街道(2)
俺たちはランタンの光を頼りに夜の街道を抜けた。本来逃亡には森を使うが、夜は魔物が活性化するので避けた。流石に初期レベルで深夜の森に突っ込む素人ではないし、その勇気もない。その辺はゲーム時代の知識が多いに役立った。
「まずは情報収集と安全な所か・・・いまいる国がどの程度の規模かは分からないが。」
「ねぇ、遠くに山脈が見えたと思うけど、そっち方面はどうかしら?」
山脈近くが国境であることは多い。また、山脈は無国籍に近い場合も多かった。他にも様々な問題があり、国が手を出すことが少ないのだ。ただその分、冒険者の危険も多かった。
「そうだな、山脈へ向かった方がその後の安全も確保しやすいな。海上だと逃げ場も無いだろうし、俺もそれでいいと思うぞ。」
「山脈ですか・・・」
俺たちの会話に執事が眉を寄せ、難しい顔で考え込んだ。
「どうかしたのか?」
「いえ・・・何でもありません。」と執事は取り繕ったような笑顔を向けた。
その時だ、初めて魔物が前を横切る。最初は緊張し驚いたが、その姿に逆の意味で驚く。
「思った通り、モンスターも同じなのね。」
近くには鼻と耳をピクピクして動かしているウサギがいた。時たま首を傾げている。見た目は愛嬌のある動物である。ただその大きさは大型犬ぐらいあり、実はかなり同猛だが。
「ビッグラビットか。それも白。」
「そうですな。序盤によく見かける初心者用の魔物ですな。」
「いつかは戦闘に慣れておかなければならないものね。まずは私からでいいかしら。大丈夫だと思うけど、もしもの時にはサポートをお願いね。」
「あぁ、分かったが、本当に大丈夫か?」
「コウ様、心配いりませぬぞ、見ていてください。」とだけ執事は軽く微笑んで言う。
ビッグラビットは初心者より少しすばしっこいが、防御力にかける。攻撃手段はタックルと噛み付きだけである。
ちょうど今、目の前で敵に突進していった少女が軽々とラビットの噛み付きを木の葉のように交わし続けている。
どうやら、戦闘の調整を行っているようである。
「なるほど、この世界での敵の攻撃は定石通りなのね。それに・・・・・思った以上に身体がうごくわ、ねっ!」
最後の言葉と共に、閉じた傘の先端がラビットの額を貫いた。魔物は「きゅいいいいいぃぃぃぃーーーーんっ!」と絶命の声を一言上げると、その場に倒れ動かなくなった。
「まぁ、こんなものね。」
その動きは手馴れているようだった。彼女の力量がどれほどかは分からないが、明らかに初心者で無いことがわかる。特にビッグラビットの攻撃習性を完全に暗記していることから、ある程度の実力者なのが分かる。
「最初の時から予想していたけれど、この世界では物理法則以外にも身体がある程度アシストされるようね。」
彼女の言葉に俺は城での出来事を思い出す。自分の想像よりずっと早く正確に身体が動き、強力な打撃が生まれたことを。あの時、何処にどの様に動くが自然と理解できたのだ。
「なるほど、ゲームのスキルを実際に体感できるのか。」
「えぇ、それと痛みもね。」
彼女は少し腕を摩りながら答えた。先ほどの戦闘で少しだけ攻撃を掠ったところだ。しかし、回復薬を与えると自然に痛みも消えていったようだった。
「ところで、これどうするかしら?」
「あぁ、そういえばゲームでも死体から解体しないとアイテムが手にはいらないんだっけな。一応解体用アイテムはあるが・・・」
彼女の足元には大きなウサギの死体が横たわっていた。ゲームでは死体から自動的にアバターがアイテムを取り出していた。そして、この世界ではゲームの動きがある程度アシストされるらしい。つまり、自分の身体がある程度動いてくれるが結局は自分で行うのだ。
・・・・いっそポケットにそのまま入るか試そうか。
「では、今度は私が試してみて良いでしょうか?」
「そうね・・・私も試してみたかったけど、爺に譲るわ。」
「コウ様アイテムをお借りしてよろしいですか?」という執事にナイフを渡すと、深夜のウサギの死体を「ほぉー、これは楽ですな。」と笑顔で、骨と肉に瞬く間に綺麗に剥がし切り分けていく。
その光景を見ながら、確かにここは異世界なのだと実感した。
実はこの世界は『ホラーゲーム』であったのだ (`・ω・´)ババンッ・・・・・・まぁ実際、中盤にホラー要素もあるが・・・まだまだ先だよ(;´Д`A トイレは早めに行った方が良いかもしれんな・・・特に私が、多分文章修正中に漏らすと思う・・・(´;ω;`)