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死神さん二日目 後編

「……そ、宗介? ちょっと話があるんだ」


時が再び動き出した瞬間に、美麻は俺を部屋へ連行する


「そ、そろそろ学校に行かないと遅刻するよ」


「話が先! ……わっ!? な、何?」


「え? うわ!?」


部屋には未だ死神さんの大鎌が突き刺さっていた


「む。片付けるのを忘れていたぞ」


すっぽんぽんで、部屋の中に入ろうとする死神さん!


「タオル!!」


「……めんどくさいな」


死神さんは渋々と引っ込んで行く。少しぐらい恥じらいを持って欲しいぜ


「な、何、これ?」


「む?」


驚愕している美麻の横をタオルを巻いた死神さんが訝しげに見ながら通り過ぎ、鎌を引き抜く。すると死神さんの姿が消えた!


「……………」


フリーズした美麻から離れ、死神さんの横へ


「………死神さん、そのまま姿を消してて」


「む?」


「後でパフェあげるから」


「…………むう」


納得してくれたらしい


「………………」


美麻は、まだフリーズしたまま


「ど、どうした美麻?」


「……っ! い、今、人が消えて!?」


「ひ、人? 何処に?」


「何処にって! え?」


部屋には俺と美麻以外は居ない。いや、鎌を担いでしゃがんでる死神さんは居るんだけどさ


「だ、だって居たよ!? 誰か居たもん! 絶対見たもん!」


「つ、疲れてるんだよ。さ、学校に行こう!」


強引に美麻をアパートから追い出し、ドアの鍵を閉める


そしてダッシュで部屋へと戻り、死神さんの所へ


「も、もう良いよ、死神さん!」


「うむ」


頷き、鎌を消す死神さん


「俺、学校行って来るから後は好きにして」


「うむ」


「あ、でも外へ出るなら鍵を閉めてね。閉め方、分かる?」


合い鍵を渡しつつ尋ねる

と、死神さんは呆れた顔をした


「お前、私を馬鹿にし過ぎだぞ?」


「ご、ごめん……。死神さんの服はまだ洗濯機なんだけど、俺の服着ていいから」


部屋の隅に置いてあるタンスを指差す


「……裸で外を歩いたらいけないよ?」


「…………」


一抹の不安は残るが、考えていても仕方がない


俺は死神さんに2千円と携帯電話の番号を書かいたメモを渡し、鞄を持つ


「何かあったら連絡してくれ。あ、後、物を買ったら金を払うんだよ」


「お前……」


怒り顔の死神さん。その顔を信用し、俺はアパートを出る事にした



「お、お待たせ」


「………………」


アパートの前で待っていた美麻に声を掛ける。美麻は、まだぼーっとしていて動かない


「行くよ、美麻!」


「え? ……う、うん」


美麻の肩をポンと叩いて学校へと向かう


「……………」


「て、テストもうすぐだけど、勉強してる?」


「え? あ、う、うん」


「そ、そうか」


「うん……」


「………………」


「………………」


き、気まずい!


