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プロローグ
――顔が熱い。
綿のような雪が降り、辺りがシンと静まり返る中、自分の顔が熱を放っている事に気付いた。
ただでさえ外の気温が氷点下で寒いから、自分の顔の熱さを強く感じる。
自分は今どんな表情をしているのだろうか、顔が赤くなっていないだろうか。
そんな、自分らしくない事を気にしてしまう。
心臓がドクンドクンとうるさいくらいに鳴っている。
自分が雪を踏み締める音が、聞こえないくらい大きく。
こんなに心臓がドキドキする事なんて、今まで一度も無かったのに。
……もう、いい加減に認めよう。
顔が熱くなって、心臓がドキドキ鳴り止まない理由なんて、一つしか無い。
まだ実感はないけれど、きっとこの感情の事を差すのだろう。
そう思うと、少しだけ心が軽くなった気がした。
……ああ、やっぱりそうなんだ。
この、温かい気持ちの正体は。
この、涙が零れてしまいそうな理由は。
コレは――恋なんだ。




