忘れられた街(5)
ユーリアは、自分を第一王女ユーリアスだと名乗った。
「えっ!?あなた王女様だったの?どこかの貴族とかではなくて。」
実は、コウ達はユーリアとヘンゼルがただ者では無いことを、言葉や態度から察していた。
それでも、どこかの金持ちか、下級貴族程度に考えていたのだ。
それが、まさかの王女だと言う。
しかし、そうなると・・・
「どういうことだ?ワルキア王国の第一王女っていったら、事故で死んだって聞いたぞ。」
コウの言葉に、すぐにヘンゼルが言葉をかぶせた。
「事故死では無いっ!!あれはっ・・・・あれは暗殺だったんだ・・・」
叫び出た声は、徐々に消え入った。
ヘンゼルは、目を落として、悔しそうに唇をかむ。
その様子を見て、空気を換えようと、ルリが慌てて聞き返す。
「暗殺って、誰かに殺されかけたってことよね。どうしてそんなことに?」
怒りか悲しみか、ギュッと拳を握っているヘンゼルの隣で、静かに話を見守っていたユーリアがゆっくりと口を開く。
「私からお話します。あの日、私たちは王都から離れた場所に、公用で向かっていました。しかし、谷間を抜けるとき突然、馬車の前で大きな爆発が起こったのです。すぐにヘンリエッタや騎士が私を守ったのですが、すぐ後に上空から落石が起こり、ほとんどの者が大怪我をし・・・私と数人が逃げのびたのです。」
王女はその時を思い出してか、悲しそうに目を伏せる。おそらく、騎士の何人かは無事ではなかったのだろう。
それでも、悔しさを絞り出すように声を出す。
「その後、私たちはその土地を収める貴族の基に助けを求めたのですが、そこで・・・偽物扱いされ襲撃されたのです。」
驚いて目を見開くコウ達を前に、
まるで、全ては自分の責任であるように、悲しそうな声は続く。
「その場にいた騎士が、私とヘンリエッタだけを逃がしました。その後は、2人で居場所と転々として逃げていたのです。信頼できる貴族もいましたが、連絡を取ることもできず・・・」
王女は騎士の命を想ってか、それとも逃走の日々を思い出してか、目に雫が浮かぶ。
真剣な表情で聞いていたルリが、優しい目で、静かに口をはさむ。
「あなたたちも大変だったのね。」
「・・・どこかで聞いたことあるような話し・・・」
ルリが中指を口に付けて「シー」の合図で、コウの言葉を遮る。
そして、何も聞こえなかった様に続きを促した。
「そう、それで、どうしたの?」
王女は、片手で涙を拭きとり、目を合わせて続ける。
「はい、潜伏後すぐに、ある村で私たちは布告を見たのです。私たちが死んだことと・・・第一王子の戴冠式が行われることを。」
「「「んっ!」」」
第一王子・・・どこかで聞いたことある単語だ。
どこだったか、かなり前に、初めてここへ来た時・・・
「!!第一王子って、あの人殺しかっ?」
そうだ。確か、王城の広間にいた豪華な服を着た男が名乗っていた。
突然、人を殴ったあの残酷な人間!
信じられないという目で、漏れ出たコウの声に、王女は悲しい声をかぶせる。
「違います・・・お兄様は、数年前までは真面目で善良な人でした。しかしそれが、徐々に人が変わったようになったんです。」
善良な?あれが?
