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都市脱出(2)

そして、俺たちは夜になるまで街中を逃げ回った。

夜でも都市の活気は衰えることなく、彼方此方に明かりが灯り、都市全体を祭屋台の様に明るく照らしている。兵士の数は時間と共に増え、街を巡回する兵士の数は目に見えて増えていた。俺たちはその警備を注意深く警戒し、フードを深く被ってやり過ごした。

そして、太陽が完全に沈み、都市外壁の上が小さな松明だけになり、闇夜で見えづらいなる夜を待った。警備が厚くなるだろう正門とは、あえて離れた場所を選んだ。その外壁付近から闇に紛れ、漆黒のコートを覆い、静かに壁に沿って上昇していく。そのまま、そっと外壁の頂上付近の近く、側面に身体を付け、上を覗き込んだ。

そこには、兵士達が数十メートルごとに槍を構え配置され、じっと外を見つめていた。その数は予想より少ない。外壁上の道幅は4メートルと言ったところだ。


「あら思ったより少ないわね。」


「幸いにも、街中に兵士を集中させているのでしょうな。」


「きっと、そうね。いつも思うのだけれども・・見張り兵ってカカシみたいよね。外をひたすら凝視して何が面白いのかしら・・・それで、予定通りにいく?」


小さな声で少女は俺に問う。


「あぁ、勿論だ。これはチャンスだろう。出来れば、もっと確実に彼らを惹きつけてから行きたいが・・・まぁしかたないだろ。」


「あら、それなら丁度いいわね。恐らく・・・ギリギリ届きそうね。あのカカシが人間に戻るところも見られるだろうし。」


少女は手にした傘を、城の上空に向け『レイ オブ ライト』と小さく呟いた。その瞬間、彼女の傘の先端から蛍のような光が素早く、城の方へ飛び出していった。音は無く、微弱な光であるため兵士達には気づかれていない。

少しして再び彼女が『バースト』と呟く。その瞬間、城の上空で小さな光りが飛び散り直ぐに消えていく。それは初期スキルの一つであった。一瞬の光による目くらましで『逃走用』によく使われる。しかし、城に向かって目くらましを行う理由が分からなかった。


「一体何をしたかっ・・・」俺はそこであまりの出来事に固まる。


光りが消えた後、直ぐに都市の方から『ヒューーーーーーーーーー・・・』という独特の何処かで聴き慣れた音と、光りの筋が空高くに登っていくのが見えたのだ。

そして、それは城よりも高く登り、大きな音と共に光の花のように弾けたのだった。その光景に、俺たちの視線以外にも、外壁上にいた全ての兵士の視線が集まる。


「おいおい、あれ花火じゃないのか?・・・お前何をしたんだ?」


「どうやら、約束は守ってくれたみたいね。一度でいいからお城のナイトショー・・・・見てみたかったのよね。」


それは冗談なのか本気なのか、少女は嬉しそうに散っていく花火の方を見て言った。

その言葉に続き、更に3発もの花火が上がる。


「お嬢様、お楽しみのところ申し訳ございませんが、そろそろ・・・」


「えぇ、そうね・・・・では、いきましょう。」


「なぁ、後で説明してくれよ。」


そのまま俺たちは外壁上に登り、死角と暗闇の隙間を素早く横切った。続けて、道先の外壁の外へと、その身体を投げ出す。

真っ暗な視界の中、最初は重力に身を任せながら徐々に減速していく。数十秒の後、地面へと着地した。同時に全力で走って城壁から離れていく。


そして、城の明かりが小さく見える位置まで走り抜けた。既にそこは、都市外に存在する平原の真っ只中である。

少し息苦しい・・・・

ゲーム世界では走ると体力ゲージが減るが、この世界では現実と同じ、疲れとして感じるらしい。それはこの世界が現実の法則も適応される世界であることを物語っている。視覚、聴覚、嗅覚など5感の全てが、この世界を現実だと感じている。しかし、実際にスキルや収納ポケットなども存在しているのも事実である。

