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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第三章 リトルウィッチ・ノクターン
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第十一話 誘拐犯探しは今日も鬱屈だ!①


「ぅ、ぅうん……」


こ、ここはどこだ……?

この背中の感触……ベッドの上か……?

しかもこの天井、いつも見慣れた……ってか、俺の部屋か。

でも、なんかおかしいな……。

俺が寝る前、何があったっけ……?

確かギルドを出てリムを探してたら、路地から変な声が聞こえて行ってみたら……。


「!? リムゥ!?」


俺の意識が一瞬にして覚醒し、俺はベッドから跳ね起きた。

そうだ、確か変な男がリムをさらおうとして、それを助けようと思ったら後ろに居た仲間にやられて……。


「起きたのね、リョータ」

「うひゃああ!? って、リーン……?」


唐突に横から呼び掛けられその方を向いてみると、リーンがベッドの脇に置かれた椅子に座っていた。


「何だよ驚かすなよ……」

「まったくもう、あんたが路地裏で倒れてるって聞いて街中大変だったんだからね。……ま、無事で良かったわ」

「わ、悪いな……ってか、まさかお前が俺を介保してくれてたのか? お前が!?」

「……何よ、何か悪い?」


俺が驚愕に目を見開きながら言うと、リーンはそっぽを向いて鼻を鳴らす。

だ、だってあのリーンがが俺の介保してくれるなんて思わなかったし……。

などと思っているとリーンがベッドに肘をを乗せ、真剣な顔をして訊いてきた。


「で、何があったの? 昨日からリムの姿が見えないのも関係してるの?」

「ああ、実は……リムが攫われた」

「さ、攫われた!?」


リーンが驚くのも無理は無いだろう。

今となっては犯罪も起きないこの平和な国で人攫いが発生したのだから。

俺はリーンに昨日の出来事をぽつりぽつりと語り出す。


「昨日、仕事が終わってギルドに居たんだ。そこでたまたまリムに聞かれたくない話を聞かれちゃって……その後、逃げたリムを探してたら、あの路地でリムが男に攫われそうになっているのを見つけてな。助けようと思ったんだけど、後ろに居たもう一人の仲間に首をドスンと……まあ、ザックリいやあそんな感じだ」

「……その男に見覚えは?」

「無い。魔神眼で顔はクッキリ見えた。ありゃ人間だった。あともう一人もな」

「人間……? じゃあ、うちの国の誰かって可能性は低いのね」

「間違いない、他所の奴らだ」

「そっか……」


その事を聞いて、リーンは胸を撫で下ろす。

まあ、この国の誰かがリムを攫ったという最悪な場合じゃないだけでも俺も安心だ。

いや、だけどうちのロリコン共ならやりかねないかも……いや、アイツらはソコまではしないな。

アイツらはリムを見守るだけで直接的な干渉はしない……しないとは言え充分アウトなんだけど……。


「……」


それよりも、一体誰が何の目的でリムを攫ったかが問題だ。

他所者がわざわざ危険を冒してただの子供を狙うとは思えないし、魔王軍四天王であるリムを狙った犯行だという事は推測できるが……。


「畜生分からん…………そういえばハイデル達は?」

「外に出て聞き込みしてる」

「分かった、俺も行く」

「えっ、ちょっ?」


俺がそう言ってベッドから降り近くの椅子の上に畳んで置いてあったマントを羽織る。


「あんた、大丈夫なの?」

「まあ、やられた首はもんの凄く痛い。でも何もやらない訳にはいかんだろ」

「……分かったわよ」


俺が首元を撫でながら自嘲気味に言うと、リーンはため息をつくと困ったような表情を向けた。





「――魔王様、ご無事でしたか!」

「おおハイデル、何とかな」


バルファストと外を繋ぐ正門前に、ハイデルと憲兵のおっちゃんが立っていた。


「申し訳ありません、私が地獄に行っている間にあのような事態になっていたとは……!」

「ああ、気にすんなって……ん? なんかサラッと凄いこと言ってなかった? ……まあいいや。ハイデル、何か分かったことあった?」

「いいえ、何も」

「そっか……」


流石にそう簡単に情報は見つからないか。

それもそうだ、リムが誘拐されたのは人気の無い路地裏。

目撃者なんているわけがない……ん? 待てよ?

