第七話 隣の大国は今日も壮大だ!②
「何の成果も得られませんでしたああああああああああ!」
「だ、大丈夫です! 何も問題ないですから、どうか頭を上げてください!」
今まで同盟の件をすっぽかしていた事を説明し、頭を地面に擦りつけ謝罪する俺に、レイナが必死になって止めようとする。
レイナはそう言ってくれるが相手は大国。
お互い国の行く末に関わる大事な同盟なのだ、下手すれば相手の王様怒らせて再び戦争になるかもしれない。
「でもしょーがないじゃないですかあああ! うちは外周小一時間の小さな国で、特に特産品とかもないんですからあああ!! そんでいきなり交易しようなんて言われても、やっぱり無理なモンは無理なんですよおおおおおおおお!!」
だけど謝っているうちに段々腹が立ってきた。
そう、バルファストは大国と呼ばれるフォルガント王国と交易なんて結べるほど資源が豊富なわけではない。
だけど断ったら断ったで、向こうとまた悪い関係になってしまうかもしれなかった。
だから俺はあの時、国民にも意見を聞くなんて言って答えをあやふやにしたのだ。
「お、落ち着いてください! その事については前にも言いましたけど、ただそういった繋がりがあったらいいなってだけですから!」
「でも怖えよ、もし俺が断ったのが原因でまた戦争になっちゃったら!」
レイナの言葉を遮り、俺は身を縮こませ今までため込んでいた思いを全部吐き出す。
そんな子供のような俺に、レイナがどうしたものかと悩んでいたその時。
「リョータ、騒がしいぞ。そんな喚き散らして一体何があったと……む?」
俺の声を聞きつけたのか、顔を顰めてため息をつきながら現れたレオンが、レイナの顔を見て立ち止まる。
そして、俺の元に歩み寄り、丸まっている俺の背中を軽く叩きながら。
「……勇者よ、最近コイツもコイツで色々と頑張っていたのだ。何があったか知らぬが、あまり追い打ちを掛けるようなことは……」
「ち、違うんですよおおおっ!」
――レイナが何とか誤解を解き、ここでは何だしということで、久々に魔王の間に移動した。
「あー……さっきは取り乱して悪かった。ゴメン」
「い、いえ……! むしろ、魔王さんの気持ちも知らずに色々押し付けたような形になって、本当にごめんなさい……」
俺は玉座の上で正座になって頭を下げると、レイナも慌てて頭を下げた。
だけどレイナは謝る必要は無い。
「それで、実は同盟の話と関連した話がありまして」
「関連した話?」
「はい。私の父フォルガント王は、直接会わずに私達を使って同盟の話を進めるのはどうかと申していたのです」
おお、向こうもそう思ってくれてたのか!
感心している俺に、レイナは懐から白い封筒を取り出した。
「コレは父からの書状です」
「おお」
俺はレイナからフォルガント王の書状を受け取ると、封を開け、そこに書かれている文にザッと目を通す。
事前連絡も寄越さずに勇者一行を向かわせた謝罪、交易の主な内容などなどが書かれていたが、最後の一文に、俺は目がくぎ付けになった。
『――近々、魔王ツキシロリョータ殿を、我が国に招待したい』
「……ねえ、この俺をフォルガント王国に招待するっての、無しにしてくんない?」
「ええ!? な、何故ですか!?」
俺がその文を指差して言うと、レイナは酷く戸惑った表情を見せた。
「いやだってさ、もし俺がフォルガント王国に行ったら何されるか分かんないし。だって実際俺らとの同盟に反対してる奴だっているんだろ?」
「それは……そうですが」
否定できないのか、レイナは下を向き俯き始めた。
俺が危険を冒して同盟の話をしに行く必要は無いし。
わざわざ来てくれて申し訳ないが、ここはお引き取り願おう。
そう思ったときだった。
「聞いたわよ!」
「ひゃあ!?」
魔王の間の扉が開き、リーンがが勢い良く入ってきた。
「何だよ、またジータの通信魔法か?」
「ええ。またアンタには連絡寄越さなかったみたいね」
てか、俺もうコイツが入ってくるのビビんなくなってるわ。
などと思っていると、リーンがこちらに早足で向かって行きながら。
「で、さっきの話だけど、もちろん行くわ。コイツと私で」
「はあ!? いや待て待て待て! 話聞いてたのかお前!? ってかお前も行くのか!?」
頭のおかしい事を言ったリーンに、俺は思わず立ち上がる。
「聞いてたわよ、あんたが暗殺とかにビビってたこと。でも、そんなんじゃ向こうの王様と直接会って話せないでしょ?」
「いや、それはそうなんだけどさ……」
「あと、フォルガントの王様にもちゃんと謝りたかったの」
「……でもアイツらの面倒はどうするんだよ?」
「私がいない間、よく近所の人達が面倒見てくれてるの。それにあの子達、最近自立性が出てきてね。洗濯とかも手伝ってくれるようになったから、大丈夫よ」
「そりゃよかったな……ハア……」
少しだけ嬉しそうなリーンに言い訳する気力を取られ、そのままため息をついて玉座にどっかりと座った。
……でも、リーンが一緒に来てくれるのなら心強い。
それに正直に言うと、バルファスト以外の国に行ったこともなかったし、フォルガント王国がどんな所なのかも気にはなっていた。
「……分かったよ。じゃあ一週間後。ジータのテレポートで迎えに来てくれ」
「あ、ありがとうございます!」
俺が頭を掻きながら言うと、レイナは表情をパアッと明るくした。
よし、折角だからお土産でも買っていくか。
などと、家族旅行が決まった時の心情になっていると、
「魔王様、少々よろしいでしょうか?」
コンコンというノック音とともに、ハイデルが魔王の間に入ってきた。
「アレ? ハイデル、いつもここに来るときは転移版使って来るのに、どうしたんだ?」
「あの、実は……」
「魔王君……」
俺が疑問に思っていると、ハイデルの後ろから何故か暗い表情のジータが顔を除かせた。
「ジ、ジータちゃん、どうしたの、そんなに落ち込んで……?」
レイナが心配そうに訊くと、ジータは俺に少し潤んだ目を向けて。
「ごめん魔王君……街を見学してたらリムちゃんを見かけて、声を掛けようとしたら近くの茂みからリムちゃんを見ていた怪しい男の人達がいて……つい街中で麻痺魔法使って騒ぎにしっちゃったよ……」
むしろグッチョブ!




