第二話 魔界の生活は今日も大変だ!③
「はあ……」
ギルドでのステータス鑑定が終わり魔王城に戻った俺は、レオン達から貸して貰った魔王城の空室のベッドに横になり、ため息をついていた。
普通、異世界転生と言ったら、最初からチートってものだろう。
特に努力もせずにチートの状態で転生をし、強い味方を手に入れ、何をやっても勝ち組で。
だけど現実はどうだ?
俺のステータスはそこらの一般人より低いステータスで、魔王軍四天王は威厳もクソもないし。
まあ、現実そんな甘くないよな……。
でも、本当に俺は魔王として認められたのかな?
そんなことを何回も思いながら、ポケットからギルドカード取り出す。
何が書いてあるかはまったく分からないが、今の俺のステータスは器用度と知力以外は全部低い。
そのせいで、俺はあの後自分のジョブを決める際、なれるジョブがかなり絞られてしまった。
そして、俺がその中で選んだジョブというのが《レンジャー》というサポート系のジョブだ。
レンジャーは何かと便利なスキルが取れるが、ソードスキルやランススキルなどの戦闘用のスキルが取れないというあまり人気のないジョブだった。
「はあ……ほんっと、俺の異世界転生は色々間違ってる……」
俺はそう呟くと、尿意を感じベッドから起き上がり自室を出た。
途中道に迷い、あやうく漏らしてしまうところだったが、なんとかトイレを見つけギリギリ間に合ってスッキリした俺は、暇なので魔王城を探索することにした。
ちゃんとした城を見たことがない俺だが、この魔王城は城としては小さい方だ。
だから慣れれば俺もさっきみたいに迷ったりしないだろう。
だけどやっぱりわざわざトイレとかに行くためにこの距離を歩くのは面倒くさい。
そういえば、昨日魔王の保留の話の後にハイデルが言ってたけど、ハイデル達はこの魔王城を転移系の魔道具で移動してるって言ってたよな。
確か一度訪れたことのある場所最大三つを登録すると、魔力次第でどこからでも一瞬で移動できるとかなんとか。
昨日ハイデル達が魔王の間にいきなりで現れたのはこれだ。
だけど転移するにはかなりの量の魔力が必要とか言ってたし、魔力の少ない俺が使えるかどうか……。
そんな事を考えながら廊下をブラブラと歩いていると、向かい側から足音が聞こえてきた。
誰だろう、リムとレオンはまだ外に出てるし、ハイデルかローズか?
俺は目を凝らして廊下の奥を見てみると、俺の視界に長い金髪に紅い瞳が入った。
「あ…………」
「…………」
忘れもしない、先代魔王の娘、リーンだ。
そういえば、コイツとは昨日一瞬しか会ってなかったな。
リーンに魔王になったからって調子に乗るなみたいな捨て台詞を言われたきり、俺はリーンの姿を見ていなかった。
こんな美女なのに、四天王のインパクトが強すぎて存在忘れかけてた。
そんなことを考えている俺を数秒間黙って睨みつけていたリーンだが、俺の横をすり抜けていった。
「まさかのMU☆SHI!」
思わず俺は振り返りながら言ってしまった。
「……何よ?」
「い、いや、この距離でここまで清々しい無視されるとは思ってなかったから……」
確かに俺も休みとかにクラスメイト見かけたら気配を消して通りすぎるが、お互いたっぷり見つめ合った後で無視されるとかなり傷つく。
「別に、あんたとなんか関わりたくないだけよ。消えて」
「止めろそういうこと言うの。関わりの無かったクラスの女子に何故か突然『キモい、消えて』って言われたこと思い出しただろうが」
確かにあの時ラノベ読みながらニヤニヤしてたからキモいと思われてもしょうがないけど!
いや、今はそんなことどうでもいい。
「その、確かにどこの馬の骨か分からない奴が突然魔王にさせられて、しかもここに泊まってるのは気に入らないと思うけど、そこまで俺を毛嫌いしなくても……」
俺が頭を掻きながら言うと、リーンは実に憎々しそうに睨みつけながら。
「うっさいわね。あんたなんて、魔王の素質があるってだけじゃない。そんな奴と仲良くする気はないわ」
そう言うと、リーンはそのまま廊下の奥進んでいった。
「…………」
傷付くわぁ……すっげえ傷付くわぁ……。
別に俺魔王になりたくてなってるわけじゃねえし。
一応まだお試し期間なだけだし。
……だけど、ほんとに何でリーンは俺のことを嫌うんだろう。
もしかして、魔族以外の魔王は受け入れたくないとか?
それとも、本当は自分が魔王の座を狙っていたからとか?
そんなことを考えながら、俺は自室へと向かって暗い廊下を歩き出した。
「……あれ? ここどこだ?」