俺が気絶した後、誘拐犯達はどこにどうやってリムを連れていったんだ?

例え人気が無いとは言え、そのまま担いで連れて行くなんて目立つ事はしないはずだけど……。

と、俺が唸っていると、


「あの、昨日人間の誰かがこの正門を通りましたか?」


俺の後に付いてきたリーンが門番のおっちゃんに事情聴取をしていた。

確かに、バルファストは大きな外壁に囲まれている。

もし外部から侵入するとしたら、ここしかないだろう。

しかし、流石にそんな堂々と……。


「ああ。昨日フォルガント王国の交易商と名乗る馬車がここを通ったらしいぞ?」

「マジでー!?」


門番のおっちゃんのその証言に、俺は口をあんぐりと開けてしまう。


「ってんん? フォルガントの交易商?」

「おう。近々フォルガント王国の交易商がバルファストに訪れると教えてくれたのは魔王の小僧じゃないか」

「あ、ああ。確かに言ったな……でも、せめて俺とかに連絡してくれよ」

「すまん、あの時は俺じゃなくて新人が担当していたんだ」

「ねえその新人、勇者一行も無断で入れた人だよね? ちょっと呼んでくれない一発ぶん殴るから」

「お、落ち着いて……でも、交易商の馬車なら、今回の事件には関係ないですね」


ハイデルのその言葉にに、俺は首を横に振る。


「いや、多分ソレだ。馬車の荷台ならリムを隠したまま堂々と運べるからな」


その仮設でいくと……。


「……恐らくあの誘拐犯は、今聞いたみたいにフォルガントの交易商を名乗ってうちの国に侵入したんだ。俺は警備のおっちゃんや四天王には、もうそろそろ交易商が来るからって伝えてあったが、正確な日時は教えてなかったからな。ちきしょう、もっとちゃんと教えてやるんだった……!」

「で、でも、あの子は見知らぬ人に付いていくような子じゃないわ」


俺がこめかみを押さえて後悔していると、リーンが慌てて訊いてくる。


「う~ん……コレは俺の憶測なんだけど、もしかしてリムは付いていったんじゃなくて連れて行ったのかも……。例えば、商品を卸す店の場所が分からないってリムに地図を見せて、あの路地に誘導させるのは結構簡単だ。別に人目に付かない場所ならどこでもいいから、わざわざここにしようなんて下調べしなくてもいい。多分、リムに会う直前、近くにあったあの路地に印とか付けたんじゃないかな……」

「「…………」」

「そんで、誘拐犯は近々交易商がうちに来ることを知っていた。つまり、誘拐犯の手がかりはフォルガント王国にあるって事だけど……」

「「………………」」


ここまで言って、俺は頭を掻きながら身を屈める。


「じゃあ何であのタイミングでリムを見つけることが出来た? リムがどこでどうしてるなんて分かる訳ないのに……リムの場所を特定できる魔法を掛けられていたとか? だとしたらいつ? それとも、この国の中に情報提供者がいるとか……? いやそれは無いな……」

「「……………………」」

「そもそも、あのリムがそう簡単に捕まるか? もしあの男が襲いかかろうとしても、リムだったら魔法で撃退出来るはず……ああああああ分からん、頭がパンクしそうだぁ! …………ん?」


