第四四話 開戦は今日も唐突だ!③ (質問返答、小ネタあり)
ビュウビュウと、耳元で風を切る音が聞こえるが、ここまで大きな音は初めてで、これから敵陣に乗り込む事よりもスカイダイビングしている現状の方に参ってしまっている。
だが何とか叫ぶのを我慢しながら、周囲を見渡す。
……今、上空を旋回しているガールズ・オートマトン・シリーズがおおよそ十前後。
しかも俺らの存在を既に感知しているな。
このまま上空で攻撃されたらひとたまりもないぞ。
迎撃するか? それとも防御に専念するか?
……ていうか結構高さあるなコレ。え、着地出来るか? 着地スキル使っても、足の骨折れるんじゃねえか?
「魔王様ぁ! 私、五体満足で着地出来る術も自信もないのですが!?」
「奇遇だな、俺もだ!」
「だ、ダメじゃないですか! ど、どうしましょう!? 私、お二人を抱えましょうか!?」
男二人が見た目は華奢な女の子に担がれるなんて、絵面が凄いことになる。
だが四の五の言ってられない、ここは頼むとしよう。
「ゴメンおねが……っ」
言い掛けて、俺は全力で顔を歪ませた。
ガールズ・オートマトン・シリーズの持つ様々な機種の銃の銃口が、四方八方からこちらに向けられていたからだ。
早速かよもう!
「ハイデル先生、お願いします!!」
「お任せを!」
俺が怒鳴ると、ハイデルは空中で体制を直し両の掌を天に掲げる。
その掌から、黒炎が轟々と音を立てて噴出し、そのまま俺達を包み込んだ。
「『ヘルズ・カーテン』ッ!!」
「「「――ファイア」」」
銃弾の雨が、黒炎の壁に激突する。
だがその高熱によって、銃弾は溶けてそのままボタボタと落ちていく。
辛うじて壁を突き破った銃弾でも、こちらにまでは届かない。
それだけじゃない。
「障害物及び炎の熱によって、メインカメラとサーモグラフィーでは、ターゲットが確認出来ません」
相変わらずな説明口調なSF少女のその言葉を聞き、俺はハイデルの背中を軽く叩いた。
「防御とサーモグラフィー対策はバッチシだな!」
嘗てのカムクラで、ガールズ・オートマトン・シリーズと闘って分かった事。
コイツは気配を消そうが透明化しようが、サーモグラフィーでこちらの居場所を見つけてしまう。
だが、ハイデルのヘルファイアならば、相手からの視覚も遮断できるし、周囲の炎の熱で俺らの体温を消すことが出来るし、何より防御にもなる。
まさに一石三鳥。恐らく、この選別メンバーの中で一番のガールズ・オートマトン・シリーズ特攻はハイデルだろう。
「まあ、呼吸するだけで喉火傷しそうだけど……!」
「はい……レイナ様は大丈夫ですか……!?」
「だ、大丈夫です……!」
だが銃弾を溶かすほどの熱だ、炎に触れない距離に居るとは言え熱だけで参ってしまう。
ハイデルの魔力方面の意味でも、俺達の耐久力方面の意味でも、長時間は発動できないか。
だが、無事に着地するぐらいの時間は……!
「いッ!?」
「魔王様!!」
突然左頬に走った痛みに、俺は顔を顰める。
どうやら銃弾が頬を掠めたらしく、ハイデルの悲痛な声が聞こえた。
俺は瞬間的に透視眼を発動し、炎の向こう側を確認する。
「アイツか……!」
そして、ヘルズ・カーテンを突き破った銃の持ち主のSF少女を見つけた。
周囲が攻撃が通じないと判断し銃を下げている中、唯一スコープを構えている一体。
アイツが持ってるのは何だ? 狙撃銃? ボルトアクションライフルって名前だったっけ……。
って、撃ってくる――!
「ふんっ!!」
「うわっ!?」
俺は全力でハイデルの腕を引っ張ると、ハイデルの頭がガクンと動く。
その瞬間、ハイデルの頭があった位置に銃弾が通過した。
「あっぶね……!」
アイツ、間違いねえ。正確に俺らの事を狙って来てやがる!
