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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第三章 リトルウィッチ・ノクターン
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第十一話 誘拐犯探しは今日も鬱屈だ!⑫


久々に訪れた冒険者ギルドは、冒険者の話し声で喧噪としていた。


「おいおい何だぁ?」

「冒険者の緊急招集って、何かあったのか?」

「まさかまたモンスターの襲撃か!?」


冒険者ギルドにはこの国全員の冒険者が集まっており、彼ら彼女らがこれから何が起こるのか心配そうな顔をしていた。


「魔王様、冒険者の招集が終わりましたよ」

「ありがとうございますカミラさん」


そんな中ギルドの受付の裏に居た俺は、そう報告してきたカミラさんに感謝を述べる。

そう、冒険者の緊急招集を頼んだのは他でもないこの俺だ。

コイツらには急で申し訳ないが、理由が理由だ。


「さてと、やるか」


俺は一人そう呟くと、ギルドの中心に設置された台に登る。

そして、大きく息を吸い込むと。


「ちゅうもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおくッッ!」


まるでどこぞの魔法学校の校長先生のごとく声量で叫ぶと、一瞬でギルド内が静かになった。


「諸君、急なところ集まってくれてありがとう! 実は――」


そう、俺が初めの挨拶とばかりに言うと。


「うるせえ! 緊急招集があって慌ててきてみればテメエの事情か!」

「こちとら昼飯まだなんだよ! 簡単に呼び出してんじゃねー!」

「しかも何で鼻栓なんてしてやがんだ!? まさか何かエロい事があってソレを自慢するために集めたのか!?」


…………。


「うるせー、んな訳ねえだろバカ! 俺はこれでも魔王だぞ! 口答えしねえで黙って聞けや! ってオイ、誰だ今ジョッキ投げつけてきたのは! テメエかコラッ!」


急に喚きだした冒険者達に対し、俺もムキになって口角泡を飛ばす。

……うちの冒険者と仲良くなりすぎて、魔王面するとキレられるようになってしまった。

ああもう、これだから血の気の多い冒険者共は……!


「大体、コレは俺の事情じゃねえ! 緊急招集だから緊急事態なんだよ! いいかよく聞け!」


俺はこの喧噪に負けないぐらいに声を張り上げると、続けて言った。


「三日前、リムが何者かによって攫われた!」


その瞬間、ギルドが水を打ったように静かになる。


「は、はぁ!? リムちゃんが攫われた!?」

「しかも三日前に!?」

「おい、どういう事か説明しろコラッ!」


そしてしばらく経ったのち、段々と騒ぎが大きくなっていく。


「しいいいいいいいいいずううううううううまああああああああれええええええッッ!」

「「「…………」」」


そしてまたしても俺がダンブ●ドア先生のごとく叫ぶと、同じようにギルドが静かになる。


「ンンッ、急な話で驚いていると思う。お前らにこの事を話していなかったのは色々と事情があったからだ。そこんところは悪い。だけど、リムが何者かによって攫われたのは本当だ」

「マ、マジかよ……」

「あのリムちゃんが!?」

「ああそんな……俺のリムたんが……」


俺が久々に真剣な表情になって話すと、冒険者達は各々慌てたような顔になる。

ってか最後にとんでもないこと言ったの誰だおい……まあいいや。


「しかもソイツらはフォルガント王国の少女達まで攫っている可能性が高い! だがしかあああしッ! 今日、リムが捉えられている敵の拠点を見つけることに成功した!」


今までの話の流れから、何人かの冒険者達はこの後の展開を予想したのかゴクリと生唾を飲み込んだ。


「今夜、リムの奪還作戦を行う! お前らにはその作戦に加わって欲しい!」


そう、今日俺がわざわざ冒険者を呼び出したのはこの理由。

リムを助けるためには、どうしても魔王城の奴らだけじゃ力不足だ。

更に敵のボスは何らかの洗脳魔法で男達を操っている。

そのため、敵の数は多いと予想出来る。

目には目を、歯には歯を、数には数を。

だから今回、このバルファスト魔王国の冒険者の協力が欲しいのだ。


「よおおおおしッ! まだ実感湧かねえけど、リムちゃんがピンチなら助けないわけにはいかないな!」

「おお! リムちゃんはうちの国に必要不可欠だもんな!」

「俺のリムたんを攫うなんて……ソイツらぶっ殺してやる!」


その俺の期待に応えるように、冒険者達は拳を突き上げる。

って、だから最後の奴、俺のリムたんって何だよ!?

