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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第三章 リトルウィッチ・ノクターン
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第十一話 誘拐犯探しは今日も鬱屈だ!⑩


「はああああぁぁぁ……」


結局ローズの力は及ばず、情報は何も得られなかった。

そしてローズと別れ帰路につく俺は深いため息をついた。


「折角誘拐犯捕まえたのに、ここに来て振り出しかよ……」


凄くマズい状況になった。

誘拐犯達の正体や、相手のボスが洗脳魔法を使うって事は分かった。

だけど敵の居場所が分からなかったら何の意味もない。

恐らく敵のボスは、バルファストに向かわせた手下が戻ってこず、捕まったという事を察したのだろう、何らかの方法で誘拐犯を廃人にした。

そう考えれば、あの長髪の男や他の奴らの様子に説明が付く。

しかし、そうなれば誘拐犯達はもうウチの国には手を出してこないだろう。

仮にフォルガント王国で誘拐が続いたとしても、アソコはウチと違って広大な街だ。

どこで誘拐が起きるかなんてドンピシャで分かるはずがない。


「もう……どうすりゃいいんだよぉ……」


などと嘆いても状況は何も変わらない。

俺が肩を落として歩いていると、すれ違った男冒険者二人の会話が聞こえてくる。


「なあ、最近リムちゃん見たか?」

「いや。そういえば最近、リムちゃん見かけないもんな」

「何だろうな、具合でも悪いのか?」


そう、一応リムの誘拐の件は一部の人間しか知らない。

魔王城の面々、警察、そしてリムのお母さんだ。

リムのお母さんはリムが連れ去られた翌日、俺から事情を話した。

娘が何者かに誘拐されたなんて母親が聞いたら、当然心配になる。

毎日心配でリムのお母さんのところに通っているが、段々と窶れているように見える。

だから……早くリムを助けなきゃなのに……!


「む? リョータ、そんな暗い顔をしてどうした?」

「え……?」


突然前方から声を掛けられ視線を上げてみると、そこにはレオンが立っていた。


「ああレオン……いやなぁ、物事そう上手く行かないなって思ってただけだよ」

「……まさか誘拐犯の記憶を読み取る事に失敗したのか?」

「おお、察しが早くて助かる助かる……ハァ……」

「…………」


死んだ魚の目をしながらもう一度ため息をつく俺を、レオンが腕を組んで黙って見てくる。


「おいリョータ、少し付き合え」

「え? 何に?」

「いいからこい」

「えっ、あっ、ちょっと……!?」


するとレオンは俺の手首を掴み、返事も聞かずにズカズカと歩き出した。

な、何だコイツ……。

どこに俺を連れて行くつもりだ?

不審に思いながらもしばらく黙って付いていくと、いつぞやの露店街についた。

って、何で!?


「お、おい、レオン……」

「貴様昼飯はまだ食っていないだろう?」

「えっ、いやまあ……」

「だったらそこらの露店で適当な物を買え。今回は我が特別に奢ってやる」

「はい……?」


レオンの意図が分からず、俺が首を傾げるばかりだ。

な、何で?

奢ってくれるのはありがたいけど、どういう風の吹き回し?


「な、なあレオン、正直俺は早くリムの居場所を探さなきゃ……」

「リムを見つける算段はあるのか?」

「えっ、いや、今の所ないけど……」

「だったら今は飯を食え。リム探しはその後だ」

「リムが危険な目に遭ってるのに悠長に飯食ってられるかっての……っておい、話聞けよ!」


俺の不満を聞こうともせず、レオンは知覚の露店から串肉を何本か買っていた。

なになになになんなの!?