母艦までの距離はもうちょい、十秒足らずで着くだろうが、それまでにコイツを凌げるとは思えない……。
「ハイデル、俺らの真下だけ穴開けろ!」
「は、はい!」
俺の指示にハイデルは、すぐに黒炎の壁に穴を開ける。
「レイナぁ! ハイデル任せた! 『アクア・ブレス』!!」
「ま、待って下さい! それだと魔王さんが……!」
俺はレイナの静止を聞かず、アクア・ブレスで舵を取りながら、黒煙の壁から飛び出す。
その瞬間、一斉に銃口が俺の方へ集中する。
全身に毛穴が泡立つのを感じながらも、俺はキッとある一点を睨む。
例のライフル少女だ。アイツは依然変わらず、ハイデルに照準を当てている。
俺は、そいつに向けて掌を伸ばす。
「『流電鞭』!!」
掌から放たれた鞭状の黒雷は真っすぐライフル少女に飛んでいき、その足に絡みついた。
「降りろやあああああああ!!」
俺は落下エネルギーと全体重を掛けて、ライフル少女を引っ張る。
するとコイツも俺と同じように真っすぐ落ちていく……訳もなく。
「飛翔モード、フルバースト」
背中のジェットパックの噴射口から更にエネルギーを放出し、俺をぶら下げたまま空中に留まろうとする。
だか俺は身体を捻り、更に流電鞭をしならせる。更に。
「『アクア・ブレス』うううううううう!!」
アクア・ブレスで遠心力を加え、俺は自分の身体を軸にライフル少女を振り回した。
ユニークスキルと魔法の同時発動、流石にキツイ……! でも!
「でりゃあああああああああああああい!!」
俺はスリングの要領で、ライフル少女を別の個体目掛けてぶち当てた。
どちらもシールドの展開が間に合わなかったようで、鈍い音を響かせた二体は、体がひしゃげて腕や足などが胴から離れていた。
うっ……人間と近い姿してるから、罪悪感が……!
そのまま一つの鉄塊となって落ちていく二体を横目に、俺は再度周囲を確認する。
全員撃ってきてはいるが、標準が上手く定まっていないようだ。
コイツらが、完全百発百中じゃないことは、カムクラでの一戦で分かっている。
ここまで距離が離れてて動いてれば、当たる事はそうそうない……と信じる!
それよりも、どうやって着地しようかなコレ……!?
レイナとはだいぶ距離が離れちゃったし、自分から飛び出しておいてここまで迎えに来てくださいなんて都合の良い事は言ってられない。
「ターゲット、ロックオン」
とここで、至近距離まで詰めてきたSF少女が眼前で銃口を構えた。
こうなったら、一か八か!
「フンッ!」
俺はこちらに向いている銃口を蹴り上げると、鼓膜を劈くような銃声が響く。
内心肝を冷やしながらも、そのままSF少女の髪を掴むとこちらに引き寄せる。
そして背中に回り込むと、両足に全力を注いで。
「シールド、展開」
「『ハイ・ジャンプ』!!」
背中に向けて全力ドロップキックを放ったが、その瞬間硬い衝撃が両足の裏に伝わる。
流石に今度はシールドが間に合ったようだ。
けれども好都合! しっかりした足場を作ってくれたなぁ!?
俺はそのままシールドを足場に真上に飛ぶ。そして一番近くに居たSF少女に飛び乗る。
「シールド、展開」
「もいっちょ『ハイ・ジャンプ』!!」
そして再び真上に飛び、落下の速度を徐々に減らしていく。
必殺連続踏み付け! 某有名ゲームキャラから着想を得た、土壇場作戦だ。
やってみてなんだけどよく可能だなこの作戦! もう俺動きがゲームキャラだよ、スーパーマオウだよ!
