シンデレラ(ペローバージョン)
現在手元にシンデレラの本が一冊もありません。
買う程でもないので図書館で探そうとしましたが、全くそんな余裕が取れなかったので、記憶を頼りに曖昧なまま進めて行きます。
先が思いやられますね!
ペロー氏のシンデレラと言えば、真っ先に思い浮かぶのがガラスの靴。
皆様一度は考えた事があるはず。
他にもサイズの合う女、いたんじゃね?
しかしそうでは無いと私は訴えたいのです。
あれはオーダーメイドでした。履き心地の悪さをカバーする為にも、その靴の中は、足型を取った様になっていたと思うのです。でなければ、中が滑ってダンスなど出来ません。
足の指の一本一本が爪に至るまでクッキリと浮かび上がり、土踏まずのアーチも寸分の狂いも無かった事でしょう。
地獄ですね。
ドレスで隠しているのですから、足を見せる事を良しとしなかった時代の話だと思われますが、そこに自分の足が再現されているのです。靴下も用をなさなかったのでは。
ガラスも無色では無くとも、外から見てピッタリなのが分かるのであれば、透明だったと考えられます。
王子が手にした時、そこには温もりとニオイと少し湿ったリアルな足型が残されていた事でしょう。百年の恋も八十年分は冷めそうです。
それでも相手を探そうとするのですから、王子は足にフェティシズムを感じる人物であった可能性があり、シンデレラは足さえも美人であったと言えるでしょう。
ーー言えるかな??
そんなピッタリした靴をどうやって履いて、どうやったらスッポリ脱ぎ落とすことが出来たのか。
あ、履くときは問題ないですね。魔法で変えればいいのですから。
あれ? では脱ぐ時も問題ありませんね。あれは脱げるように魔法がかかっていた、で解決です。
フィットしていた上に、恐らく浮腫んでいたであろう足から脱げたのも、12時を過ぎたのにも拘らずガラスの靴はそのままだったのも、ワンダフルな魔法の仕業です。もしかしたら消臭機能も付いていたのかも知れませんね。
しかし陰謀の臭いが消せていません。プンプンします。
本当に王子様は優良物件だったのでしょうか。
国の中枢は、魔法使いの所在を把握していないのでしょうか。
そしてシンデレラは真実、妃に相応しい人物だったと言えるのでしょうか。
突然現れた魔法使いはどう考えても不審者です。通報もせず、カボチャ持ってこいと言われて素直に用意する。
正しい対応かもしれません。怪しい人物を相手に下手に逆らったらなにをされるか分かりませんからね。
ですが日頃肉体労働に従事していた彼女は、若さもある分、体力的には勝っていたはずです。
それでも抵抗を試みることなく、魔法の素材を揃える際も逃げようとせず、唯々諾々と従う。
その主体性のなさこそ彼女が王子の相手に選ばれた理由だと思うのです。
ちょっと喋ってダンスを踊っただけの美人さんを妃にしようとする王子。しかも捜索の為に提供出来たのは靴のみ。
結婚を考える相手の情報を得ることも出来ない、考え無しで無能な王子の判断を良しとする国。
初対面の不審者のいう事をホイホイきく女。
政治を考えない王子と疑う事を知らぬシンデレラの役割といえばこれ。
雛壇です。上層部は夫婦セットで雛壇に飾る気ですね。
素晴らしい。どうせ飾るなら綺麗な方が楽しいです。大歓迎。
タイミング良く靴を落とし、見目麗しい素敵な飾りを作ろうとする魔法使いの正体が、他国の間者だった可能性もあります。
この国を内部から切り崩す為に、自分の影響下にあるシンデレラをあてがうのです。
どちらにせよ元々の候補者もいたはずですが、その女性を差し置いても損失に繋がらなかったからこそ婚姻が認められたのではないでしょうか。
ボンヤリした王子に利発な妃を置けば、いいように操られてしまうかもしれませんからね。
同じく流されやすいシンデレラが丁度良かったのでしょう。
でなければとんだ独裁国家……かもしれませんね。
シンデレラも「こいつは逆らえねえ」と従っただけな気がしてきました。
そもそも王族から結婚相手に選ばれて拒否権があるとも思えません。彼女も貴族なので、政略結婚になんの疑問も持たなかったというのが一番ありそうです。
思い返してみればシンデレラは、王子が好きだとは一言も言っておりません。
恋愛結婚じゃなかったんですねえ。
そう言えば私が『シンデレラ』で連想するのは『玉の輿』でした。ちゃんと心では理解していたんですねきっと。
そしてなんとここに来て絵本を手にする機会を得てしまいました。
私の日頃の行いの良さが表れております。
勿論借りて参りました。
宇野亜喜良さんの味のある挿絵はちょっと怖いです。全然気にならないという幼子は、余程豪胆で天下も取れる逸材かもしれません。天野喜孝系統のイラストでした。
天野氏のイラストはキャラクターの想像を邪魔をしないので、きっとこの方もそうなのでしょう。でも子供が対象にしては……何で顔に影つけちゃったかな。
まあ私は子供じゃないので問題無しです。早速読んでみました。
先ず気になったのは、ボロボロのシンデレラが姉二人より百倍もキレイらしいことです。姉、可哀想過ぎませんか。
二人の連れ子を持つ継母は後妻に収まるくらいなので、そこそこ美人だったのでしょう。ということは、もう一人の遺伝子を提供した父親の方が相当な…………。
舞踏会も三日間くらい開催されてました。(これを書き終えないうちに本を返してしまったので、再び曖昧になりました)
靴も魔法ではなく、別に用意されていたようです。魔法が解けても消えない理由は分かりましたが、今度は着脱に疑問が生じます。
ここでは『油で滑る魔法が掛かっていた』ということにしておきます。掘り下げると文字数が増える一方だからです。
王子は汗と温もりとヌルヌルする油が残る靴を愛でる変態である——この結論で良し!! ええ、良いのです!
