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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第九章 ワンウィーク・スクールデイズ
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第三六話 宴会は今日も陶酔だ!②


「――ッ!」


……アレ?

おかしいな……確か俺、ロリ初代と手を握った筈だが……。

何で俺はベッドの上に寝ていて……いや、寝てて同然か!

そうか、俺夢の世界から戻って来たんだ!


「…………ふう」


一回呼吸を置いてから、寝たまま辺りを見渡す。

ここは……うん、相変わらず質素な俺の部屋だ。

という事はやっぱり、少なくとも一日以上は経過している。

そしてこの部屋は真っ暗で、恐らく夜中なのだろう。カーテンも閉まってる。

だが、魔神眼がある為問題ない。

時計を見てみると、もうすぐ十一時に差し掛かろうとしていた。

うーん、なんて中途半端……。


皆、どうなったのだろうか?

というか俺は、一体どれくらい気を失っていたんだろうか?

ちゃんと、事の顛末を知らないと。

そう俺が身体を起こそうとした時だった。


「……?」


アレ? 身体が思うように動かない……。

今更気付くとは、目覚めたばっかで身体の感覚が鈍っていたのだろう。

動かせないのは主に左半身。だが、身体が麻痺してるとかそういうのじゃない。

まるで、誰かにしがみつかれているような……。

……というか、温い。

え? ま、まさか、まさか、コレは……!

俺の脳裏にある一つの可能性が浮かび上がり、ソレを確かめるために、俺は今更自分に掛けられている布団の中を覗き込んでみた。

ソコには、天使が居た。


「スウ……スウ……」


リムが俺の左腕にしがみついて、小さな寝息を立てていたのだ。

普段のローブ姿とは違い、今は可愛らしい薄水色のパジャマを着ているリムは、俺の左腕どころか左足にも自分の足を搦めてガッチリホールドしている。

パジャマだけあって生地が薄いのか、リムの体温も柔らかさもダイレクトに感じられる。

そう……コレは、俺が夢にまで見た光景。全青少年にとっての願望。

可愛い妹の、添い寝である。


「スー……ッ」


いよっしゃあああああああああああああああああああああああああッ!!

イエス、オゥイエスッ! フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

俺は大きく息を吸い込み、心の中で喜び叫びのたうち回った。

リムが居る! 俺のベッドに! 俺の横に!

ヤバイ、凄い、コレが添い寝だというのか!?

何と言う温かさ、何と言う愛おしさ! そして何と言う犯罪臭と罪悪感!

女の子の温もりに対し喜んでいる反面、コレが誰かにバレたら遂に牢獄にぶち込まれるんじゃないかと心配になってしまう。

リグルさんに至っては、輪脚が鼻っ柱に飛んで来そうだ。

そんな事考えてるから俺は変態なんだろうけど、今はこの喜びを噛み締めていたい。

カムクラでのいざこざでマイナスのマイナスまで落ちていた俺の幸福ケージが、今一気に跳ね上がりヘブン状態になっていた。


……って、いかんいかん! 

まだ心の底から喜んでいい場合じゃねえだろ!

リムの無事は分かった、じゃあ他の皆は!?

確かめに行きたい……でも、この期を逃したらもう暫くはリムの添い寝を堪能できないかもしれない……ッ!

いや、圧倒的に前者の方が優先だろ!

ああでも、リムってメッチャ良い匂いするな……! 

香水付けてる訳じゃないのに、何で女の子ってこんなに良い匂いがするんだろうっておバカアアアアアアアアアアアアァッ!

ちーがーうーだーろーッ! 己の欲望を押し殺せ、今は魔王としての責務を全うしろ!

ううううううううごおおおおおおけええええええええええええええええッ!!


と、俺が何とかリムのホールドから抜け出そうと小さくモゾモゾしていると、耳元でカサッと何かの音がした。

首だけ右側に回して見てみると、俺の枕元にB4サイズほどの紙が置いてあった。

しかも、紙一杯に文字が書かれている。

手紙……? ここにあるって事は、俺宛?

俺は唯一自由に動かせる右腕を伸ばし手紙を取ると、顔に近づけて読んでみる。


『――リョータへ。この手紙を読んでるって事は、目が覚めたのね。それと、今リムが自分の隣で寝てて、戸惑ってるところでしょ? アンタの事だし、しばらくこのままでって寝たフリ続行しそうだから、この手紙を置いておく。リムを起こさなくても状況把握出来るようにね。でも、リムに変な事したら死を覚悟しなさい?』


リーンお前、俺の理解者過ぎるだろ……。

ここまで自分の思考を理解して貰えると、嬉しいような、逆に怖いような。

思わず苦笑してしまいながらも、俺は続きを読み進める。


『まず、アンタが目覚めて一番気にしてるだろう皆の安否だけど、心配要らないわ。アンタ以外全員無事よ。カインもミドリも、あの隊長さんもね。この戦いは私達の勝ち』

「~~~~~~~ッ!」


その文面を見た瞬間、俺の中から熱いものが込み上げて来た。

そっかぁ……そっかぁ!

よかった、本当によかったぁ!

皆生きてるのか……皆助かったのか!

ああ駄目だ、涙が溢れてくる……。

俺は濡れた目元を袖で涙を拭う。

というか、俺もどうやらパジャマ姿らしい。


でもそうか……。

つまり教皇は俺を殺さないで、そのまま去ったって事か?