まあとにかく、うちの国の冒険者、特に男達にとってはリムの誘拐は大問題なのだ。

何故なら、リムはうちの国の言わば国民敵アイドルのような存在。

そう、この国の多くの男達の殆どがロリコンなのだ。


「あー、やる気になってくれてるところ悪いんだけど、結構俺達不利な状況なんだ」

「あ? どういう事だ?」


俺が片手を上げて騒ぎを制して言うと、前列にいたヒューズが訊いてきた。


「実は、敵のボスは洗脳魔法使いだ。だから下っ端は全員その洗脳を受けている。だから俺達はソイツらを絶対に殺しちゃダメだ。だけど敵は逆に容赦無しに殺しに掛かってくるかもしれない」

「そ、それじゃあ、勇者一行に頼もうぜ! お前アイツらと仲いいんだろ?」

「……実は、唯一の頼みである勇者一行がいない。だからここにいる俺達だけでリム達を助けなくちゃダメだ」


その俺の話に、今までやる気満々だった冒険者達は一瞬で静かになった。

おい……確かに今の話聞いたらテンション下がるだろうけど、ここまでか……?


「お、おい……ど、どうする……?」

「そりゃ厳しいだろ……ああでもリムちゃんが……」

「リムたんリムたんリムたんリムたん……」


そして苦い顔をする冒険者達から弱音が漏れ出す。

ってだから最後の奴! お前はもういいから! 怖いから!

ああもう、さっきのはあらかじめ言わなきゃダメな事だからしょうがないけど、スッゲえ雰囲気悪くなっちゃったよ!

しょうがない、ここは……。

そう心に決めた俺は、もう一度大きく息を吸い込み。


「こんのバカヤロウ共がああああああああああああああああああああああああああああッッ!」


三回目になる俺の咆哮が、ギルド内に響いた。


「何だテメエらさっきからよぉ!? やる気満々になったくせして都合が悪くなりゃ小さく縮こまりやがって! そういうのはチンコだけにしとけテメエら!」

「んだとコラァッ!」

「誰が都合のいいチンコだ!?」

「アアア、アタシ女なんだけど!?」


そんな冒険者のブーイングを浴びながら、俺は冒険者達の士気が一気に上がるであろう話を切り出した。


「いいか!? 俺達がこんな事してる間にも、リムは敵の拠点にいるんだぞ!? あのリムが怖くて泣いてるかもなんだぞ!」

「「「!」」」

「しかもソイツらは少女ばかり狙った誘拐犯だ! そうとなれば、リムのあの小さく清らかな身体が汚されてしまう可能性も充分にあるんだぞ!」

「「「!!」」」


その言葉に、男冒険者達の目の色が変わった。


「お前らはいいのか!? どこぞの知らん馬の骨に、リムが汚されてしまってもいいのか!?」

「うわあああああああああああ! それだけはダメだああああああああああああッ!」

「リムちゃんが……汚される……!? ダメだ! 絶対にぃ!」

「リムたあああああああああああああああああああああああああんッ!」


俺の必死の言葉に、男冒険者達は頭を押さえて叫びだす。

そんな冒険者達に、俺は拳を突き上げて叫んだ。


「リムを救えるのは他でもない俺達だ! 心を燃やせ野郎共! 俺達の癒やしを! 天使を! リムを! 取り戻しにいくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」」」


俺の言葉に熱が戻った男冒険者達は、雄叫びを上げながら拳を突き上げた。

一致団結心は一つ。

リムがピンチだという事実だけで、この荒くれ者共の思いが繋がったのだ。


「いくぞ! カチコミじゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!」

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」」」


そんな、俺を含めた冒険者達の熱き思いに対し。


「「「う、うわぁ……」」」


先程から後方でこの光景を見ていた女冒険者達が、酷く冷めた眼でこちらを見ていたのが見えた。


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