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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第三章 リトルウィッチ・ノクターン
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第十一話 誘拐犯探しは今日も鬱屈だ!⑤

次の日。

昨日から約束してあった通り、朝早くからわざわざ迎えに来てくれたジータのテレポートで、俺は再びフォルガント王国に舞い戻った。

そしてしばらく一人街を歩いていた俺は、ポツリと呟いた。


「なんっか騒がしいな……」


俺の周りを歩く通行人が多数いるのだが、その全員が何故か落ち着きが無い。

何かが心配というか恐れているというか、全員そんな感じの面持ちなのだ。


『ねぇ……の子……は無……なの……!?』

「ん?」


などと俺が不審に思っていると、唐突に道の向こうから何やら一層騒がしい声が耳に入った。

その声を頼りに早足で向かってみると、ソコには数人の女性が一人の憲兵を取り囲んでいた。

一瞬ハーレムかと思ったのだが、どうも様子がおかしい。

取り囲まれている憲兵は深刻そうな顔で下を向き、その憲兵にまるで縋り付くように一人の女性が泣いているのだ。

まさか……泥沼の場面なのか!? あの人の浮気発覚が発覚したのか!?

などとドン引きしていた俺だが、次の女性の一言でその考えが吹っ飛んだ。


「お願い! 娘を……娘を探して下さい!」

「ッ!?」


娘を探して下さい……!? 

その言葉に俺が目を見開いていると、続けて憲兵が申し訳なさそうに重い口を開く。


「現在、同じように行方不明の子供がの捜索依頼が多発しておりまして……しかし、コレと言った手掛かりが未だ見つけられず……」

「そんな……! うちの、うちの娘は……!」


子供の行方不明が多発……!?

もしかして、あの一晩でか!?

憲兵の言葉に顔を覆い崩れ落ちる女性を見て、野次馬達も心配そうな顔をしてる。

冒険者の次は子供かよ……一体どうなってんだ?

などと考えながら、俺が一旦その人集りから離れたその時。


「あっ、ムーン!」

「ん? あっ、エミリーじゃないか!」


俺の後ろから唐突に声を掛けられ振り返ると、ソコにはこちらに向かって駆け寄って来るエミリーの姿が。


「ねえ聞いた!? 子供の行方不明事件!」

「ああ、さっき知ったばかりだけど……」


慌てているのが一目で分かるエミリーに、俺は頬を書きながら頷く。


「なあ、何があったか詳しく分かるか?」

「ええっと……」


そして俺が身を乗り出して聞くと、エミリーは視線を上に向ける。


「人から聞いた話なんだけど……何か行方不明になった子供は十数人で、しかも全員十歳ぐらいから下の女の子! それで昨晩のうちに姿が消えていたんだって!」

「マジかよ……聞くだけでも危ない匂いがすんなぁ……ジータが黙ってなさそうだ」

「? ジータさんって、あの勇者一行のメンバーの?」

「あっ、いや、何でもない! こっちの話だから!」

「そう? ハァ……冒険者の次は子供達って、一体どうなってんのー!?」


などと頭を掻きむしって喚くエミリーを横目に見ながら、俺は口元に手を当て考え込む。

このタイミングでの少女行方不明の多発……。

リムの誘拐とは関係ないと考える方がおかしい。

つまり、失踪した子供達はアイツらに攫われたんだ。

しかし、ただの子供目当てなら今のようにフォルガントで子供を攫った方が効率的なのに、誘拐犯はバルファストに来てリムを攫った。

それなら魔王軍四天王であるリムを攫ったと言う事なら説明が付くが、他の子供を攫った理由が分からない。


「……いや待てよ?」


それよりも問題は、実際にリム以外の女の子を攫っているという点だ。

そして誘拐犯達は一度バルファストに足を踏み入れた。

って事は、うちの国でもまた子供が起きるかもしれなくて……!


