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魔界は今日も青空だ!  作者: 陶山松風
第三章 リトルウィッチ・ノクターン
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第十二話 捕らわれ少女は今日も幸せだ!⑪


全身に感じる軽い振動に、私は目を覚ました。

アレ……私、いつの間に寝ちゃったんだろう……?


「うぅん……」


未だボンヤリとした意識の中で目を擦っていると、私のすぐ近くで声が聞こえた。


「おっ、起きたか?」

「リョータ……さん……?」


顔を上げてみると、すぐそばにリョータさんの横顔があった。

私……リョータさんにおんぶされてる……?


「リム、あの後泣き疲れて寝ちゃったんだぜ?」

「うぅ……恥ずかしいです……」

「しゃーねえよ」


私があまりの恥ずかしさにリョータさんの背中に顔を埋めると、リョータさんは軽く笑いながらそう返す。


「あの……ここは?」

「バルファスト。んで、今は魔王城に帰る最中」

「他の皆さんはどこに……」

「アイツらはギルドに残って色々後始末して貰ってる。あっ、そうだ」


するとリョータさんは、何か思い出したように言った。


「実はリムを助ける時、お前の母ちゃんが居たんだって」

「やっぱり……」

「えっ? 知ってたの?」

「アダマス教徒の人が言ってました。外で戦っていた時、銀髪の魔法使いが現れたって」

「そうだったのか。リムの母ちゃん、お前を助けるって話を聞いてコッソリ俺らの後付けてたんだと。まあ、そのおかげでハイデル達が助かったし、よかったよかった。やっぱり強かったんだな、あの人」

「やっぱり? リョータさんこそ知ってたんですか? ママが元バルファスト魔王国一の魔法使いだって言われてたこと」


私がそう訊くと、リョータさんは思わずと言ったように振り向いた。


「マ、マジ? そんな凄い人だったの……? ああいうおっとりした性格の人は、実は強いって想像はしてたんだけど……」

「何ですか、その考え……」

「まあ、考えてみればお前の母ちゃんだもんな」


リョータさんが納得したように頷いている中、私は頬を緩めた。

そっか……ママ、私のこと助けてくれたんだ。

ううん、ママだけじゃない。

リーンさんもハイデルさんもローズさんもレオンさんも冒険者さん達も。

そして、リョータさんも。

私の事、助けてくれたんだ。


「リョータさん」

「ん?」

「私、こんなにいい人達に囲まれて、幸せです!」

「……そっか」


私が今思っている本当の気持ちを伝えると、リョータさんは嬉しそうに返事をしてくれた。


「さてと、魔王城までもうちょっとだぜ」

「ごめんなさい、わざわざおぶってくれて」

「さっき言ったろ、謝るんじゃなくって……」

「ありがとうございます、リョータさん」

「……おう」


それから、私はもう一度リョータさんの背中に頭を預けた。

リョータさんの背中は湖の水で若干濡れているけど、それでも温かい。

その温かさは、私の心を安らげてくれるような気がした。

そして、私はゆっくり瞼を閉じる。

すると、リョータさんのある言葉が脳裏に聞こえた。

それは私の家にリョータさんが来たときの言葉。


『リム、ちょっと俺の事お兄ちゃんって呼んでみてくれ』


……あの時、リョータさんは私をからかっていたのだろう。

でも、それでも。

あなただけなんです。

生まれて初めて出来た、たった一人の――。


「お兄ちゃん」


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