第四話 成り行き魔王は今日もくたくただ!②
この街の正門前に招集された俺は、ただ、遠くの空を見つめていた。
「い、一体何が起きたんでしょうか? 特に周りにはモンスターはいませんが……」
そんな俺の耳に、ハイデルの呟きが聞こえた。
俺達は放送でここに武装して集まれとしか言われてなく、おまけに目の前の平原にもはンスターの影も無い。
「やっぱり誤報だったんじゃないか?」
「で、でも警報音がなっただろ。 そうすぐに帰るわけには……」
「いやでも……」
自分たちが招集された理由が分からない冒険者達がざわつき、中にはいったん帰ろうとしている奴もいた。
「いやいやいや……コレは無いって……!」
そんな中、俺は今までかいたこともないほど汗を掻き、震える声でそう呟いていた。
ああもうクソッタレ、何なんだよコレ!?
こんなイベントいらないって!
「……? リョータさん?」
俺の異変に気付き、リムが俺に声を掛けると、周りも静かになった。
「リョータ? 汗でびっしょりだぞ? 何がどうした?」
「リョータちゃん? 向こうに何があるの?」
俺の両脇に居たローズとレオンが俺が見据えている虚空を目をこらして見ている。
恐らく、アレは俺にしか見えていないのだろう。
なぜ俺にしか見えていないのかというのは今はどうでもいい。
問題は、俺が見据える向こうの空から、俺達が招集された理由が向かってきている事だ。
「お、お前ら! 今すぐ武器を構えろ!」
「え? き、急にどうされたのですか?」
急に戦闘態勢になれと命令した俺に、ハイデルがオロオロしていると。
「ん? 何か向こうの空に何かいないか?」
「あっ、確かに。何だあの黒いの?」
どこかから聞こえた冒険者の声に、全員一斉に遠くの空を見た。
もう周りの奴らが肉眼で見えるほど近づいて来てんのかよ!
「リョータ様、アレは一体何なんでしょう?」
「アイツはやべえって! 多分この世界で一番敵に回したらダメな奴だって!」
「えっ?」
「アイツは――」
『ゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!』
俺がソイツの正体を叫んだその瞬間、天地を揺るがすほどの大音声が響き渡った。
その音だけで、凄まじい風圧が俺達に襲いかかり、囲いのレンガを何個か吹っ飛ばした。
そしてソイツの名前を聞いた俺周りの奴らは、真っ青な顔をしてゆっくりと振り返る。
この世界おろか、俺の世界でも知らない者などいない超メジャーモンスター。
しかし、異世界ラノベにおいて、普通の人間では絶対に敵わないヤバい奴。
俺達の目の前には、闇を切り取ったような漆黒の鱗、どんなに硬いモノでも豆腐のように切ってしまいそうな鋭い爪と牙に、額には禍々しい雰囲気を出している螺旋状の巨大な角。
そして、その巨大な体躯に空を覆うほどの翼を羽ばたかせているソイツが――。
――ドラゴンが、俺達に向かってきていた。




