都市脱出(1)
俺は人ごみに紛れた。
犯罪者が警察から逃げるとき、田舎に逃げようとする場合があるが、それは間違いである。田舎は余所者に対しとても用心深い。住民全てが互いに監視し合っているようなものだ。逆に、都会の人間は隣のアパートに住む人を知らない。人によっては同じ階、さらに、隣の人も知らない場合もあるのだ。これは俺が、実際に田舎から出てきて実感したことである。
流石に城のある城下町は活気があった。俺は直ぐにポケットからフードを見つけると被った。このポケットの仕様は特殊である。中には様々なモノが仕舞え、その限界容量は俺にも分からなかった。かつて手に入れた貴重なレアアイテムの一つである。これを所持し、使えるのは心強い。武具などもあるが、今は目立たない方や良いだろう。
俺は『方位磁石』を片手に、行き交う群集に警戒しつつ、先を急いだ。
そして、数十分後、それはあるものを指し続けて止まっている。それは人ごみの屋台であった。その近くで先ほどの二人を見つける。
「んっ?そのアイテムは!おぉ、ご無事で何よりでございます。」
「あら、ようやく合流できたわね。よかったわ。」
緊張感の無い言葉に肩の力が抜ける。「じゃあ、取り合えず歩きながら話しましょう。」と、問答無用で二人が歩き出す。
「なぁ、これからどうするつもりなんだ?」
「そんなの決まってるわ。取り合えずこの都市を抜け出すのよ。」
「いや・・・それはそうなんだが。その方法とこれからだよ。」
「そうね・・・あなたはどう思う?」
少女は人差し指を顎に当て、首を傾ける。その仕草はわざと臭かったが様になっていた。ただ、俺には何か企んでそうで怖さを感じるが。
「そうだな、取り合えず都市の外に拠点を探す必要があるだろう。そして、情報収集だな。誰が敵か、ここが何処かなど、まず情報が不足しすぎて作戦が立てられない。それに、この世界がどの程度俺たちの知っているゲームと同じか、俺たちが何処まで出来るのかも確かめる必要があるだろうな。」
その俺の言葉に、驚いたような大げさな仕草で少女が答える。
「へー、驚いたわ、あなたもしかして上級者だったのかしら。」
俺はその言葉にぎこちない笑顔で答えた。
「まぁ、いいわ。私も概ね同じ意見ね。まずはこの都市の一番外の城門を抜ける必要があるわね。そう・・あれをね。」
少女が軽く指刺した前方、離れた所に大きな門が見えた。確か、空から落ちるときに見えたものだ。どうやら、ただ闇雲に歩いていた訳ではなく、初めからここを目指していたらしい。
俺たち3人は家々の小さな路地に入り家の角から、大通の先端に位置する巨大な門の様子を伺う。門の外には橋が見え、その先に草原が見える。
「どうやら、あそこを抜ければ逃げられそうね。」
しかし、門の横には小さな兵士の詰所が見え、実際に3人の武装した兵士が常時見張っている。兵士は出入りする通行人を注意深く監視していた。
「もし顔が知られていれば抜けられないな。強引に抜けたとしても直ぐに兵士が追ってくるぞ。それに時間が経てば経つほど不利になるだろうな。それとも、また飛んで逃げるか?」
「・・・そうしたいけど、私たちのスキルは落下専用なのよ。壁を越えるには更に高いところに行く必要があるわ。」
しかし、この都市に外壁より高い建物はただ一つだけだった。今更王城に戻るなんて論外である。
「チッ!・・・アイテムポーチさえ有ればね!」
「えっ?アイテムなら持っているだろう?」
俺は二人の持っているステッキと傘を見る。
「あぁ、これね、爺。」
「分かりました。」
突然、執事がステッキを服の袖に入れていく。驚く程すんなり入っていき、終いには何もなかったように立っている。
「私のこれも、お嬢様のものも仕込み用アイテムでございます。」
「ちなみに私は折りたたみ傘よ。」と、少女は手の傘を『ガシャッ』と小さく折りたたんでみせる。
「最初にあの場にいた時、即座に身体に隠したのです。ただ、隠せたのはこれだけで、肝心のアイテムが入った鞄を取り上げられたのでございます。」
なるほど、つまり二人が持っているアイテムは目の前のものだけだったのか。だったら、
「なぁ、だったら俺のアイテムを使えばいいんじゃないのか?」
「はっ?あなた何を言っているのよ。あなたも鞄持っていないじゃないのよ。」
少女がそういうのを素通りし、俺はポケットから『ネックレス』を3つ取り出して見せた。
「えっ、どういうこと!もしかして・・・あなたそれ!」
少女はここにきて本当に驚いた顔で俺を見る。執事までもが同じように驚愕している。そして、少女は呆れたように言った。
「あなた・・それ本当にアイテム収納してるの?ポケットに?・・はぁ、貴方みたいな変人初めて・・いや二人目よ。ねぇ、ポケットに収納設定したらズボンと一体化して切り離せないっていうのは本当なの?」
俺はにこやかに頷いた。少女はただ「男って馬鹿が多いのかしら?」とため息をついた。
一章まで完結しているが・・・書いている本人(自分)が一番先が気になる・・・いつも、途中で誰か自分の代わりに先を書いてくれないかな?俺が一番先を読みたい!と思いつつ、仕方なく自分で書いている・・・・はぁ・・・続きが気になって寝れない・・・