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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第三章 リトルウィッチ・ノクターン
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第十話 魔女っ子は今日も不機嫌だ!③

「いや~、無事に同盟結べて良かった良かった~」

「リョータさん、時と場合ではちゃんとした事言うんですね。普段からそうしてくれたらいいのに」

「やだよ、面倒臭いし。それに、ああいう口調は威厳ある王様かイケメン魔王しか使いこなせねえんだよ」


宮殿の無駄に広くて綺麗な廊下を、俺とリムがそう言いながら並んで歩いていた。

それにしても、魔族達はもう、この国と争いが起きることは無いだろう。

しかしまだ人種差別とか、そういった現実的な問題があり溢れている。

人間、どの世界でも人種差別という意識が多い。

全ての人間とまでは言わないが、せめてこの国の人達が魔族に対して好意的に接しられるようにしなくちゃいけないな。


「ん?」


などと思っていると、全長百メートルはあると思える廊下の奥から、豆粒の大きさの人間何十人がこちら側に進んできているのが視界に入った。


「なんだ、アレ?」

「どうしました?」


千里眼を発動させてジイッとその小人の集団を見つめる俺に、リムがコテッと首を傾げる。

アレは……いつぞやの騎士団じゃないか?

って事は、先頭を歩いてるのってやっぱり……。


「おや……あそ……にいる……はもしか……て……!」


向こうの騎士団も俺達の存在に気が付いたらしく、先頭にいる金髪の男が何かを大声で言った。

そして、俺達はフォルガント王国騎士団の面々と鉢合わせして、その先頭を歩いていた例の団長が気さくに手を上げた。


「やあ、君か。数週間ぶりだね」

「よう、ヤンデレマスターじゃねえか。どうだ、あれから元気にやってたか?」

「いきなり何なんだいその訳の分からない称号は!?」


俺がヘラヘラ笑いながら言うと、団長さんが食って掛かってきた。


「やんでれますたー?」

「ああ、コイツ前までメチャクチャヤベーヤンデレの女四人も侍らしてたんだ。だからヤンデレマスター。ちなみにレイナに告ってフラれた」

「止めてくれぇ!」


首を傾げるリムに説明してやると、団長さんが更に突っかかってきた。


「んだよベルトルト。事実だろ」

「確かにそうだけど、見ず知らずの女の子にそんな事言わないでくれ! ……って、僕の名前間違えてるよ!」

「ああ、ベロベルトだったっけ?」

「違うよ、何か惜しいけど違う! あと最初の文字で間違ってる!」

「アルフレッド」

「それは僕の父上ッ!」


ちょっとからかいすぎただろうか。

でもまあ、後ろに控えている騎士達が笑いを堪えてるし、結果オーライ。


「ハッハッハ、いや悪い悪い。そんで、身体の調子はどうだよ、アルベルト」

「フンッ……レイナ様のお供の聖女の子に直して貰ってこの通りだよ」


改めて俺が挨拶してやると、アルベルトは不機嫌そうに返した。


「それで、君は確か同盟の締結の為に来たんだよね」

「おう、さっき終わったばっか」

「そうか。それで、そちらのお嬢さんは?」

「え、あ、ええっと……」


唐突に話を振られ、リムは少し戸惑うとコホンと咳をした。


「初めまして、私は魔王軍四天王のリム・トリエルです」

「き、君が……? なあ、君達の国って人材不足なのか……?」

「ど、どうゆー意味ですかぁ!」


思わずと呟くアルベルトに俺が鼻を鳴らすと、リムがプンプンという効果音が付きそうな顔で怒りの表情をあらわにする。

しかし、最初は俺もまったく同じ事を思っていたことは事実。

今後、俺も舐められないように頑張ろう。

 

「随分前に四天王が全員殺されてから、四天王はジャンケン制度なんだよ」

「君らの国、よくそれで滅びなかったね……」

「まったくだよ」


俺の返答にアルベルトが何とも言えない表情をした。

が、すぐにリムに視線を向け膝をついた。


「それよりも……ごめんね、機嫌を悪くさせてしまって。僕はアルベルト・ノード。フォルガント王国騎士団長をしているんだ。よろしくね」

「こ、こちらこそ……!」

「ハハハ、可愛らしいお嬢さんだ」

「こ、子供扱いしないで下さい!」


おい、何リム口説いてんねん、いてこますぞコラ。

後ろの騎士も癒やされたような顔してんじゃねー!

腹が立つほど爽やかな笑みを浮かべるアルベルトに、俺が怒りに燃えていると。


――ドドドドドドドッ。


「「ん?」」


俺の後方から何かがものすごい勢いで駆けてくる音が聞こえた。


「何だ?」


そして、俺が振り返ろうとした瞬間。


「リムちゃん危なあああああああいッ!」

「ゴヘアッ!?」

「「「だ、団長おおおおおおお!?」」」


アルベルトの土手っ腹に、ジータのミサイルキックがめり込んだ。


その攻撃にアルベルトは後方にぶっ飛ばされ、ぐるんぐるんと後転を繰り返し、うつ伏せになって倒れた。

こ、このポーズは……!


