第二話 魔界の生活は今日も大変だ!②
今まで騒がしかったギルドが、水を打ったように静まりかえった。
昼から酒を飲んでいた冒険者達、慌ただしくギルド内を走り回っていたギルドの職員達、その全員が視線を俺に向けている。
普通、こういう状況はステータスがメッチャ高かったというのが一般的だ。
しかし今の俺の状況は、それとは真逆だった。
「……ひ、低いって……何が……?」
これは何かの間違いのはずだと心の中で願いながら、俺は震える声で三人に訊いた。
するとリムが顔を上げ、俺にギルドカードを見せながら。
「リョ、リョータさんのステータスがすっごく低いんです……! 筋力、耐久力、魔力、俊敏性、この戦闘において最も重要とされる四つのステータスが平均以下なんです……!」
「は……は……」
リムのその言葉に、俺は身体を小刻みに震わせる。
「し、しかも……普通なら初期の段階で数十ポイントあるはずのスキルポイントが……た、たったの8ポイントだと……!?」
「は、はあああああああああああああああああああああああああああ!?」」
レオンの言葉に、俺は大絶叫した。
「おかしい、こんなのおかしい! え? 何!? 普通こういうのってカンストしてたりするもんじゃないの!? 俺TUEEEじゃないの!? それであっさり伝説急のモンスター倒して、『え? 俺何かやっちゃいました?』とかいうもんじゃないの!?」
「言ってる意味が全く分からないんですが!? だ、だけど、リョータさんは仮にも魔王に選ばれたはずです。カンストは流石にないですけど、普通ならもっと高い……はず……ですが……」
リムの声が小さくなっていくにつれ、俺の絶望感はドンドン増していく。
「し、しかしリョータよ。貴様の器用度と知力はなかなかのものだぞ。まあ、あまり戦闘においては必要がないが……」
「だったら言うなよ! 余計悲しくなるじゃんかぁ!」
レオンの言葉を受け、俺がギルドの床をバンバン叩いていると、
「ああでも……!」
突然今まで静かだったカミラさんが思い出したように言った。
「ユニークスキルがあるかもしれないですよ?」
「ユニークスキル……?」
ユニークスキルって確か、生まれながらに持つ固有のスキル……だったっけ?
俺がカミラさんに訊き返すと、リムがなるほどと言いながらポンと手を置く。
「そうですよ! ステータスは低いけど、ユニークスキルが凄い能力の人だって少なからず居ますよ! ハイデルさんやレオンさんもその一人ですし!」
「ううむ、ここは素直に喜んでいいのか分からんな……」
レオンが複雑な顔で悩む中、俺はパアっと表情を明るくした。
「それだああああああ! そうだよ、ラノベでもユニークスキルがメッチャ強い主人公だって多いし!」
「ええっと、リョータさんのユニークスキルは……」
リムはそう言いながら再び俺のギルドカードに目を移し、そして、
「……………………」
固まった。
「お、おい、リム……?」
俺はリムの反応に、俺は引きつった笑みを浮かべる。
嘘だろ……嘘だと言ってくれ……。
もしそうなら、俺の異世界チートライフは完全に終了してしまう……!
そんな俺の願いを裏切るように、リムは一言。
「……ないです」
「くそったれえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
俺の絶叫が、魔界の空にこだました。




