不穏な動向(1)
王城内の廊下を一人の大男が歩いていた。その男が身に纏う武具は一般の兵に支給されているものと違い、全て特注であった。全身鎧は白っぽい鉄色であるが、それがミスリルと鉄の合金であることは誰もが知っている。
ミスリルは貴重金属に分類され、ひと握りの有名な冒険者や富豪、貴族が武具やアンティークとして所持していた。剣一本でも豪華な屋敷が購入できるほどだと言われている。普通の兵士など一生経っても関わりの無いものである。そんな貴重金属を所持していることが、この男の地位と権力の高さを物語っていた。
男は広い廊下の突き当たりにある、豪華な扉の前で止まった。その扉の両隣には全身武装した守衛が立っていた。
「お引取り下さい。あなた様がここを通ることは許されておりません。」
「あぁ、分かっているさ!」
少し怒気を含んだ声に、守衛はゴクッと唾を呑む。彼の前に立っているだけでもその威圧感から腰が抜けそうになっているのだ。この扉を守護する守衛は、兵士の中でも選りすぐりのエリートである。兵士学校を出て、任官し、実践形式の昇級試験を突破した極少数がなることの許された職である。ただ、さらにその上の王族近衞兵までには及ばないが。それでも、一般人より遥かに強いのは確かである。そんな彼らでさえ、この男の前では赤子同然であるのだ。
「国王殿下の様態はどうだ?未だ回復はしないのか?」
「すみません。我々は何も知りませんし、何もお答えできません。」
「そうか・・・・」
そのやり取りは既に何回されたものか。男も守衛から答えが帰ってくると期待してはいない。ただ、何か行動していなければ落ち着かないのである。
男は振り返り、そのまま扉を後にする。そして次に、ある部屋の前でノックをする。部屋の主から応答の声があり男は入った。それは豪華な大きな部屋だった。壁には絵画や銅像、煌くような壺が設置されている。奥の大きな窓の近くには、荘厳な机が設置され、そこには、少しやせ細った背の高い初老の男が椅子に座り何やら書きものをしていた。彼の身に付ける豪華な服装から、身分の良さが伺える。
部屋の主は入室してくる男を見ると、手を止め話しかけた。
「また、国王殿下の所へ行ったのですかな?して、どうでしたかな?」
「あぁ、いつも通り、何も分からなかった。」
「左用ですか・・・」と、悔しそうに歯を食いしばる部屋の主は続けた。
「第一王子殿下の手によってでしょうか。」
「間違いないだろうな。」
それを聴き、部屋の主は鬱憤を晴らすようにまくし立てる。
「最近の第一王子殿下の行動は目に余ると思いますぞ。確かに、国王殿下から特例で一時的な裁量権を与えられているのは分かりますが。それでも限度というものがございます。この前など、我々が政務のため王城を離れているすきに、何やら玉座の間で騒ぎを起こしたとか。さらに最近、やたらと強い軍を編成したのもそうです。
物々しい全身甲冑を着込み顔すら分からぬ奴ら。その軍を使って、些か軍事行動も起こしているとか、厳重に秘匿しているらしいですが、一部の兵士の目撃談では変な首輪が見えたとか、王族近衞兵をも凌駕する実力とかなんとか。」
「お前ほどの権力者でも情報を掴めないのか?」
「えぇえぇ、宰相である私の権限で、できる限りの情報収集を行ってはいるのですが・・・このところの、一部の貴族の反乱鎮圧やら薨去なされた第一王女殿下の御葬式の準備も合間って、人手が足りなく上手くいかないのですよ。」
確かに、このところ大きな事件が連続して起こっている。それも、ここ数百年間、類を見ないほどに。
「それにこの前など、この王都に駐在する兵士一軍を動員して王城に侵入した賊を探していたようですし、今や兵は第一王子殿下の私兵でございます。」
「あぁ、深夜に突然、花火が打ち上がったあの事件の時か。その後の進展はどうだ?」
「ええ、そうですともその事件です。直ぐに花火を売った人と、飛ばした人を探したのですが、どちらも見つからずじまい・・未だ目的すら判明していません。あれは一体なんだったのか。それに・・・・」
「それに?何だ、まだ何かあるのか?」
「えぇ・・・その・・・なんとも言いにくいのですが・・・最近、この治政の不安に乗じて、薨去なされた第一王女殿下を名乗る不敬の者もいるとかなんとか・・・」
「何だと!確か御遺体は確認したはずだな?」
「えぇ、勿論でございます。恐らくは金銭目当てではないかと思いますが、アンドリュー隊長も気を付けて下さい。出来れば姫殿下の名誉のためにも、そのような輩、決して許してはならないのです。」
アンドリューと呼ばれたその鎧の男は、窓の外に視線を移し、何かを思案するような難しい顔でただ一言だけ呟く。
「分かった。」と。
・・・ハンタ○ハンタ○の自動筆記ペンが欲しいな・・・・そして、この小説って面白いのかな?昔はよく、『早く!次の話し書いてよ!筆者遅いよ!どんだけ読者待たせるの!』『俺の休日の楽しみ早くして!!!』って何度も思っていたが・・・実際当事者になってみると・・・いろいろ辛い・・・でもブックマーク付けてくれた人が一人いるから、その人の為に取り合えず1章までは書こうかな。(´;д;`)画面の向こうの少ない読者諸君、あんまり苛めないでね・・・