「美麻は昨日、何食べ」


「やっぱり変だよ! ちゃんと見たもん!!」


「み、美麻?」


突然声を荒げた美麻に、俺達と同じく登校途中の生徒達が何事だと振り返る


「宗介!」


美麻は前へ回り込み、足を止めて俺の顔をジッと見上げた


「は、はい」


「美麻に嘘ついちゃダメなんだから!」


「は、はい……」


ああ、美麻がこうなってしまったらもう駄目だ。諦めよう


「実はかくかくしかじかで」


「ええ! 一子相伝の技を受け継ぐ伝説の忍び!?」


ごまかすのは諦めたけど流石に本当の事なんて言えやしない


「そ、そう。彼女、さっき消えただろ? あれは秘密の技で、それ故に追われていた所を俺の通信空手で……」


何だかもう、めちゃくちゃだ。自分で言ってて訳が分からない


「そ、そんなぁ……危ないよ宗介」


それでも俺の言葉を疑わない美麻。美麻は泣きそうな顔で俺を心配してくれている。……凄い罪悪感


「でも彼女は行く場所が無いし……」


「で、でも……あ、警察に言えば!」


「け、警察もキャリアが悪の組織の仲間で……警視総監とか?」


「………………本当?」


三度目の疑いの眼差し


もう、これ以上嘘はつけない……


「…………」


「美麻の目を見て!」


「は、はい!」


「………………」


「………………」


逸らしたい気持ちを抑え、ジッと見つめ合う


「……宗介の言う事だから信じる」


先に視線を逸らしたのは美麻の方。悲しそうな顔だ


「……ごめんよ」


「…………お母さんには秘密にしておくけど……それだけだから」


「うん……」


「…………」


俺達は押し黙ったまま学校へと向かう


「…………」


「…………」


な、何か会話を……


「男の子なのかな?」


「でも男だったら綺麗過ぎない?」


「ん?」


何だか後ろがザワザワしている


「何だろう?」


振り返ってみると、数メートル先には中学生が歩いていて、みんなはその子を見てるみたい


「……………え"!?」


し、死神さん!?


まさかとは思ったけど、あれは間違いなく死神さん! 死神さんは何故か中学の制服を着て、トコトコ歩いていた


「……宗介?」


振り返ろうとする美麻の首を両手で挟んで固定


「あう!? な、なに?」


考えろ、考えろ! ナイスなごまかし方を、対策を!!


「が……」


「が?」


「学校へ急ごう!」


「へ?」


「ほら、早くいくぞ!」


美麻の手を引っ張り、早歩き


「わわ!?」


「学校、学校!」


今、美麻と死神さんを遭わせてしまうとマズイ気がするよ!


「そ、宗介?」


「学校行くぞー!」


「も~」


苦笑いしながらも美麻は俺に合わせて早歩きをする


「学校、学校!」


とにかく死神さんから離れなきゃ!


「む? あれは……」


き、気付かれた!?


体は前を向けたままで、首だけ後ろに回す。そして口パクだ!


(死神さん、なにをやってるの!)


(む)


(帰って、帰って!)


(むむ)


何故か死神さんも早歩きになった! しかもめちゃ早くて、グングン距離を縮めてくる!!


(な、何で追って来るの死神さん!? )


「逃げる者は追わねばならぬ。学校で習うだろうに」


「習ってないよ!」


「誰と話してるの? …………あっ!」


「む、何だ?」


振り返った美麻と、仏頂面の死神さん。二人の間に緊迫した雰囲気が訪れる


「け、今朝の……」


「む?」


「……あ、あれ? その制服、中学の……お、女の子じゃ?」


「私は女では無いぞ」


「ええ!? そ、そうなの?」


「うむ。そいつも勘違いしていたが、お前らが言う性別は私に」


「そうなんだ! この子伊藤君って言って、近所の通信忍者仲間で!!」


何とかごまかさないと、美麻から大家である叔母さんの耳に、そして叔母さんから俺の両親へと話が伝わってしまうかも知れない


そしたら実家に呼び戻されると言う、最悪の事態になりかねないのだ!


「い、伊藤君の親が海外に出張が決まって、伊藤君だけこっちに残る事になって、だけど親御さんが心配して、なら俺が預かって……」


「私は伊藤では無いぞ」


「ち、ちょっと!」


少しぐらい話を合わせてくれても良いのに!


「…………そっかぁ」


「え?」


「男の子なんだ」


何故か美麻はニコニコしている


「よく分からないけど、何か事情があるんだよね。それって危ない事じゃないんだよね?」


危ない事……か


もしかしたら本当に魂を取られてしまうのかもしれない。でも、美麻やみんなに迷惑かけたく無いし……


それに……不思議とあんまり不安も無いんだ


だから――


「大丈夫だよ、美麻」


「そっか! なら美麻は宗介を信じるね!」


「……ありがとう」


「むう……良く分からんが話が無いなら私は行くぞ」


会話に飽きたのか、死神さんは再び歩き出す


「ど、何処に行くの?」


「知らん。今、探索しているのだ」


「その格好だと補導されるかも……」


「体に合う物がこれしか無かったのだから仕方あるまい。それに私は死」


「わー!! それじゃ俺達は学校に行きます。何かあったら連絡を下さいね!」


やっぱり不安は尽きないけど、死神さんを信用しよう


「うむ。ではな」


去っていく死神さん


「……不思議な子だね、彼」


「まぁ、ね」


そして鳴るチャイム


「……遅刻だ」


なんか朝から、凄く疲れた……


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