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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第二章 隣の国の勇者さん
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第五話 勇者は今日も最強だ!①

勇者が魔王城に攻めに行く。

それはRPGゲームでも、異世界王道もののラノベでも、よく見る事があるシチュエーションだ。

勇者が魔王城に攻めに行くと聞けば、殆どの者が心躍ったりするだろう。

人はなぜその言葉に心躍るのか。

それはゲームもラノベも、どちらも勇者が主人公だからである。

それもそうだ、正義のヒーローである勇者を誰しもが主人公だと思い、感情移入する。

しかしながら、もし、それが逆の立場だったらどうだろうか。

勇者が魔王城に攻めに行くではなく、勇者が魔王城に攻めて来ただったら、どうだろうか。

もし、歴代最強と謳われる勇者が、主人公である魔王を殺しに来たと聞いたのなら、その時は――。


「うわああああああああああああ! 俺はまだ死にたくねえええええええええええええッ!」

 

俺のように、大パニックになっているだろう。





――勇者一行が攻めに来た。

その緊急警報がバルファスト魔王国に鳴り響いた時、先日のドラゴン襲撃より大パニックになった。

街の人々は勇者一行が目指しているであろう魔王城からできるだけ離れた建物に避難している。

この国には兵士がいないため、街の冒険者達が臨時で魔王城や街を守っている。

そんな魔王城のてっぺん、魔王の間にて。


「うわあああああああああああああああああああ! ああああああああああああああああああ!」


俺は大絶叫していた。

勇者の話は俺がこの世界に転生した初日に聞いていた。

その勇者は、このバルファスト魔王国の隣国、フォルガント王国という大国の第一王女。

先代魔王サタンを瞬殺し、とんでもない力を持っているというこの世界で最強の存在。

そんな奴が、俺を殺しにここに向かっているのだ。

正直、魔王城を守っている冒険者達では絶対に敵わない。

ああもう、いい加減にしてくれよ!

ドラゴンの次は勇者一行とか、この世界は俺に何の恨みがあるんだよ!?

展開が早すぎるんだよッ!!

と、後悔していてもしょうがない。

今は勇者一行をどう対処すればいいかを考えよう。

……ってか、何で俺ここに居るんだろう?

勇者一行がここに向かってきていると分かっているのに、何で魔王城に居るんだろう?

もしかして、ここより外が安全なのでは?

そうだよ、今すぐここから逃げよう!

そう思った俺は、すぐさま魔王城から逃げだそう……と、したのだが。


「はーなーせえええええええええ!」

「いいえ、そうはなりません、魔王様!」


床を這う俺の足に、ハイデルが逃がしてたまるかと言わんばかりにしがみついていた。


「何でだよ!? アイツらはここを目指しているんだぞ!? だったらここより街のどっかに逃げた方が安全だろ!」

「ダメです! 勇者一行が魔王の間にたどり着いた時には魔王が逃げていたなんて、そんな事があっては貴方の威厳が損なわれます!」

「俺には威厳なんて元からねえんだよ! てか、テメエに威厳なんて言われたくねえよ、カラスに国宝盗まれた四天王によぉ!」


と、そんなやりとりを何回も繰り返していた。

先程ハイデルが言ったように、俺が逃げたら威厳がなくなるとか言ってくるが、ほんとに俺に威厳なんてない。

そう俺がジタバタしていると、目の前の扉が開け放たれ、リムが肩を上下させながら。


「リョ、リョータさん、報告しますっ! ただいま、街の中央広場を防衛しているローズさんと冒険者さん達が勇者一行と対峙していま……って、何をしているんですか!?」

「リム、丁度良かった! 魔王様を止めるのを手伝ってください!」

「リムウゥゥ! このバカをどうにかしてくれ!」

「二人ともこんな時に遊んでないでください! それよりもコレを!」


リムは俺とハイデルの前に両手で持っていた何かを突き出してきた。


「何だコレ? 水晶玉?」

「これは魔力を流すと遠くに居る人が見ている光景を見ることが出来る魔道具です。ああほら、ローズさん達が……!」


そう言われ水晶玉をマジマジと見てみると、水晶玉の中の霞のようなものに段々と色が付いていく。

そして、水晶玉に酷薄な笑みを浮かべるローズと、その後ろに控える冒険者達が映った。


『フッフッフ……無断で魔王城に乗り込もうなんて、私達も舐められたものねぇ』


そんなどっかの悪役令嬢みたいな雰囲気を漂わせながら、ローズはこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。