相変わらず異世界人に近づき日本人から遠ざかっていく自分の身体能力に軽く引きながらも、俺は母艦に着地した。
先に母艦に降り立っていたレイナとハイデルが、周囲を警戒しながら駆け寄ってくる。
「魔王さん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫! 俺、自分が思ってたよりバケモンだったから!」
「そ、それは良い事なのでしょうか……良い事なのでしょうけどもぉ!?」
「立ち話してる暇はねえ、立ち止まったら死ぬと思え!」
上空からの一斉射撃ほど分が悪いものはない。
早く中に侵入しなくては、依然変わらず恰好の的だ。
レイナの脚力なら大丈夫、俺もギリ大丈夫。ただハイデルの脚力が問題だな。
俺はハイデルを担ぐと、全力疾走して銃弾の雨から逃れる。
「ゆ、勇者様に担がれ魔王様に担がれ、私文字通りのお荷物になっていませんか!?」
「そこは担当分野の問題だから気にすんな! でも高身長故に重いなお前!」
「酷いですよ魔王様! 人に対して体重が重いなんて!」
「女々しい事言ってんじゃねえよおおおおおお!?」
と、すぐ後ろで爆音と衝撃波が響き、背中から襲い掛かってくる。
チラとみると、ロケットランチャーを携えたSF少女が真後ろに浮遊している。
ロケットランチャーかよ、あの日以来だな!
「だがなぁ、テメエがロケットランチャーならこっちはハイデルランチャーじゃい!!」
「私武器として認識されています!? ですがお任せをおおおおお!?」
「クッソ他の奴の攻撃が邪魔で照準合わせらんねえ……!」
「ここは任せてください!」
と、今までそれとなく銃弾を聖剣で弾き俺達を護ってくれていたレイナが飛び出した。
その身体には、勇者特有の神聖な魔力が帯びており、淡い光を放っている。
……一閃。そう、純粋な一閃だ。
特別な事は何もしていない、ただ飛び出し、近づき、権を横に振るっただけ。
それだけで真空派が生まれ、波紋が広がるように周囲のSF少女達に襲い掛かる。
刃が直に当たった個体はそのまま真っ二つになるが、周囲の奴らはシールドを展開し真空派を防ぐ。
「やっぱり、これだけじゃ防がれてしまいますね……」
そう呟くとレイナは空中で身を翻し、SF少女の残骸を足場にし、もう一度跳躍。
今度は純粋な斬撃ではないようで、聖剣に魔力が帯びていく。
澄み切った青空に、まるで太陽が二つあるかのようだ。
「『ブレイブ・ムーンライト・ストライク』ッ!!」
いつか見た、レイナの必殺の一撃。
聖剣が三日月型の軌跡をなぞり、それが具現化して放たれる。
その直線状に居たSF少女は、シールド諸共切られていく。
「まだまだ、いきますよ……!!」
必殺の一撃……だと思っていたのだが、まるで俺がアクア・ブレスを使う時のように、お手軽に連発しているのだからたまったもんじゃないだろう。
SF少女たちは防御に徹するのを止め、回避に専念し始める。
「俺達が必死こいて何とか一体だったのに、どんどん落ちてくるな……」
「本当に、数年前まで彼女たちと敵対関係にあったと思うと怖いですね……」
正直、人間離れしてきた俺でもレイナに勝てるビジョンが見えない。
やはりパワー……と、思っていたけど、流石に多勢に無勢が過ぎるか。
斬撃の雨を搔い潜って、レイナの懐に入ろうとしてくる個体もいる。
何を言うでもなく、俺とハイデルは同時にユニークスキルを発動し、掌の上で形を形成させていく。
「くっ……!」
「「ターゲット、ロックオ――」」
二体がレイナの左右から、同時に銃口を向けたその瞬間。
「『黒雷槍』!!」
「『ヘルズ・グングニル』!!」
左側の個体に黒雷の槍が、右の個体に黒炎の槍が、ほぼ同時に突き刺さった。
そしてゆっくりと落下していく二体を横目に、俺は大きく息を吐きだす。
「意図せず同じ槍になったなぁ!」
「はい、お揃いですね!」
「嬉しそうにすんなキモイなぁ!」
「そんなぁ!」
「二人とも、ありがとうございます!」
「すまねえレイナ、今の俺達には援護射撃しか出来ねえ!」
「それだけで十分です!」
レイナが先程の俺みたく、SF少女を足場にして飛び回り、一体ずつ着実に倒していく。
だがこのままじゃ埒が明かない。
「出入口どこだ……!?」
俺は透視眼と千里眼を発動させ、周囲を見渡してみるもそれらしきものは見当たらない。
アレか、操作でどっかに出入口が開くパターンか!?
って事は、破壊して穴開けるしかないのか!? 流石に無理だぞ、この分厚い甲板ぶち抜くのは!
仕組みがよく分からんシールドよりも、分厚い鉄板の方が風穴開ける自信がない!