衝撃的な出会いをしていたコウ達3人は、納得いかないというように、顔を見合わせ小さい声をだす。
「人が変わったように?心境の変化でもあったのか。」
「それでもおかしくないかしら。それで人を殺すようになる?私たちの知っている王子はまるで殺人鬼よ。」
「ふむ。人が変わるには必ず『きっかけ』があるものですぞ。つまり、その数年で何かあったと見るべきでしょうな。」
3人は同時に王女の顔を見るが、彼女はただ狼狽えるように、困ったような目で答える。
「それは・・・私にも理由は分かりません。」
王女の今にも泣きそうな声に、『なんとかしなさい』と、ルリや爺さんが目線を送ってくる。
話題を変えるべく、困ったようにコウは尋ねる。
「それで、どうして「真実の剣」なんだ?」
「はい。実はワルキア王国には、国民に広く知れ渡っているお話しがあるのです。ワルキアの初代国王が所持していた剣、国の象徴として祭られ、重要な式典でも披露される国王の権威と称されるもの、それが「真実の剣」なのです。国民は皆「王の剣」と呼び、真名を知る者のは少ないですが・・・」
王女はコウ達の顔を見ながら話す。なぜ、あなた方は知っていたのか、と問うような視線である。
「そして、一部の者しか知りませんが、『本物』は数百年前に失われ、その後は、形だけ似せた模造剣が使用されてきたました。」
どうやら、問いかけは保留にしてくれるらしい。
なるほど、その失われた『本物』が、王女の手にあるもだろう。
しかし、それだと分からないのは・・・、
「あなたたちは本物のありかを、知っていたということかしら?」
ルリの言う通りである。数百年も行方不明になっていたものが、目の前に都合よくある。
そんなこと、あるのだろうか?
王家が在りかを知っていたのなら、なぜ、今まで模造剣を使っていたのか。なぜ、探し出さなかったのか謎である。
皆の不思議そうな顔を察して、ヘンゼルが答える。
「ユリさん、あなたは洞窟での出来事を覚えていますか?どうやってユーリアス様が別れ道を選んだのか。」
突然の質問に、ユリは考え込むように、人さし指を顔につけて思い出す。
「えっ?確かあの時は・・・!」
そうだ。確か、ユーリアが精霊というものにお願いして判断したのだ。
しかしそれは、王女らにとって秘密だったはず。
答えて良いものかどうか、考え込むユリの顔を見て、ヘンゼルが答えをだす。
「そうです。ユーリアス様は精霊に意思を伝えることができるのです。精霊とはこの世のあらゆるところに存在するものです。そして、一般魔法とは違い、ある種の奇跡に近い事象をも引き起こすとも言われています。そこで、ユーリアス様は精霊に失われた『真実の剣』の場所を聞き出したのです。そのときの、内容を記したのが・・・・この洋紙です。」
ヘンゼルが大切そうに懐から出したものは、ダンジョンの隠し通路を発見したとき、見ていた紙だった。
「私も最初は、本当に上手くいくとは思いませんでした。しかし、剣が見つかったのは事実です。
『真実の剣』が見つかった以上、私はやるべきことをやらなければなりません。」
王女は、言葉を区切ると、グッと手を握りしめ、強い意志を込めた目でコウ達を見つめ言い放つ。
「私は、真実の剣を持って自らの権威を示し、王女として、第一王子の真意を確かめます。」
そして、その視線が手に持っている剣に移る。
「王国の戴冠式には、王子派、王女派、国王派、主だった貴族や聖職者、有力な商人などが集まります。そこでなら、流石に声を荒げて、私を『偽王女』として罰することができないはずです。それも、本物の『真実の剣』を持っている私なら。」
ヘンゼルも主の決意をくみ取り、同じく強い意志をもって言い放つ。
「ユーリアス様は、戴冠式にて自らの立場を証明し、『真実の剣』を持って王子に国の現状を問いただすつもりなのです。そうして、王族としての責務を果たすつもりなのです。」
2人の力のこまった声は、強風のようにコウ達の体を揺さぶった。
王女の目には強い決意の光が今も輝いている。
爺さんが、どこから出したのか、ハンカチで鼻をすすっていた。
「なんと、なんと健気で立派な心意気。爺は感動しました。」
「あぁ、なんか・・・後をつけて本当に悪かったな。しかし、2人の事情は理解した。今度は俺たちの番だな。」
「ええ、そうね。ただ、私たちの話しの方が、内容的に信じてもらえるかどうか少し不安だけど・・・実は私たちは・・・・」
・・・・
・・・
・・
久々に読み返したら・・・誤字脱字が多いのと、矛盾修正をしていないな。
時間があればするかな。
物語は続く!!
こんな、つまらん『ヘッポコ小説』読んで下さっている皆様、なんだかんだありがとうございます。
何気に大勢いるのが不思議たまりません。