「……おい、この映像って勇者視点なのか?」

「はい、勇者の視点にした方がどこに居るのか正確に分かりますし」

「我々が勇者側で見るとは、何だか複雑ですね……」


そんな事を言い合っている間に、ローズはこちらを指さすと。


『さあお行きなさい! 勇者一行を国から追い出すのよ!』


するとローズはが侍らしていた冒険者達は。


『いや無理無理無理! 何言っちゃってんですかローズさん!?』

『この前ローズさんコイツらにやられたばっかじゃないっスか!』

『ってか、何で俺らがローズさんの下部みたいになってるんですか!?』


…………。


『う、うるさいわね! 一度言ってみたかったのよこんな台詞!』


ドヤ顔で出した命令に冒険者達が全力で嫌がり、そんな冒険者達ををローズが睨む。

おい、目の前に勇者居るのに何だこの茶番は……。

水晶玉を見ていた俺は、そう思わずにいられなかった。


『あ、あの、話を聞いて……!』

『そんな事より、先手必勝よ!『パペット』ッ!』

『うわあああああ!? 身体が勝手に!?』

『ババア覚えてやがれえええええええ!』


一瞬、場違いな可愛らしい声が聞こえた気がしたが、それを確認する隙もなく冒険者達が勇者一行がいるであろうこちら側に飛びかかってきた。

ってか、ローズ鬼かよ。

そして、その直後。


『『エア・ブラスト』――ッ!』

『『『うわあああああああああああぁぁ!?』』』

『キャアアアアアアアアアアアアアアアァァ!?』


さっきの声とは違う女の声が聞こえた瞬間、飛びかかった冒険者達、後ろに控えていた冒険者達、そしてローズが吹き荒れた暴風により、固まりとなって遠くへと吹き飛ばされた。

そして、目の前に数十人いた中央広場には、勇者一行と思われる四人の影だけが残った。


「……ヤバい、えっ、何コレヤバい」


その光景を水晶玉越しに見ていた俺は、語彙力を失っていた。

さっきの魔法、昨日リムがドラゴンに最後に放った風魔法だ。

しかし、その威力はリムを遙かに超えていた。


「しょ、初級魔法でこの威力……」


はたと隣を見てみると、リムがそう呟きながら俺の裾を握り震えていた。

しかも今の台詞はチート主人公が魔法を放ったときに近くに居た人がよく言う台詞だ。

よし、逃げよう。

そう思って立ち上がったとき。


「そ、それよりも、ローズたちが飛ばされた方角は……」

「……あっ」


ハイデルの漏らした言葉に、俺は先程の映像を思い出した。

確かアイツらが飛ばされた方向には確かここ、魔王城があったはず。

そして、魔王城の正門前には――!

と、その時。


――ドドドドドドッ!


『な、何だああああああ!? 人が空から振ってきたぞおおおおおおお!?』

『アイツらって中央広場守ってた奴らじゃないか!? グフォッ!?』

『おい、こっちに落ちてくんギャアアアアア!?』


遠くから何かが落ちる音とともに、正門を防衛していた冒険者達の悲鳴が聞こえた。


「…………」


偶然なのか故意なのか。

たった一発の魔法で二つの防衛線が壊滅状態になった。

そして、リムの手の中にある水晶玉から聞こえた声が。


『クッ……勇者一行よ、例えこの場に戦える者が我しかいなくなったとしても、ただでは通さん! 我は魔王軍四天王にして、闇を司り影を操る夜の――って、待ってまだ台詞終わって……! ギャアアアアアアアアア!?』


勇者一行が、魔王城に乗り込んだという事実を知らせた。

登場人物紹介 パ~ト1


月城亮太


地震によって倒れてきた本棚から女の子を守って異世界に転生し、魔界にあるバルファスト魔王国の魔王になった、この物語の主人公。転生の仕方は非常にテンプレなのに、ステータスは器用度と知力以外平均以下と、転生直後から色々と不幸に見舞われている。

一応、《魔神眼》という全ての魔眼の力を使える能力を持っているが、本人の魔力量が足りなく強力な魔眼を発動しようとした瞬間に魔力切れでぶっ倒れる。

基本ビビりで、泣き虫でスケベで口も悪いが、いざという時には度胸がある。

ちなみに、料理や裁縫なども出来、地味に女子力が高い。

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