「魔王様、援護が間に合いません!」
「マジか……!」
と、出入口探しに気がそれ過ぎてしまったようだ。
レイナの斬撃と、ハイデルの遠距離攻撃を掻い潜った一体が、銃を構えずそのまま突っ込んでくる。
やばい、アレは……!
「レイナ、そいつ自爆する――!!」
「……ッ!」
そう忠告するよりも早く、その一体は弾丸のようにレイナに飛んでいく。
そして、その身体の胸部から、鈍い光があふれ出てきたその時。
「ファイ――」」
レイナの間合いに入るその直前で、ビタッと空中で止まった。
俺の静止眼とは違い、まるで目に見えない何かに引っ張られているように、慣性の法則を無視した止まり方をした。
俺以外にこんな芸当が出来る奴は……!
「貴様らぁ! 段取りと違うではないかぁ!」
「うひゃあ、高いです怖いですううー!」
「「レオーン!!」」
「フィアちゃん!!」
ヒーローは遅れてやってくるとばかりに、レオンとその後ろに必死にしがみ付くフィアが飛び出してきた。
ハイデルを持ち上げた時と同じ方法で、自分自身も具現化した影を足場にしたのだろう、その足元にはうねうねと動く黒い影が見える。
そしてその影が、自爆寸前のSF少女の影に結び付き、引っ張っていた。
「我が影を踏まずとも影同士を結び付ければ問題ない! レイナよ! 今の内だ!」
「っ、はい!」
レオンが動きを止めている間に、レイナが自爆寸前の一体をぶった切る。
しかし自爆はもう止められないようで、漏れ出す光が一層強くなっている。
だがレイナは身体を捻り、その残骸をまるでサッカーボールのように蹴り飛ばす。
そして、その先に居た一体に激突した瞬間、周囲の複数体を巻き込んで爆散した。
レイナ意外と容赦ないっていうか、戦い方が妙にリーンを彷彿とさせる。
そういや前々から、たまに模擬戦してたっけ……。
最強と最強が互いに干渉し合い更に最強に……俺、追いつけるかな。
なんて思っていると、ぐったりした様子のレオンが母艦の上に降り立った。
「フィアよ、そんなに強くしがみつくな! もう船の上だぞ!」
「ううぅ、風圧が強くて死ぬかと思ったです……」
「まったく……貴様ら! まさか我らを忘れていた訳ではないだろうな!? 影が薄いのは貴様らどっちかだけにしろ!」
「だ、誰が影が薄いですか!」
「寧ろ影使いのお前の方が影が薄いべきだろうがよ!」
なんてギャイギャイ言い合っている間にも、ガールズ・オートマトン・シリーズは上空から狙いを定める。
「『グレイス・ウォール』!」
だが、フィアが俺達を囲うように生成した不可視の障壁に阻まれ、弾かれた銃弾が宙を舞う。
「ぐっ……一発一発ならまだしも、数が多いです……! あんま持たないですよ……!」
「助かるぜフィア! でもアレ……? なんか頭痛くなってきた……」
「わ、私も……まさか神聖な障壁に囲まれた為に、教会に入った時と同じ効果が……? レオン、大丈夫ですか?」
「はあ……はあ……上空故に日光が近い……そこへ更に神聖魔法とは、我が一体何をしたというのだ……? 影を何度も極限まで伸ばして、魔力もかなり持っていかれおええぇ……!」
「フィ、フィアちゃん! 二つの意味で持たなそうだよ!?」
「だあー! 何で共闘相手がこんなにも相性悪いですかー!」
でも、銃弾の雨は凌げている。
今のうちに……!
俺はもう一度魔眼を発動し、先程よりも注意深く母艦を観察する。
……!?
「あ、入口ここかよ!」
「ここ……って?」
俺の視線に続くように、皆が自分の足元を見る。
「ただの甲板、のようですが……」
「エレベーター方式っていうか、まあ要するに今俺達が立ってる床が上下に動いて、下りた時に中に入れるって感じ。多分操作系かな、このエレベーター」
「という事は、この床を破壊して進むしかないですね」
「レイナ、いけるか?」
「あの銃弾? が当たっても傷一つ付いていない強度ですし……この硬さを破壊するとなると、衝撃波で皆さんが吹き飛ぶと思います……」
「ハイデルのヘルファイアは?」
「い、一時間程時間を貰えれば風穴程度なら……」
「どっちにしろグレイス・ウォール壊されるですぅ!」
ヤバい、初っ端から詰んだ?
