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夜中の死神さん 後編

「えっと、デラックスストロベリーパフェとツナトースト。後、ドリンクバー2つお願いします」


「かしこまりました~」


駅前の24時間営業しているファミレスへとやって来た俺達。死神さんの服装がちょっと気になるが、店員は余り気にしないみたい


「こんな時間に商売とはな。闇を恐れぬ不届き者どもめ」


そうは言うが、死神さんは何となくソワソワしている


「此処のパフェは中々美味しいらしいよ」


「ふん。ぱへには少々うるさいぞ、私は」


「そ、そう……。あ、飲み物取ってくるけどコーヒー系か炭酸系どっちが良い? オレンジジュースもあるけど」


「む? むう……」


死神さんは何やら考え込んでしまった


「どうしたの?」


「こ、こうひい」


「分かった。砂糖とミルクは入れる?」


「……いらん」


「アイス? ホット?」


「……あいすなのか?」


「うん?」


「あいすでいい」


「分かった」


俺はオレンジジュースにしよう


ドリンクバーへ行き、俺と死神さんの分を作る。そして席へと戻った


「お待たせ」


「うむ!」


何故か死神さんは嬉しそうに出迎えてくれた。何だか俺も嬉しくなるぜ


「はい、アイスコーヒー」


「…………?」


死神さんはコップを両手で持ち、不思議そうに眺めている


「これがあいすか?」


「え? そうだけど……」


コーヒーの豆が悪いって意味なのだろうか? ブラックで飲むぐらいだから、コーヒーにうるさそうだし


「む~」


どうも納得出来ないみたいだが、それでも死神さんはコーヒーを一口飲んだ


「……!? に、苦い! 苦いぞ!!」


「し、死神さん?」


「お前、意地悪だな! 死神騙して楽しいか!?」


「え!? 騙してなんか無いって! そもそも何の事だか……」


「あいすじゃ無いじゃないか!」


「え? ……ええ!?」


ま、まさかアイスクリームと勘違いを?


「し、死神さん。コーヒーのアイスって言うのは冷たいって事で……」


「なら冷たいって言えば良いのだ!」


よっぽど苦かったのか、死神さんの目にジワリと涙が浮かぶ


「し、死神さん、オレンジジュースを飲んで! 甘いから」


「………………」


うわ、疑惑の目


「だ、大丈夫だから」


「……嘘だったら暫く口を利かんからな」


死神さんは、恐る恐るオレンジジュースに口をつけた


「…………ふむ」


ちょびっと飲み、こくっと頷く死神さん


「…………大丈夫?」


「悪くは無い。酸味が心地好いぞ」


「そっか」


良かった


「死神さんはオレンジジュースやコーヒーを飲んだ事ないんだね」


「うむ。死界には何も食べ物が無いからな」


「し、死界……ですか」


「つまらん所だぞ。死ぬ迄は行かない方が良い」


「う、うん。出来れば行きたく無い……」


サラリと恐ろしい事を言う人だ


「お待たせしました、デラックスパフェとツナトーストです」


「どうも」


注文と伝票を置いてウェイターさんは厨房の方へ戻っていく


テーブルの上には熱々のツナトーストと、死神さんの顔が隠れる程巨大なパフェ。凄い迫力だ


「……いくら何でも大き過ぎはしないか?」


戸惑う死神さん


「何人かで分けて食べるパフェだからね」


だからスプーンも2本ある


「何故こんな物を……。ああ、なるほど」


何かを納得したらしい死神さん


「人間と付き合うと言うのも中々面倒だな」


死神さんはスプーンでパフェをすくい、俺の口元に持って来る


「な、なに?」


「口を開けろ馬鹿者。一緒に食べるのだろう? あ~ん、だったか?」


「……死神さんって知識偏ってるよね」


何処で覚えたんだろ?


「む」


口を開けない俺に面倒くさくなったのか、死神さんはスプーンを引っ込めて一人で食べ始めた


「……ぬう」


「どう?」


「中々だ。先日食べた物と甲乙つけがたい」


「そっか」


「うむ」


「……ツナトースト食べてみる?」


考えてみたら死神さんはパフェしか食べて無い


「む。少しばかり興味はあるが……」


死神さんは言い淀み、上目遣いで俺を見つめながら


「少々意地汚い気もする」


と、言った


「そんな事無いよ」


むしろ、なんか可愛い


「……では半分貰う」


死神さんはトーストを手に取って、一口


「………………ふむ」


不思議そうな顔をしながら首を傾げる


「イマイチ?」


「うまいぞ。ぱへ程では無いが」


死神さんは、もう一口だけ食べて俺にトーストを返した


「もういい。後はお前が食え」


「………………」


「どうした?」


「いや、なんでも」


何だろう、この主とペットみたいな雰囲気は……


若干ヘコみながら、俺もトーストを食べようと口を近付けて……


「…………あっ!」


間接キスじゃないか!! なんてエロチックな……


「む? どうした?」


「な、なんでも!」


死神さんは気にしてないみたい。やっぱり外国? 育ちの人は違うな


照れつつもツナトーストを食べ終え、何だかんだと話していたら夜中の1時を過ぎてしまう


「……ふぁ~」


欠伸が出る


「ん? 眠いのか?」


「少しね」


今日も学校はあるんだよな……


「ではそろそろ帰るか」


「そうだね」


死神さんは結局一人でパフェを食べたけど、腹は大丈夫なのか?


金を払ってファミレスを出ると、風は強くなっていた


「南風か。今日は雨が降りそうだな」


空を見上げる死神さん


「そうなんだ」


「うむ。…………」


死神さんは急に黙ってしまう


「どうしたの?」


「む……ご、ごち」


「ごち?」


「ごちそうさま!」


「う、うん。ごちそうさまでした」


以外と律儀な人だな


「ぬう~」


「?」


「生まれて初めてだぞ! 感謝しろ!!」


「あ、ありがとう?」


さっぱり意味が分からないけど、どうやら機嫌は悪くないみたい


「帰りにコンビニ寄ろっか」


「こ、こんびに? 怪しげなる響き……」


知らないのかな?


「えっと、コンビニってのはスーパーの小型版みたいな場所で……」


「うむう……うむむ~」


「ま、とりあえず行ってみよう」


「うむ!」


今日は徹夜で学校かな、こりゃ


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