そして「魔法使い」ではなく「仙女」でした。でも使うのは仙術ではなく魔法です。原文が気になりますが、面倒なので調べません。
仙女はシンデレラの教母(名付け親)で、これまでも彼女を助けていたっぽいのです。えー? 疲れて灰の中で寝てるのに?
灰を多めに温かくして、スプリングを効かせていたとでもいうのでしょうか。
やはり何らかの思惑があったと感じます。こいつの存在が一番の謎です。誰か解いてください。
重要な部分は見知らぬ誰かに丸投げして済んだ事にします。これは面倒だからじゃないですよ。このままでは一向に終わらなそうだからですよ。改めて読んでみても突っ込み所が多過ぎます。
サクッと話を飛ばしまして、後半には「美こそ絶対的正義!」といった雰囲気になります。
「見たことないくらい綺麗なお姫様」てなこと言って、意地悪な姉達が突然現れた対抗馬を全肯定。
それを聞いたご本人は「そうなんですね。ところであんたらのお古のドレス貸してケロケロ。それ着て舞踏会に行くぞな」と図太い発言をします。←ここは試験に出ますので覚えておいてくださいね。
靴を履いて「コイツがあの美人!」と判明した時も、他者にこれまでの仕打ちがバレる事ではなく、シンデレラが勝手に舞踏会に参加していた事でもなく「あの美人にとんだことを!」とズレた事を言い出します。ゆるふわなオツムです。
そして優しさの代名詞シンデレラですが……名詞が代名詞って、文字で見ると違和感ありますね。いやシンデレラは名前じゃないか。むしろ代名詞が代名詞?
そんな事はどうでも良いのです!!
優しいはずのシンデレラは、馬鹿にされながらも靴の試し履きをします。自分に合うと知っていてずっと黙っていた上に、ピッタリ合っていると確認させてから、おもむろにポケットからもう片方の靴を取り出すのです。
ポケット深え!
は置いといて、勿体つけて優越感を得ようとしていませんかねこれ。印籠もかくやといった風情です。
いえいえ、分かってはいるのですよ。姉が履く前に自分が試すことなど許されなかったでしょう。ただどうしても、所謂『ドヤ顔』が想起されるだけです。
はい、ここで試験ですよ。彼女は以前図々しい発言をしていましたね。そう! 「俺が美人なのは分かってる。ところで服寄越しな」です。ちょっと違う? 気のせいです。
普段は虐げる姉が知らぬ事とはいえ自分を絶賛しているのに、全く興味を示さないのです。絶対に腹に一物あります。問題は、その「一物」とは何か、です。
賢明なるなろう読者さまなら察せられたことでしょう。
答えは「ざまぁ」です
実はここ、エンド分岐でした。
彼女はここでドレスを貸して貰えれば、それを着て次の日の舞踏会に出たのです。
サイズも色も合わないであろうドレスを着せることで、チートドレス補正も無くなり、ガラスの靴を落とすこともなかった。
ざまぁフラグが立つこともなかったのです。
そんなフラグあったっけ? とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
優しさの仮面を被ったシンデレラは姉二人を許す発言をしていますからね。
しかしページをめくると最後に二人を呼んでお城で暮らせるようにしてあげたとあるのです。王子はそんな優しいシンデレラがますます好きになるのです。
王子の想い人を虐げていた二人が城へ上がっても待つのは針の筵、これしかありません。あくまでも自分は善人を装い、周囲を利用して復讐を遂げようとするシンデレラの腹黒さ。
継母には触れられていませんでしたが、一体どのような最期を迎えたのか…………。
まさに『なろう』に相応しい童話でありました。
仙女は教母だよとご指摘いただいたので、修正致しました。ありがとうございました!
油で滑る魔法と書いておりますが、魔法じゃなくても油は滑りますね。
きっと高いクオリティで手間なく塗れるか、その効果のみを付与出来るって事で魔法を使用したのだと思われます。
そういうことにしておいてください……。
〜ドレスの中の秘密〜
ピッタリした靴の踵の上の方に、靴下の余った布がたるんたるんと被さっていたと思うのです。