「リョータちゃん、本当にコレでいいのかしら!?」

「いいんだよ、コレも作戦だ!」


集団の一番後ろで俺の隣を走り複雑そうな顔をするローズに、俺はチラと後ろを振り向きながら応える。


「だけど……!」

「どうした!?」


それでも何か言おうとしているローズに俺が訊くと、


「何で皆私を見てくるのよ!?」


ローズの言う通り、俺を始めとした前方を走っている冒険者達。

はたまた後ろで追いかけてくる誘拐犯達まで、ローズに釘付けになっていた。

いや、正確に言えば、走っていることによってダイナミックに揺れているローズの二つのマウント富士に。


「それはまあ……な?」

「そ、そうだな!」

「何がよ!?」


俺が前に居る冒険者の一人にそう訊くと、その冒険者は激しく頷き、それに対してローズが訳が分からなそうに叫んだ。

しょうがねえだろ、そんなけしからん物が隣でたゆんたゆんしてたら、誰でも見ちまうよ!

って、今は見とれてる場合じゃない!

俺は我に戻ると、再び後方をチラッと見る。

よし、俺達の後を追っていた誘拐犯達が、だいぶ砦から離れた。

その事を確認した俺はポケットからとある物を取り出す。

そして、俺は大きく息を吸い込み。


――ピイイイイイィィッ!


