第四話 成り行き魔王は今日もくたくただ!④
「『ヘルファイア』! 『ヘルファイア』ッ!」
「『ファイア・ボール』ッ! 『バブルボム』ッ!」
『ゴガアアアアアアアアアア――ッ!』
ドラゴンの左右からハイデルとリムが強力な魔法を連発する。
さほど効いていないが、二人の攻撃に気を取られ、ドラゴンの尻尾ががら空き。
「オラッ!」
「くたばれっ!」
その尻尾に冒険者達が攻撃を浴びせ、微量ながらも着実にダメージを与えていく。
だけど油断は禁物だ。
こういう順調なときに誰かが調子に乗ってフラグになるような事を言わなければいいが。
「何だよ楽勝じゃねえか!」
「何が最強のモンスターだ! お前ら、このまま一気にやっちまおうぜ!」
ほら、こんな風に……。
「ってバカッ! 何死亡フラグ口走ってんだよ!?」
噛ませ犬みたいな台詞を言った冒険者達にそう叫んだその時、ドラゴンが大きく息を吸い込んだ。
またさっきみたいに怒号で周りの奴らを吹き飛ばすのか!?
……いや、違う!
「お前らブレス来るぞ! 気を付けろ!」
『ゴルアアアアアアア!』
俺がそう警告したのと同時に、喉の奥を赤く光らしていたドラゴンが足下に巨大な火弾を放った。
「「「うわああああああああああ!?」」」
「言ってるそばからやられたああああ! ってうおおおおお!?」
冒険者達には火弾は直撃しなかったが、その攻撃の風圧で周りの十数人空高く吹っ飛ぶ。
そしてこちらにも風圧とともにえぐられた岩盤やレンガが吹き飛んでくる。
ドラゴンの足下には巨大なクレータが出来、舞上げられた冒険者の内三、四人がそのクレーターに落ちて集団ヤムチャ状態になっていた。
「ローズ! あの冒険者助けられるか!?」
「窪みがが深すぎて助けられないわ!」
確かに、ローズの言う通りクレーターに落ちた冒険者達を助けようにも思った以上に深すぎる。
「……レオン、俺達であの冒険者助けるぞ!」
「な、何? しかしどうやって助けるというのだ? 奴らが居るのはドラゴンの足下、しかもあの巨大な窪みの中に居るのだぞ?」
「説明してる暇はねえ! お前は俺の影の中に入ってくれ!」
俺がクレーターに向かって駆けだすと、レオンは言われたとおりに慌てて俺の影の中に入った。
幸い、ドラゴンの気はハイデル立ちに向いている。
俺は背中のマントで頭まで持ってくると、ボソッと一言。
「『隠密』」
この隠密スキルは冒険者ギルドで仲良くなったアサシンの人から教えて貰ったスキル。
これは名前の通り、気配を消すことが出来るスキルだ。
普通なら物陰や暗い場所で使うスキルだが、辺りに木陰も身を隠す物も無いため少しでも気配を消そうとマントで身を隠した。
と、そんな間に俺とレオンはドラゴンの気付かれずにクレーターまでたどり着いた。
真上には空覆うドラゴンの巨体が。
怖え、怖えよお……!
だけどビビっている暇は無い。
俺はクレーターを滑り降りていき、そばで気を失っている冒険者を担ごうとすると、俺の影からレオンが飛び出した。
(貴様はバカなのか!? 自ら窪みの中に入っていくなんて!)
(うるせー! コレしか方法がねえんだよ! それよりも、まずコイツら助けるぞ!)
そうドラゴンにバレないように小声で言い合うと、俺はレオンに冒険者を担がせる。
(いいか? お前はシャドウを使ってこの冒険者を地上まで運べ。このドラゴン図体が大きい分ここから遠くまで影が伸びている。俺は散らばっている冒険者をかき集めるから、お前は影を登って遠くまで運んでくれ。多少乱暴になっても良い、頼んだ!)
(なるほど……よし、任せろ!)
するとレオンはドラゴンの影に入ると片手を影から突き出し、冒険者の襟首を掴むともの凄いスピードで運び始めた。
冒険者は顔面から引きずられていて申し訳ないが、緊急事態だ。仕方ない。
俺はクレーターの中で気を失っていた残りの冒険者三人を集めると、次々に運び終わって戻ってきたレオンに渡していく。
(よし、コレで最後だ。後で俺も引っ張り上げてくれ)
(ああ、任せろ)
そして、最後の一人をレオンが運び始めたその時だった。
『ゴルアアアアアアアアアアアアアアアア――!」
「『ヘルファイア』ッ! 『ヘルファイア』ッッ!」
「ちょ、ちょっと!? 確かあの中には冒険者が……!」
「えっ!? 本当ですか!?」
クレーターの外からハイデルとローズのそんなやりとりが聞こえた瞬間、ドラゴンの影が大きくなった。
「は!? ちょ、ストップ! ストオオオオオオオオオオオオップ!!」
よく見えなかったが、ハイデルのヘルファイアを食らったであろうドラゴンが後ろに下がり、真後ろにあるクレーター(俺が居る)に落ちそうになっていた。
「リョ、リョータさん!? 今、窪みの中からリョータさんの声が……っ!」
「何故!? というかいつの間に!? って、それではリョータ様がドラゴンの下敷きに……!」
レオン! レオオオオオオオオオオン!! 早く戻ってきてええええええええええッッ!
そんな願いも届かず、バランスを崩したドラゴンがクレーターに転がり落ちてきた。
「ハイデルお前覚えてろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
そして、そう叫んだ瞬間、俺の視界が真っ暗になった。




