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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第一章 転生魔王(仮)の異世界奮闘記
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第三話 魔王の娘は今日も憂鬱だ!①

――異世界生活六日目。

俺は魔王の間の玉座に座り、四天王が俺の前に立っていた。


「明日で一週間が経ちます。リョータ様は魔王になるか御決断なさいましたか?」


ハイデルのその言葉に、もう六日経ったのかと驚いた。

一日目はこの世界に転生し、デーモンアイに追いかけられたり黒雷食らったりハイデルに拉致られたりしていた。

二日目は、ギルドで自分のステータスを測ったところ、知力と器用度以外そこらの中堅冒険者よりも低いステータスだった。

三日目は初めてのクエストでゴブリンに殺されかけ、ハイデル、ローズ、レオンがまったく使えないことが判明。

四日目はホームシックに陥り部屋に引きこもり。

そして五日目は……まあ、皆と飯食えて良かった。

……でも振り返ってみるとひでえなこりゃ。

マシなのが一つしかねえ。


「それなんだけどなぁ……正直なところまだ決まってない」


俺はハイデルの質問に俺は曖昧に答えた。


「期限は明日なのだ。明日までゆっくり考えるといい」


レオンの言葉に、俺は苦笑いを浮かべた。

ぶっちゃけ、本音は魔王にはなりたくない。

その理由を挙げるとしたら、まずやっぱり勇者が怖い。

だって先代を瞬殺したんだぜ? そんな奴とステータスが低い俺とでは雲泥の差がある。

次に、魔王になると言うことはコイツらが俺の配下になるわけだ。

リムは別として、残り三人が配下にでもなったらもっと凄いトラブルに巻き込まれかねない。

そして最後はリーンの事だ。

アイツは俺が魔王になることを反対してるっぽい。

それに、なぜ俺を嫌うかが分からないままだ。

そんな状態で俺が魔王になったら色々面倒だと思う。

なぜリーンが俺のことを嫌うのか、それについて昨日の夜考えた。

アレでもないコレでもないと考え尽くした結果、一つの可能性が浮かんだ。

それは――。


――バアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!


「あっ! またこんな所に居たのね!」


タイミングゥ……。

顔をしかめる俺を他所に、リーンは最初にあったときと同じよう扉を蹴破ると俺達に近づいてきた。


「あら、リーンちゃんじゃない」

「おはよ」


リーンは四人に軽く挨拶すると、いつもと同じようにジッと俺を睨みつけてくる。

ここまで毎日睨みつけられれば少しは慣れてくる。

なので、こちらもジッとリーンを睨みつける。

コレが漫画なら、俺とリーンの間にはバチバチと電気がぶつかっていたはずだ。


「そ、それよりも、どうしたんですか?」


たっぷりお互い睨み合った後、その光景をオドオドしながら見ていたリムがリーンに問うと、リーンは思い出したように。


「ああそうだった。私今から帰るんだけど……アンタ達、今暇?」

「まあ、暇ではあるが……それがどうしたのだ?」

「だから、その……」


何やら言い淀んでいるリーンの顔を見て、ローズがポンと手を叩いた。


「ああ、暇なら一緒に出掛けましょ、ってお誘いね!」

「べ、別に、お出掛けって程じゃないわよ! ただ、アンタ達も最近父さんが残した仕事とこの男のせいで忙しかっただろうし、たまには息抜きしましょって事で……」


ローズが納得したように言うと、リーンは顔を赤くしそう言いながらそっぽを向いた。

俺のせいで忙しいって……否定は出来ないけど。

それより何だよ、この超古典的なツンデレの反応。

何? マジでコイツツンデレだったの?

だったら、俺に冷たくしてらのも、もしかしたらツンデレだったからじゃ……!


「何ニヤニヤしてんのよアンタ。殺すわよ」


うん、コイツ俺に対してはツンしかないわ。

いや、ツンってレベルじゃないなこの今にも殺しそうな視線。

俺がリーンの視線に思わずビビっていると、しばらく悩んでいたハイデルが。


「分かりました。それでは、我々も一緒に行きましょう」

「うん、ありがとう」

「リーンちゃん、まずはあの子達の様子見に行くんでしょう? それが終わったら、一緒に買い物に行かない?」

「いいわね!」


あの子達? あの子達って何だろう?

なんて一人思っている中でも、五人の会話は弾んでいく。


「私達、そういう理由であまり街に出ていませんでしたね」

「先代が倒されてから色々と後始末があったからな。久々に武器屋に寄ってみるか」

「あの、私も買いたい物があるんですが……」

「リムちゃんも? じゃあ女子三人でお買い物ね」


………………………………………………………………。


「それでは各自、持ち物を持って正門前に集合と言う事で」

「分かった、じゃあ先に待ってるわね」

「お小遣い、まだあったかな?」

「リムちゃんがお金を気にするなんて珍しいわね」

「実は、最近読みたかった本の新巻が――」


楽しそうにお喋りしながら、五人は魔王の間から出て行った。

あまりにスムーズに、あまりに自然に。

まるで、最初からあの五人しかこの場に居なかったように。

……………………………………………………………………………………………………………………。


「……俺……忘れられてね?」


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