「何やってんだよ団長ぉ!」


俺は廊下にうつ伏せに倒れているアルベルトの背中に嬉々としてそう叫ぶ。


「い、いきなり何をするんだ君は!?」

「いやそこは止まるんじゃねえぞだろ!?」

「君は何を意味の分からないこと言ってるんだぁ!?」


俺とジータを交互に見ながら喚くアルベルト。


「リムちゃん怪我してないかい大丈夫だからねリムちゃんの事はボクが守るからね?」

「え、ええっと……」


アルベルトを吹っ飛ばした張本人なのに、アルベルトの方を一度も見ずにリムに話し掛けるジータ。

何だろうコイツ、何か怖い。

新手のヤンデレか? 後ろの騎士達戸惑ってんじゃんか。


「ジータちゃんどうしたの……って、魔王さんとリムちゃん!?」


などと思っていると、ジータの後を追うようにレイナ達が走ってくる。

そんなレイナの姿を確認した後ろの騎士達は、半分まで持ち上げたアルベルトの身体を放り投げ、ビシッと背筋を伸ばした。


「なあ、コレどういう状況なんだ? 何でコイツが倒れてるんだ?」

「ここでアルベルトと話してたら、ジータがズギャーンしてドガーンとしてこうなった」

「説明する気あるです!?」


ないね、説明するのが面倒くさい。


「まったくもう……君! 何リムちゃん口説こうとしてるのさ!?」

「べ、別に口説こうとなんてしてないんだけど!?」


ビシッと指差して怒るジータに、アルベルトは訳が分からないと首を横に振る。


「ってか、何でお前コイツが口説いてるって分かったんだよ? あの距離じゃ普通聞こえないだろ?」

「ボクは小っちゃい子に危険が迫っていると、遠くでもソレが察知できるんだよ!」

「何そのシステム!? ユニークスキルか何かなの!?」 

「いいや、ボクはユニークスキル持ってないよ?」

「逆に怖いわ!」


コイツ、うちの国の連中に負けないくらい危険な匂いがする。


「僕がこの子に挨拶をしただけで危険って……」


俺とジータが話している間にムクッと起き上がったアルベルトは、心底恨めしそうにジータを睨みつける。


「だ、団長、そろそろお時間が……」


そんなアルベルトに後ろの騎士の一人が恐る恐る耳打ちする。


「そ、そうだね……君、今日の所は許してあげるけど、次は無いからね!」

「そういうアルベルトさんも、次リムちゃんを口説こうとしたら、消し炭にしてあげるよ!」

「「ぐぬぬ……」」


アルベルトとジータは、そう言いながら互いにメンチを切る。

仲悪いなぁ、この二人。


「ふ、二人とも、仲良くしようよ、ね……?」

「そうですよ、こんな廊下の真ん中で喧嘩なんてみっともないですよ!」


天使だなぁ、この二人。





「――んで、お前ら一体どうしたんだ?」


アルベルトと騎士達の後ろ姿を遠巻きに見ながら訊くと、エルゼが大剣を担ぎ直して応える。


「これから仕事をしに行くんだ」

「仕事?」

「ああ、この時期になると、この町の外の森にジャイアントワームっつうモンスターが大量発生するんだ。それの討伐だよ」


ジャイアントワーム。

ゲームでもよく出てくるであろう、あのでっかいミミズだ。

成程、確かに梅雨の時期はミミズが土から顔を出すからな。


「それよりお前ら、そのミミズをまたうちの国に持ち込んだりするなよ? 二度あることは三度あるって言うし」

「安心するです! もうあんな失態はしないですから!」


無理に薄い胸を張って強がるフィアに、逆に不安になってくる。

でもミミズかぁ……。

昔、『ミミズの糞は土の肥料に最適だすけ、むやみに殺しちゃいかんぞ』と、畑仕事をしていたじいちゃんに教わった事があった。

まあジャイアントワームは肉食らしいし、人に害をなすなら別に殺っちゃってもいいよね、じいちゃん!


「リムちゃん、そういうことだからボクは魔王城には同行できないけど……」

「大丈夫です、ちゃんと魔王城はテレポート先に登録してあります。あと、言われた通りここも登録してありますから」

「そっか。それじゃあ、君達はこれからどうするんだい?」

「ああ……特にここにいる用事もないけど、帰るにはまだ早いかな……」


ジータにそう訊かれ、俺は顎に手を当てる。


「あっ、それじゃあ、もしよければなんですけど、この国を観光してみたらどうですか?」

「あっ、いいなソレ! 俺も他の国の街とか見てみたかったし! なあリム?」

「そ、そうですね」


レイナのその提案に、俺はポンと手を置きながらリムに訊くと、リムは頷いた。

それに、最近リムに何かしてあげられないかと思っていたから、息抜きに観光とかもいいんじゃないだろうか。

大国の街かぁ、どんな感じなんだろう?

リムの為に、などと思っていたのだが、実際には俺が一番ワクワクしていた。

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