そう、俺が訝しんでいると、レオンが二本串肉を突き出しため息交じりに言った。


「最近貴様は無理をし過ぎだ。飯もろくに食わんでフォルガントに出向いたり罠を作ったり……」

「で、でも……」

「そのままではいつか倒れるぞ。貴様が倒れたら他に誰がリムを救う?」

「っ」


その言葉に、俺は言葉に詰まった。

確かに、思い返せば昨日は全然寝れてないし飯も殆ど食ってなかった。

だけど今このように平気なのは、一刻も早くリムを助けなくてはと焦っているから体力の許容量が分からなくなっているからかもしれない。

黙る俺に、レオンは無理矢理串肉を俺に持たせると、背を向ける。


「リムが心配なのは我らも同じだ。だが、リムを救うのに必要な貴様に倒られては困るのだ。分かったらさっさと食って寝て体力を戻せ」


そうか……そうだよな。

今まで視野が狭くなっていた。

リムを助けるためにも、まずは俺が万全じゃなきゃ。


「……あんがとな」


串肉を見つめながらそう言う俺に、レオンがぶっきらぼうに言い放った。


「勘違いするな、別に貴様の為ではないからな……!」


…………。


「貴様、さては新手のツンデレ使いか?」

「だ、誰がツンデレだと!? ツンデレはリーンだろう!」

「お前もそう思ってたんかい」


レオンをからかって少しだけ荷が下りた気がした俺は、早速串肉を一つ頬張った。





「――もう三日も経っちゃったのかぁ……」


廃砦のとある一室で、私はポツリと呟いた。

今まで、何度も首輪を外そうとしたり脱走しようとしたけど、全てダメだった。

少しだけ、リョータさん達が助けに来てくれる事を望んだけど、やっぱり私が何とかしなくちゃダメなんだ。

そんな事を頼りにしたらリョータさんに子供扱いされる。

私は魔王軍四天王、そしてなにより大人なんだから。

だけど……。


「誘拐されてこんな状況じゃ、逃げ出すのなんて無理かぁ……」

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「う、ううん! 何でもないよ」


隣にいた女の子に呟きが聞こえてしまい、私は首を横に振った。

この子の他にも、この部屋には十数人の子供が居る。

その子達はこの部屋に用意されたぬいぐるみやおもちゃで遊んでいる。

しかも、全員が私より年下の女の子だ。

この子達は一昨日の夜男の人達によってここに連れてこられた。

話を聞いてみると、この子達は全員フォルガント王国に住んでいて、何でも全員夜に寝ている時に攫われたのだという。


「ねえお姉ちゃん」

「な、何?」

「あのおばちゃん、ずっとこっち見てる」

「そ、そうだね……」

「フフ……フフフ……」


そして、子供達が遊んでいる光景を微笑ましげに見ているのが言わずもがな、私達を攫った人達のボスであるジークリンデさん。

この人は朝からずっとこんな風に私達を見ているのだが、それは監視なのかそれとも……。


「……あの、そろそろ出て行ってくれません?」

「え~」

「え~、じゃありませんよ! さっきからずっと気になってしょうがないんです!」


それに、何だか危なそうな人だし……。

誘拐犯のボスなら少しは忙しいはずなのに、ずっとここで私達を眺めていて……この人は暇なんだろうか?


「それにしても、あなたは何の目的でこの子達を攫ったんですか? 私だけならまだしも、フォルガント王国の子達まで……」

「そうねぇ……」


私の問いに、ジークリンデさんはしばらく悩んだ後。


「強いて言うなら、あなた達を助ける為よ」

「私達を助ける……?」

「ええ、私があなた達を守ってあげるの」


ど、どういう意味なんだろう?

私達を攫うことが私達を助ける事になる?


「う、うぅぅ……」

「フフッ……」


まったく理解出来なく頭を抱える私を、ジークリンデさんはニコニコしながら見つめる。

しかしその後、ジークリンデさんはため息をついた。


「だけど、ここもそろそろ危ないわねぇ……」

「えっ?」


その言葉に私が反応すると、ジークリンデさんは愚痴をこぼすように呟いた。


「バルファスト魔王国の子供達もここに招待しようと四人送り込んだんだけど……捕まったみたいなのよねぇ……」

「ええっ!? バ、バルファストに!? って、捕まった……?」

「そうなの。捕まったアイツらが何を言うか分からないから、ちょっと遠距離から操作して廃人になって貰ったけど、ここがバレるのも時間の問題ねぇ……」


前半の部分はよく分からなかったが、リョータさん達がこの人の下っ端を捕まえて、もうじきここに来るかもしれないという事は分かった。

……本当に私のせいで迷惑を掛けて。

それなのに私はこんな所に連れてこられて何も出来ていない。


「よしっ、思い立ったら吉日ね! この砦は捨てましょう!」

「え、ええ!?」


突然拳を握り締め高らかに宣言したジークリンデさんに、私は目を見開き焦った。

どうしよう、もしリョータさん達が来る前に別の場所に移動されたら、もう、ママやリョータさん達には……。


「……お姉ちゃん?」

「ううん、何でもない……」


女の子の声に、私は少しだけ潤んでしまった目を擦る。

そして、その女の子を抱き寄せると、ジークリンデさんを睨みつけた。


「このままではいきませんからね。絶対、あなた達を後悔させてやりますから……!」

「フフッ……出来ればいいわね」


そんな私に対して挑発的な笑みを浮かべたジークリンデさんは、私達の居る部屋から出て行った。


「……はぁ」


出て行ったのを確認した私は、小さき息を吐いた。

……でも、怖いなぁ。


「お姉ちゃん、疲れてるの?」

「ううん、大丈夫」


そう言って顔をペチペチ触ってきた女の子に、そう返して自分の膝から下ろす。

そして、私が頭を撫でてあげると女の子は気持ちよさそうに眼を細めた。

そうだよね……今はこの子達を見守ってあげなくっちゃ。

せめて、今の私事をしよう。

そう、私が心の中で決めた時だった。


『ホラッ、さっさと引っ越す準備しなさい豚共ッ!』

『ぶひいいいいぃぃぃぃ!』


部屋の外から、ジークリンデさんの声が下と思いきや、ピシャーンという音とともに妙に人間っぽい豚の声が聞こえた。


うぅ……やっぱり怖いなぁ……。


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