「あああああッ!!」

「うわぁ!? ど、どうしたのムーン! いきなり叫んだりして!」


突然大声を上げた俺に、隣のエミリーの身体がビクッと跳ねる。


「ゴメン、急用が出来た!」

「えっ、あっ、ちょっとー!?」

「またなー!」


そして困惑するエミリーにそう言って手を振ると、俺は一目散に宮殿に向かって駆け出した。

しばらく走り、辿り着いたのは商業ギルド。


「あの……すいません!」

「はい? ああ、貴方は昨日の……」


若干息を切らせながら、受付嬢を呼ぶと。


「あの、明日バルファスト魔王国に向かう交易商の中に、最近入ってきた人はいますか……?」

「バルファスト魔王国ですか? 少々お持ち下さい」


受付のお姉さんはそう言うと、後ろの棚から一冊の資料を持って戻ってくる。


「こちらが、バルファスト魔王国に向かう交易商の資料です。ええっと、最近入った方ですね……」


カウンターに資料を置き、パラパラとページをめくる受付のお姉さん。

そして交易商の名簿が書かれているページをこちらに向けると、ある一部分を指差す。


「この方達が、三日前に加入した方達です。確か、志望動機は口を揃えて、『ある人の為』と言っていたらしいです」


ある人の為……。


「分かりました、本当にありがとうございました!」

「は、はい……?」


名簿を見せただけで感謝を言われたことに、お姉さんは不思議そうな顔をしていた。

俺は商業ギルドから飛び出し、宮殿へと目指す。

その最中、俺は口元をニヤリとさせながら。


「ビンゴだ……!」






「――一体どーいう事なんだいフィア!?」

「ジータ、一旦落ち着くです! しょうがない事なんです! 止めっ、首がもげるです~!」

「ああもうこんな時に限ってー!」

「……何やってんだアイツら……」


俺が宮殿の正門前に戻って早々、何故かフィアがジータに胸ぐらを掴まれガクガク揺さぶっている場面に出くわした。


「あっ、魔王さん……! もう戻ってきたんですね?」

「ああ。で、何がどうなってんのこの状況?」


俺の存在に気付いたレイナが俺に駆け寄ってくる。

そして俺が状況提供を求めると、レイナの代わりにエルゼが苦い顔をして応えた。


「……アタシ達、このまえジャイアントワームを討伐しに行っただろ?」

「ああ、そういやそんな事言ってたな」

「実は、予想以上に今年はジャイアントワーム多くてな、群れの第二波が来ちまったんだよ。しかも、その中にはジャイアントワームの突然変異種、キングワームも目撃されたんだ。あと最近、ギルドの冒険者が失踪してるだろ? だからアタシ達でも討伐するのに三日程掛かりそうなんだ」


うっそ……こんな時に限って……?


「……だからジータあんな感じなんだ。リムどころかここの子供まで攫われてるのに、自分はミミズの相手って……」

「ああ……って、ん?」

「ま、魔王さん、今攫われたって言いましたか……!?」


そんな俺の呟きに、エルゼとレイナが反応した。


「いや、コレはまだ俺の憶測なんだけど……ここの子供達がいなくなったのは、恐らくリムを攫った奴らと同じだと思うんだ」

「な、何だってえええええええええええええええッッ!?」

「ジータ! いい加減落ち着うひゃあ!?」


俺の言葉に反応したジータがフィアを突き飛ばし、凄い剣幕でこちらに突っ込んでくる。


「あらよっ」

「ぶひゃんッ!?」

「落ち着けって、まだ憶測だって言っただろうが」


身の危険を感じた俺は一瞬だけ魔神眼を発動してジータの悪質タックルをヒラリと躱す。

するとジータは勢い余って顔面から地面にダイブした。

フッフッフ……俺が二度同じような展開にさせるとおもうなよ?

でも、リム達を助けるようとしてんのに、このタイミングで一番頼れるお前らがいなくなんのはキツいなぁ……。

ぶっちゃけうちの国の立場から言えば、リムだけ助けられればそれでいい。

……だけど。


「おいお前ら」

「「「「?」」」」


俺は改まって四人と向き直る。


「俺達は、この三日以内にリムとここの子供を絶対に助ける。だからお前らは安心してミミズを狩ってこい」

「「「「!」」」」


そして俺が真剣な顔でそう言うと、四人は目を見開いた。


「えっ、でも……!」


慌てて何かを言おうとしたレイナを、俺は片手で制しながら言う。


「俺達は同盟国、ましてや友達だ。どっちにしろお前らがミミズ狩らなきゃこの国が、もしかしたらうちも大変な事になるかもしれない。だからそっちの事情は任せた」

「魔王さん……」


正直、顔も知らない、ましてや数十人もいる子供達も同時に助けるのは危険のリスクが高い。

だけど、そんな理由で子供達を見捨てるなんて選択肢は絶対にあり得ない。

俺はそれでも申し訳なさそうな顔をするレイナに、渾身のドヤ顔で言い放った。


「へっ、俺を誰だと思ってやがる? 俺はバルファスト魔王国六十四代目魔王、ツキシロリョータ様だぜ? 誘拐犯から子供を助けるなんて、造作もねえことさ!」

「「「「…………」」」」

「……いやそこで黙るなよ!」


安心させるために言ったつもりなのだが、盛大にスベってしまった……。

俺が恥ずかしさを紛らわすために頭をバリバリ掻いていると、


「ありがとうございます……!」


レイナが嬉しそうなにそう言うと、俺に深く頭を下げてきた。

そんなレイナに、俺は気にすんな伝えるようにとヘラヘラ笑いながら。


「頭上げろって。こういう場合は、困った時はお互い様だろ? だからお前ら、そっちは頼んだぜ!」

「はいっ!」


そして、気の引き締まった笑みを向ける四人を見て、俺も自分の拳を握り締めて気を引き締める。

待ってろよ、リム。

お前もここの子供達も、もれなく全員、俺が助けてやるからな!

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