こうなったら、レイナに出入口破壊に専念してもらって、残りでガールズ・オートマトン・シリーズの相手をするしかないか?
だとすると、予定よりだいぶ時間も体力も魔力も食いそうだが、やむを得ないか……。
「少し、試したい事がある……」
「レオン?」
力なく俺の肩を掴み前に出たレオンは、しゃがんで自分の影に手を突っ込む。
すると触れていない筈の俺達の影が、渦を巻くようにレオンの影に集まっていく。
「よし、いけそうだが……フィアの魔法が邪魔で最終工程が出来ん」
「フィア、どんだけ意図せずレオンの足引っ張るんだよ、どんだけ残酷な運命だよ」
「本当に何でこの編成にしたです!? そ、それよりも、邪魔なら障壁解くですか!?」
「そしたら私達一瞬で蜂の巣になってしまいません!?」
「大丈夫だ、一瞬で済む……! フィア、頼むぞ! 全員、我に捕まれ!」
「う、ううう! ええい、私の命レオンに預けるですー! 責任取れですよー!」
割と重めなことを叫びながら、最後にレオンに触れたフィアが障壁を解いた。
「『シャドウ・トゥルー』……ッ!!」
その瞬間、地面が消えたように感触が無くなり、体が下に落ちていく。
何度か覚えのあるこの感覚、俺達を影の中に落とすつもりなのか?
確かにそれなら銃弾は当たらないけど、ただの時間凌ぎに変わらないんじゃあ……あ?
「あいだぁ!? ……え? 中入れた!?」
落ちた先はいつもの影の世界ではなく、俺が透視眼で見た甲板の内部。
均等な間隔で床に埋め込まれた照明が、メタリックな内装を照らしている。
ここは、廊下か?
尻もちをつきながら、困惑と驚愕で固まっていると。
「ぜえ……ぜえ……つい最近、身に着けた新たな技だ……」
「新たな技……って、顔色最早新雪じゃねえか! 大丈夫か!?」
肩で息をしながらレオンがその場に倒れていた。
「ま、魔力が足りん……!」
「な、なら私の血を吸えです! それで少しは回復するです!?」
「今こそはって感じで悪いけど、ポーションの方が早いと思う。ホレ、アホみたいに持ってきてるからジャンジャン飲め」
「助かる……」
「むぅ……」
「睨むなよ、キスマーク付けて貰いたいんだったら二人きりの時にして貰え」
「ざけんなです、聖職者になんて事言うですか!」
お前はもう聖職者じゃなく性職者だよ、というツッコミは止めておこう。
「……ぷはあ! あー、生き返ったぞ……」
都合がいいのか悪いのか、俺とフィアの会話が聞こえなかったレオンは美味そうに魔力回復ポーションを飲み干した。
「ポーションがスポーツドリンクに見える。っていうか、何あの新技」
「シャドウ・トゥルー……影同士を繋ぎ合わせ障害物通り抜ける技だ。例えば今のように、我々の影とあの天井の影を繋ぎ合わせ一つにすることで、床を通り抜けたのだ。通り抜けられるのは精々壁一枚程度である事と、表裏で影が重なっているという条件があって可能だがな。地面に光源が埋め込まれている造りで助かった」
「お前……俺の知らない間にどんだけ成長するんだよ……」
コイツはいつの間にか新技を習得している事が多すぎる。
多分技の多さなら俺を勝っているんじゃないか?
「フッ……長年シャドウを用いた必殺技のイメージトレーニングを積んできた故の成長速度だ」
「厨二病もここまでくると尊敬に値するな」
取り敢えず、潜入成功!
質問Q&A
Q:エクスプロージョン(仮)の威力はどのくらいなんでしょうか?
A:威力は正直そこまでないです。大体初級魔法以上中級魔法以下ぐらいです。ただ、リョータは爆発させる前にスキル『トラップ』を使って上手い具合に爆発するように調節しているので、広範囲にまで炎が広がります。また、爆発音と爆煙が威力の割にかなり派手なので、相手をビビらせるには持ってこいらしく、最近だとモンスター狩りの際、ちょくちょく爆竹代わりに使っているようです。