だが情けを掛けて俺を殺さないでおいた、なんて事がある訳がない。

きっと何か外的要因があり、やむを得ず撤退したんだろう。

あの状況であのバケモノ相手に何か出来るとしたら……カインとアカツキか。

そう俺が予想したところで、ある一文が俺の目に止まった。


『それと、正直言いにくいけど……アカツキは死んだわ。結局そのまま教皇に殺されたみたい。詳しい顛末は後で説明するけど、アンタが気に病む必要は無いわ。あの時は流石に仕方なかった』

「…………」


……アイツには、死んで欲しくなかった。生きて、今までの罪を償って欲しかった。

それにいくら敵でも、殺され掛けても、やはり顔を知っていて話した相手が死んだとなると、心が締め付けられる。

だがリーンの言うとおり、俺が気に病む必要は無い……。

無い……のかな? 本当に?

いいや、アカツキの事も、後で自分で考えを纏めよう。


『ミドリは今、カムクラに居る。呪いの事もあるし、カインの側に居させてあげたいけど、そこら辺は魔王のアンタが居なくちゃ何も決められないから。でも毎日リムのテレポートで様子を見に行ってる。正直、今まで孤児院で過ごしてた時より元気そうよ。個人的には嬉しい反面ちょっとやるせないけどね。ただ様子を見に行く度に、アンタの事心配してる。だから速攻カムクラに行く準備しなさい』


……そっか。

まあ、そうだよなぁ。

唯一ミドリの呪いを打ち消せるのがカインだけだとしても、アイツは一国のお姫様。

問題が解決した以上、じゃあミドリはそのまま其方で預かってて下さいって訳にもいかないし。

でも、ミドリが元気そうでよかった。

早く会いたいな。


『この手紙を書いてる今、アンタは二週間気を失ったまま。国民も子供達も心配してる。レイナ達も、しょっちゅうお見舞いに来てるわ。四天王の皆に至っては、ハイデルは今でも大泣きしてるし、ローズは何度もアンタに精神魔法掛けて意識を取り戻す方法を探ってるし、レオンはフィアとのデート、心から楽しめなかったらしいし、リムは今みたいに付きっきりでアンタの看病してる。そしてアンタがコレを読んでる時、今よりもっと時間が過ぎてるかもしれない。だからサッサと起きて、そして今まで心配掛けた皆に、いつもの無駄に元気な姿を見せてあげなさいよね――』


ミドリだけじゃない。

皆に早く会いたい、皆に笑ってただいまと言いたい。

鼻の奥が再びジンとするのを感じながら、俺は手紙を読み終えた。

だが紙の一番下の方に、妙に皺が寄っている事に気付いた。

目を凝らして見てみると、どうも何かを書いて消した後のようで、筆圧が残っていた。

……何を書いたんだ、アイツ?

見られたくないから消したんだろうが、気になってしまってしょうがない。

なので俺は魔神眼の能力で視力を上げて、筆圧の跡からその文字を読んだ。


『私だって、アンタが心配でしょうがないのよ。最近ボーッとする事が多くなったし、食欲も湧かないし、アンタの声聞いてないと全然調子が出てこないし……。ねえリョータ、お願いだから早く起きてよ』

「……!」


最後の文章は、メッセージというにはあまりにも違っていた。

コレは願いだ。七夕に願い事を短冊に書くような、必死の懇願だ。

そもそも、この手紙は俺がこういう状況の時の為に書いてくれている物であり、ずっと枕元に置いておかないといけない。

だから少なからず、俺の様子を見た奴らもこの手紙に目を通すはずだ。

リーンはソイツらにこの文章を見られたくないと思ったから、書いたにも関わらず消してしまったんだ。

アイツの事だ、『リョータはしぶといから大丈夫よ』とか言って落ち込んでいる皆を励ましてくれていたのだろう。

そんなリーンが自分の弱音を誰かに知られる訳にはいかない。

だから……。


(あー、どうしよ……)


だから俺はどうしようもなく、リーンが好きなんだよ。

もう、袖で拭っても拭いきれないほどの涙が溢れ出した。

でもリムを起こすわけにもいかないので、仰向けのままただ噴水のように動かないでいた。

涙が治まる頃には、枕元も顔面もビショビショになってしまっていた。


「…………」


皆には早く会いたいけど、時間が時間だ。

今更起きたと騒いだって、皆寝不足になるだろう。

だから俺は、このまま朝が来るまで待つ事にした。

でももう、俺の中に溜まっていた心配は溶けて消えた。

流石に全てとは言えないけど、それでも、寝まくったばかりでも安眠できると思ってしまう程。


俺は手紙を元の場所に戻し、右腕を布団の中に入れた。

折角だし、リムの温もりを思う存分堪能しよう。

うん、もう認めよう。俺はヤベえロリコンだ。

なんて開き直りながら、リムを抱きしめようとそっと寝返りを打ったとき。


「…………?」


何だ……?

何か……その、うん……アレだ。

この小さい女の子が添い寝しているという状況において、大変最低な事ではあるのだけれど……。

下半身に、違和感がある。


いや、でも決してリムに欲情している訳では無い!

下半身に違和感があると言っても、おっ立ってる訳じゃないんだ!

寧ろ今は普段よりも小さく感じる。

まあその、リムをまったく異性として見てないって訳じゃないんだけど……。

……えっ? じゃあ何で俺の息子、スモールサイズなの?


「………………」


アレ……?

ねえ、待って……?

何でこんなに……こんなに、俺のパンツ濡れてるの……?

まさか、お漏らししたとか……?

いや、にしたってそこまでビショビショじゃないっていうか……濡れているのがパンツの前部分だけっていうか……。

……えっ?


……俺は恐る恐る、右手を股間に伸ばしてみた。

勘違いであって欲しい、寧ろ勘違いであってくれ。

そんな願いを込めて、俺はズボンの中に手を突っ込んで……!


――ネチョ。


「スウウウゥー……」


何やってんだ俺の息子はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?!?!?

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