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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第一章 転生魔王(仮)の異世界奮闘記
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第四話 成り行き魔王は今日もくたくただ!③


「「「ギャアアアアアー!」」」


俺を含めたその場の全員が叫んだ。


「ヤベーって敵う訳ねえってあんなの!」

「だ、誰か今すぐ大砲だの爆弾だの持ってこい!」


そんな切羽詰まった冒険者達の叫びが響く中、遂にドラゴンが俺達の前に降り立った。


「ア、アレはブラックドラゴン!? ドラゴンの中で最も凶暴で、普段限られた地域の、それも深い谷底などに住んでいるはずなのにどうしてこんな所に!?」

「でたよでましたよ異世界あるある! 普段その地域に生息していないヤバいモンスターが主人公がいる時に限って現れるシステム! それはハーレムチート主人公の場合であって、俺は御門違いだぞゴラァ!!」

「何を意味の分からない事を言ってキレてるんですかぁ!」


リムの説明を聞いて、思わずガチギレする俺をドラゴンが一瞥する。


「ヒッ……!」


その視線だけで、俺は蛇に睨まれた蛙のように身動きが出来なくなる。

ど、どうすれば良いんだよコレ……!?

俺、この世界に来てろくに戦ったことないし……!

しかも俺一人でゴブリン一匹がやっとだし!

逃げたい……だけど……怖く手足が動かない……!

必死に何か逃げる方法はないかと頭を巡らしていると、ドラゴンがゆっくりと手を振り上げる。

恐らく俺をその爪で切り裂くつもりなのだろう。

ヤバイヤバイヤバイ死ぬ死ぬ死ぬ!

と、その時。


「『ライトニング・ボルト』ッ!」


聞き慣れた声とともに、眩い電撃がドラゴンの顔面に直撃した。


『ゴルルルルル……ッ!』


それに怯んだドラゴンは攻撃を止め一歩下がる。

見ると、魔法を放った後なのかドラゴンに向けて電撃を帯びた手をかざしているリムが。


「皆さん、ずっとそこに立ってないでください! 行きますよ!」

「そうだな、俺達もリムちゃんに負けてらんねえ! 行くぞ!」

「「「オオオオオオオオオオオオッッ!」」」

「ちょっ……!」


隣でドラゴンに魔法を放ったリムがそう叫ぶと、冒険者達も我に返り雄叫びを上げてドラゴンに捨て身で走って行く。


「これでも食らえやッ!」

「オラッ!」


先に前に出た二人の冒険者が掛け声とともに剣をドラゴンの横腹に突き刺す。

しかし。


「っ!? クッソ、剣が刺さらねえ!」

「なんて硬さだッ!」


金属と金属がぶつかるような音とともに、二人の冒険者はドラゴンの硬い鱗に弾き返された。

そしてドラゴンは目に見えるほど大きく息を吸い込むと。


『ゴガアアアアアアアアアアアアアアア――!』


鼓膜が破けんばかりの怒号とともに翼を大きく羽ばたかせた。

たった翼で扇いだだけなのに、二人の冒険者は風圧で勢いよく吹っ飛び、外壁にぶつかり気を失った。


「畜生、タダの剣じゃ攻撃にもならねえぞ!」

「ど、どうするんだ!?」


一瞬で屈強な男二人を気絶させたドラゴンに、冒険者達は怯む。


「…………腹がダメなら他の箇所を攻撃だ!」


そんな冒険者達に、俺は思わず声を上げる。


「尻尾でも翼でも何でも良い! どこか硬くない部位があるはずだ! きっと! 多分! 恐らく!」

「リョータさん! もっと自身持って言ってくださいよ!」

「おっしゃあ! リョータが言うんだったらきっとそうだ! いくぞおおおおおお!」

「えっ、いや、今のだだのモン●ン知識だから変に期待しないでくれえええ!」


そんな俺の声も届かず、冒険者達はドラゴンを囲い始める。

すると他の冒険者達と同じように俺の後ろからレオンが飛び出した。


「いや待て待て待て! お前が行っても戦力外なだけだ!」

「なっ!? そういう貴様もそこに突っ立っているだけだろう!」

「しょうがないじゃんステータス低いんだから! あとお前よりは強いわ!」

「何だと!?」

「二人とも状況を考えてくださいよ!」


言い争いをしている俺とレオンをリムが止めに入った直後。


『グゴオオオオオオ――!』

「おい、リョータの言った通り尻尾に攻撃が入るぞ!」


痛そうな呻き声を上げるドラゴンとともに、とある冒険者がそう叫んだ。


「凄いじゃない! リョータちゃんの言った通りだわ!」

「マジか!?」


さっきの指示怯んでる冒険者を何とかしようと適当に出したんだよなぁ……。

だけど尻尾にダメージが入るならば。


「剣を持ってる奴らは重点的に尻尾を狙え! ダメージも入るし尻尾を切断できたらむち打ち攻撃のリーチも無くなるはずだ! 残りの奴らはドラゴンの気を逸らしてくれ!」

「「「うおおおおおおおおおおお!」」」


またもやモン●ン知識による指示を出すと、冒険者達は俺の言ったとおりに動いてくれる。

何だろう、自分は突っ立って偉そうに叫んでるだけで、凄く申し訳ない気持ちになってきた。


「凄いですよ魔王様! 貴方の指示で冒険者達の士気が上がりました! やはり貴方には魔王の素質が!」

「お前なにげに俺の事魔王様って言ったろ!?」


だけど、今はそんなことはどうでもいい。

確かにハイデルの言うとおり先程まで逃げ腰だった冒険者達の士気が上がっている。

このまま行けば被害も少なくドラゴンを倒せるかもしれない。


「それじゃあハイデルとリムはドラゴンの気を引いてくれ! ローズは負傷した冒険者を後ろに下げてくれ!」

「御意!」

「分かりました!」

「任せてちょうだい!」

「よし、それじゃあ頼んだ!」


そう言うと、ハイデル、リム、ローズはドラゴンへと向かっていった。


「……なあリョータ、我は?」

「レオンは俺とここに居ろ」

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