ああでもないこうでもないと俺が頭を掻きむしって叫んでいると、ハイデルとリーンが目を見開いてジッと俺の事を見てくるのに気が付いた。


「ど、どったの……?」


俺が少し身を引いて訊くと、リーンが少し感心したように。


「いや……私があんたを嫌ってた時も時もデビルファングの時も思ってたんだけど……頭キレるのね」

「そ、そうか……? まだ全然分かんないんだけど……まあ、推理ものの小説も結構読んでたからな」


いや、今はそれはどうでもいい。


「取りあえず、いち早くフォルガントに行きたい所なんだけど……畜生、よりにもよってリムが攫われるかぁ……」


そう、うちの国でフォルガント王国をテレポート先に登録しているのはリムしかいない。

ここでタイミング良くレイナ達が着てくれたら助かるんだが……まあ、そんなミラクル起きるはずないか……。

と、俺が心の中でため息をついたその時だった。


「ん? アレってレオンか?」


遠くの方から、レオンがヨタヨタとこちらに向かって走って来るのが視界に入った。


「ハア……ハア……、リョ、リョータ、起きていたのか……ヒイ……ヒイ……!」

「いや体力少ねえなお前……」


額に大量の汗を浮かべて息を荒げているレオンに、思わずマラソン大会で走りきった後の自分を重ねてしまう。


「それでどうした? そっちでもリムに関わる情報があったのか?」

「い、いや、実はだな……」


俺が首を傾げて訊くと、レオンが魔王城の方をチラと見ながら言った。


「実は……また勇者一行が来たのだ」

「今年の運勢全部使っちゃったかも」






――ゴトン、ゴトン。


「……ん」


耳元から聞こえたその音に私は目を覚ました。

アレ? 私、いつの間に眠って……。

もう朝なのかな……? もう起きなくっちゃ……。

ボンヤリとした意識の中で私はムクッと起き上がり、まだ重い瞼を擦ろうと……。

……? 私、両手が縄で縛られている……?


「ッ!?」


私は自分の縛られた手首を見て意識が覚醒した。

周りを見渡してみると、ガタガタと揺れる木の床に、木組みの枠に布を張った幌が目に映る。

荷台に乗せられた荷物は、両手両足を縛られた私の他に、いくつかの大きな壺が並べられている。

そうだ、確か私、フォルガント王国の交易商を名乗る男の人に連れ去られて……。


「ムゥームムンッ! ッッ!?」


私が黒いポンチョを着た男の人に気絶させられたリョータさんの事を思い出し、その名前を呼ぼうとしたが、猿ぐつわを噛ませられていて喋れない。

ど、どこなんだろう、ここ……。

私がそう思いながらキョロキョロ辺りを見渡してみると、幌の隙間から一筋の光が差し込んでいるのを見つけた。

私は身体をくねらせその方に移動し、隙間から外を覗き込んでみる。

ここは……も、森!?

私の視界には、うっそうと茂る沢山の木が見え、しかも木々の隙間から見える空は少し曇っているけど明るい。

やっぱり、もう夜が明けちゃったんだ……。

私は幌に背を預けると、一つため息をついた。

この馬車、一体どこに向かっているんだろう? そもそも、何で私を攫ったの?

などと考えてみてもまるで見当が付かない。

それよりもリョータさん、大丈夫かな……?

私の事助けようとしてくれたのに、もう一人の仲間の人にやられちゃって……。

……私、またリョータさんに迷惑掛けちゃうのかな……。


「おい、着いたぞ」

「!」


馬車の先頭から聞こえた男の人の声に、私の身体が少し跳ねる。

その後すぐに馬車が止まり、私を攫った男の人が猿ぐつわや縄を解いてくれたけど、やはり首輪は取ってくれなかった。

私は荷台から降りると、二人の男の人に挟まれてある場所に連れて行かれた。

アレは砦? 蔓が絡みついてるから廃砦なのかも。

目の前にそびえ立つ石造りの建物を見上げていると、不安な気持ちになってしまう。

ううん、気をしっかり持たなきゃ!

私は砦の中に連れられ、複雑な廊下を進んでいく。

そして辿り着いたのは、フォルガント王国の謁見の間より少し小さめの広間だった。

両脇には虚ろな目をした男の人達が並んでいて、その奥の玉座に一人の女性が座っていた。

高身長の女性で、長い紫色の髪の隙間から赤茶色の瞳が見える。


「こんにちわ。よく来たわね、魔王軍四天王のリムちゃん」

「何で私の名前を……!? そ、それよりも、あなたが私を攫った人達の偉い人ですね!? どうして私を攫うように命令してんですか!?」


私が警戒しながら問い詰めるとその女性は何も応えず、代わりに口元をニヤリと上げ玉座から立ち上がる。

そして、私の方にゆっくりと歩み寄ってきた。


「な、何ですか……?」


私がジリジリと後ずさりながら、私はその女性と対峙する。

ど、どうしよう……。

この首輪のせいで魔法を使えないから、今の私には戦う力が……。


「きゃっ!?」


などと思っている間に距離を詰められた私は、思わず尻餅をついてしまった。

ソレを好機と女性はバッと腕を広げ、そして私を――。


「よく来たわねリムちゃん! もう安心してね、私があなたの事を守ってあげるから!」

「……え? ええ!?」


突然訳の分からないことを言いながら私を抱きしめ、頬ずりをしてきたのだった。

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