その耳をつんざくような音が辺りに鳴り響いた瞬間。


「な、何だアイツら!?」

「出入り口を塞がれたぞ!?」

「しまった、誘導か……!」


俺達とは別の冒険者の集団が、誘拐犯達の後ろの茂みから飛び出し砦の門を塞いだ。


「さてと、コレで形勢逆転だな」


俺はそう言ってクルリと回れ右すると、掌の中で先程の音を鳴らした物を弄ぶ。

コレは軍が訓練中や戦闘中に遠くにいる仲間に合図を送る、言わばホイッスルだ。

この作戦の第一段階は、ハイデルのヘルファイアで砦の中に居る奴らを誘き出す。

そしてこうやって砦の門を塞げば、俺達が砦に侵入しても簡単には追いかけて来れないし、実質今のように挟み撃ちが出来る。


「それじゃあ改めて……」


俺は再び刀を天に向けると、カッと目を見開き。


「総員、突撃イイイイイッ!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」」」


武器を振り上げ量側から波のように押し寄せてくる俺達に、誘拐犯達は後ずさった。


「ひ、怯むな! 戦え!」


それでも声を張り上げて、戦闘態勢を取り始める誘拐犯達。


「オラァ!」

「しまっ――ガッ……!」


しかし体勢を取る前に俺達が突撃してきた事によって、次々と前列と後列にいた誘拐犯達が倒れていく。

だが決して殺してはいない。

恐らくコイツらも的のボスによって操られている。

この戦いはリムやその他の少女達を救う為だが、ソレと同時にコイツらも助けるのも目的だ。

冒険者達はミネウチや掌底で次々と誘拐犯達の意識を狩っていく。

コイツら、不意打ちとは言え結構強いな……。

そんな事を考えながら、冒険者達と誘拐犯達の乱闘の中で、スキル隠密を発動しながら進んでいく。


「ホイッ!」

「ハウァッ!?」

「ホアタッ!」

「ヴァ……ッ!」


時折、冒険者の相手をしている奴の股間を蹴り上げながら進んでいき、俺は砦の門に辿り着いた。


「リョータ!」

「おっ、いたいた!」


後方の集団の中から聞こえた声を頼りに進むと、俺はリーンと合流した。


「全員揃ってるか?」

「おう!」


そんな俺の問いに、リーンの後ろで誘拐犯の一人の土手っ腹を殴り気絶させたヒューズが応えた。

この作戦では、俺達は主に二チームに分かれる。

まず、砦の外に誘き出した誘拐犯達を制圧するチーム。

このチームには三分の二の冒険者と、ハイデルとローズが入っている。

そしてもう一つのチームは、砦の中に入りリムと少女達を助け出すチームだ。

このチームは危険度が高いため、リーンを筆頭とした少数精鋭の冒険者が入っている。

あと、ついでに俺とレオンも。


「それじゃあ、ハイデル! ローズ! ここは任せたぜ!」

「承知いたしました!」

「リョータちゃん、絶対リムちゃんを連れ戻してね!」


ハイデルとローズの言葉に俺は頷くと、砦の中に入っていった。

外見はボロボロだったのに対し中はそうでもなく、意外と明るかった。


「レオン、俺の影に入っててくれるか?」

「? 別に構わんが、何故だ?」


その灯りによって、走っている自分の足下に影が出来ているの確認した俺がそう言うと、レオンはキョトンとした顔をする。


「なに、影があるからお前で不意打ち狙えるかなって思っただけだ!」

「成程、分かった!」


レオンが自分の影に入った行くのを見送ると、隣からリーンが話し掛けてきた。


「ねえ、リムや女の子達がどこに居るか分かるの?」

「いや、そこまでは分からん! でもリム達がいる所には多分敵が居るかもしれない! っと、早速敵さんのお出ましだ!」


俺がそう応えた瞬間、周り角の死角から五、六人の男達が現れた。


「ここから先は通さねえぜ魔族共!」

「殺されたくなかったらさっさと降伏しろ!」


その男達は、まるで見本のような三下のセリフを吐く。


「どうする? 私がやる?」

「いや、ここは……」


腰の剣の柄に手を当てながら訊いてきたリーンにそう返すと、俺は一歩前に出る。


「くっくっく……」

「な、何笑ってやがる!」

「貴様らこそ立ち去れ。さもなくば地獄を見る羽目になるぞ?」

「「「はぁ?」」」


そして俺がどこかの誰かさんの真似をすると、男達はまるでバカを見るような目で見てくる。

油断してる油断してる……。

そんな男達に掌をかざし、俺は高らかに叫んだ。


「出でよ! 我が使い魔、レオン・ヴァルヴァイアッ!」

「な、何言ってんだコイツ――ァガッ!?」

「貴様、誰が使い魔だ!」


俺の影から勢い良く飛び出し、油断していた男の顎にスカイアッパーを喰らわせたレオンが、顔を真っ赤にして怒る。


「というか何なのだ今の口調は!?」

「お前の真似」

「ふざけるな! あんなのが我だと!? 我に似せるなら、まずこうやって……」

「あんたら、目の前に敵が居るのに何始めてんのよ!?」


と、俺達がまったく緊張感の無い会話をしている中、突然現れたレオンに仲間の一人やられた事によって、男達が目を白黒させていた。


「お、おい! しっかりしろ!」

「何だアイツ!? どこから出てきた!?」

「今、地面から飛び出してきたよな!?」


まあレオンのユニークスキル、初見なら地面から出てきたって思うわな。


「ビ、ビビってる場合じゃねえ! やるぞ!」


男達は未だ混乱しながらも、その声に押されるように俺達に突っ込んでくる。

そんな男達に、俺は若干気圧されながらも刀を構える。


「よ、よし! それじゃあ俺達もやるぞ……ってレオン!?」


そう言って振り返ると、レオンの姿が消えていた。

まさかと思い視線を前に戻すと、レオンが一人で男達に向かって走っていた。

ヤバい、さっきは不意打ちだったから何とかなったけど、あのレオンだぞ!?

真っ正面からぶつかって勝てる訳が……!

と、思っていたのだが。


「死ねえ!」

「遅い!」

「なあッ!?」


レオンが男達の攻撃を、華麗に躱していく。


「フッ!」

「ウガッ!?」


そして一人の男の影に入ると背後に回り込み、死角から強烈な回し蹴りを喰らわせた。


「な、何でコイツ、こんなに強くなったんだ!?」


そんなレオンに俺が呆然としていると、リーンがため息交じりに訊いてきた。


「あんた、ヴァンパイア族の特性忘れたの?」

「ヴァンパイア族の特性……あッ!」


そうだ、ヴァンパイア族は昼間は弱体化するけど、夜になるとパワーアップするんだった!

普段昼間でしかレオンの戦っている所を見ていなかったから、すっかり忘れてた!

ってか強え! 何じゃこりゃ、レオンがムチャクチャ格好良く見える!

と、俺が圧巻されている間に、レオンは一人の男の影に手を突っ込んだ。


「コレが我の真の力だ!」

「うわぁ!? 何だ!?」

「お、俺の影が!?」


するとその影の形が変形し、中から黒くて長い何かが飛び出してきた。


「『シャドウ・バインド』ッ!」


そしてレオンが叫ぶと、ソレはまるで大蛇のように男達を囲い、まとめて締め上げた。

キツく縛られた男達は一瞬苦しそうな声を出すと、カクンと意識を飛ばした。


「フッ、少しやり過ぎたな」

「か、かっけえ……!」


気絶した男達を見下ろすレオンに、俺は正直な感想を口にした。


「レオン! お前なんだよ今の!? スゲえよ、マジかっけえよ!」

「そ、そうか? 我、格好良かったか?」


俺がレオンに駆け寄ってキラキラした視線向けると、レオンは少し嬉しそうに頬を染めた。

そうだよ、だってシャドウ・バインドだぜ!?

あんな中二心くすぐられまくりの技見せられたら、興奮するに決まってる!


「何だよお前、正直俺と同じだと思ってたのに! 何か置いて行かれた気分だよ!」

「そうか……? フフフ、そうだろうそうだろう!」

「あんた達、話は後にしなさい。新手の敵が来たわよ」


バンバンと背中を叩く俺にレオンが自慢げに胸を張る中、一人だけ冷静なリーンが通路の奥を見ながら言った。


「っとマジか。よしお前ら、行くぞ!」

「「「おうッ!」」」


俺は冒険者達にそう命令して、再び戦闘態勢に入る。


「オラァ! 掛かってこいやああああッ!」


そしてそう叫ぶと、俺は新手の男達に襲いかかった!

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