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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第一章 転生魔王(仮)の異世界奮闘記
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第四話 成り行き魔王は今日もくたくただ!⑤

目の前が真っ暗だ。

何も見えない。ただ、そこには闇が広がっているだけ。

ああ、俺また死んだんだな。

俺は異世界転生してたった一週間で死んだのか。

しかもその死因が仲間のドジによって。

そんなラノベあってたまるかっての。ざけんな。

……俺が死んでから、アイツらは大丈夫だろうか。

正直、あのままでは全員やられる。

しかし、死んでしまった今になっては、何も出来ないし、そもそも生きていたとて結果は同じだ。

あ~あ、今度こそ俺は終わりかぁ。

でもまあいいか。 あの時みたく、人を助けて死ぬなんて格好いいじゃねえか俺。

…………ん? ちょっと待てよ?

俺、何で死んだのに意識あるの?

確かに俺ってドラゴンに押し潰されて……。

アレ? 冷静になってみたら、ちゃんと手足の感覚がある。

ってか、眩しっ!? 何か急に目の前から光が……!


「――ぷはあっ!」


空中に投げ捨てられたような感覚とともに、俺の意識がハッキリとした。

目がくらんでよく見えないが、目の前には太陽が。

そして、後ろを振り返ると、地面が迫っていた。


「ごほっ!」


身体全身に打ち付けられた衝撃。

俺はハアハアと呼吸を荒げながら痛む身体に鞭を打ち起き上がる。


「危機一髪だったな……」


そんな声が後ろから聞こえて振り返ってみると、そこには俺と同じようにハアハア言ってるレオンがいた。


「ええ!? 俺、何で生きて……!」

「貴様がドラゴンに押し潰されそうになった瞬間、我が貴様を影の中に引きずり込んだのだ」

「マジか!?」


だから目の前が真っ暗だったのか。


「ってか、そんな事が出来るんだったらさっきの冒険者もそうしろよ。てっきり影に入れるのは自分だけと思ってた」


そう言うと、レオンは頭をガシガシ掻きながら。


「そんなことはないのだが……あまり人を影の中に入れたくない」

「何で?」

「我以外の物を影に入れるには、我がその対象に触れていなければならない。もしうっかり、我が影の中で手を離したら……」

「離したら……?」

「その対象は地面に押し潰されぺしゃんこになる」

「怖っ!?」


レオンの説明に俺は納得した。

例えば、もし俺を運んでいたときにレオンが手を離したとすると、俺にシャドウの効果が消え、影には入れなくなる。

するとなんということでしょう、俺は地面の中に生き埋め、もしくは押し潰されてしまいます。

更に言えば、もし俺が身体の半分を外に出していたら、まあなんということでしょう、身体が綺麗に真っ二つ。

確かにその理由なら、むやみに人を影の中に入れるのはよくない。


「そういえば、あの冒険者達は?」

「ああ、それなら……」


レオンが指さした方向を見てみると。


「ええ!? 何でアイツらまだ戦ってんの!?」


そこには、先程俺とレオンが助けた冒険者達が、ドラゴンの気を逸らすように走り回っていた。

おかしい、確かにアイツらは完璧に気を失っていたはず。

そう俺が疑問に思っていると、そこから遠くの方でローズと一人の冒険者がいた。

しかもその冒険者はドラゴンにやられたのか白目を剥いている。

そんな冒険者の耳元でローズが何かを囁くと、冒険者は飛び上がり、ドラゴンに向かっていった。


「…………」


ええ……あの冒険者何言われたの? メッチャ怖いんだけど。

すると、隣で俺と同じ光景を見ていたレオンが。


「ローズは精神魔法はズバ抜けていてな。モンスターにはさほど効かないが、気絶した人間程度だったら自由に操れる。《パペット》という魔法でな」

「何それこっわ……!」


俺は遠くで不敵な笑みを浮かべているローズに寒気を覚えた。

だってパペットだぜ? 日本語では傀儡もしくは操り人形!

よく見ると、戦っている冒険者の大半が全員白目を剥いている。

この魔法、可愛らしい響きとは裏腹にとんでもなくえげつないわ。


「気絶した冒険者にまだ戦わせてんのかよ。ひでえ!」

「流石にそこまでゲスではないぞ。あくまで気を引くだけだろう」

「あっ! リョータさんいましたよ!」

「本当ですか!?」


なんて話していると、遠くからハイデルとリムが駆け寄ってきた。


「ハイデル~!」


俺も笑顔で手を振りながらハイデルに駆け寄る。


「リョータ様~! ご無事でした――ゴファ!?」


そして、俺はハイデルの顔面に全力のゲンコツを食らわした。


「バカ野郎、お前のせいで俺は死にかけたんだぞ! しかも俺がそこに居なくてもあの冒険者達がドラゴンの下敷きになってた! お前何なの!? お前の頭に脳みそ存在してんのか!?」

「うう……申し訳ありません……」


俺に殴られたところを押さえながら、ハイデルは頭を押さえて涙目になっている。


「リョータさん、大丈夫ですか? どこか怪我していませんか?」

「一応大丈夫。よし、そんなことよりアイツらの加勢に行くぞ!」


心配してくれたリムに俺はそう答えると、俺はドラゴンを見た。

ドラゴンには疲弊した様子はなく、爪や尻尾を振り回している。

この体力バケモノの底が見えない。

ハイデル達を見ると、ドラゴンとは逆に疲弊している。

ドラゴンとの戦いは、まだまだ終わりそうになかった。

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