出来れば、アイテムを使用し継続して飛行すれば楽だろう。しかし無理だ。小さなアイテムによる飛行は、MPポイントを消費する。今の俺たちはあくまで初期レベルのはずだ。したがって、長く飛行することは出来ない。


「ハァハァ・・ここまで来ればとりあえずは安全か。なんとか危機は脱したな。」


俺は近くの草むらに仰向けになって言う。空一面は白い砂を散蒔いたような星で煌めいていた。その近くに腰を下ろした少女と、側に立つ男が続ける。


「えぇ、やっと『脱出クエスト』も一段落ね。それにしてもレベルが低いって不便だわ。アイテムや武具の制約を受けすぎるわ。」


「はっはっは、おっしゃる通りですな。となりますと、今後の方針にレベル上げも含めるべきでしょう。我々が殺されないためにも。」


確かにその通りである。まだ、この世界での死がどのように定義されているのか分からない。また、この世界にゲームの法則が適応されているのなら、レベルによる強さがものを言うはずだ。レベルが上がれば上がるほど絶対的な力を有するようになる。それは今後、この世界で生存していくには絶対必須となるだろう。

ここにきて、一つ気になる事がある。


「なぁ、ところであの花火は何だったんだ?」


「あぁ、あれね・・・貴方と城を出て合流するまで時間があったのを覚えているかしら。その時に、もし貴方や私達が捕まった時のことを想定して布石を打っておいたのよ。露店に花火が売っているのと、近くに後貧困街があるのを見つけたわ。そこで花火を買って子供達に『明日までに都市の上空で白光が見えたら花火を撃ち上げて頂戴』ってお願いしたのよ。最初はかなり渋っていたけれど、隠していた金貨を見せたら目の色を変えて納得したわ。おかげで私達のアイテムは『傘』と『ステッキ』に、この『方位磁針』だけよ。」


その言葉と共に執事と少女は、苦笑しながら互いの空のポケットを裏返して見せた。「それに・・・」と彼女は続ける。


「まあ、どのような脱出にせよ、時間にせよ状況にせよ、ダメもとで、兵士達の注意を確実に引き付けられるカードが一枚欲しかったのよ。ふふっ、驚かせて悪かったわ。でも役に立ったでしょ?」


「はっはっは、お嬢様は本当に悪戯が好きですな。」


少女と執事が本当に楽しそうに笑う顔を見ていると、これ以上は何も追求出来なかった。


「まぁ、確かに助かったし・・・あ、・・・ありがとうな。ええっと・・・・」


ここに来て今更だが重大なことに気づいた。ゲーム内では普段、自然にアバターの頭上に表示されるため確認の必要が無かった名前である。本来は初対面の時に名乗るものだが、その初対面の状況があまりに酷かった。さらに此処まで気を抜く間が無かったというのもあり忘れていた。

俺が言葉に詰まるのを少女は小悪魔的な表情で見てくる。


「ええっと・・・?何かしら?」


きっと分かって聞いているに違いない。短い間だがなんとなく彼女の性格が分かってきた。


「遅れて悪かった。俺の名は、『たかはしこうせい』という。コウでいいぞ。」


「あら、やっと名乗ってくれるのね。私は『かさのいんるり』よ・・・出来れば『るり』の方でよんでほしいわね。」


「・・・・・申し遅れました。私は『みずきともただ』と申します。お嬢様と同じように、爺と呼んでくれて結構です。」


「そうか、ありがとう、ルリさん。それに・・・爺?」


女性の名を口にするのは久しいためか少し照れる。それに、俺が女性に感謝を言うのも、随分と久しいように感じる。


既に2章の筆記を修正しながら、この1章も同時に修正し投稿している・・・かなり疲れた。ちなみに手元には3章までの原案があるが・・・あまりに疲れたら即完結に持ち込むと思う。実は!お勧めのハラハラする展開が後半にあったり、無かったりするのだが・・・・・そこまで気力が持たなかったら皆様ごめんなさいm(_ _)m打ち切りの可能性有りです。きっと、『面白かった』感想とか『評価』が増えれば頑張ると思う。

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