隣国(4)
山の麓道を進みしばらく歩くと小さな街があり、あまり大きくは無いが一通りの店が揃っているようだ。
到着した頃には日が沈みかけていた。
早速俺たちは、街の一角にある小さな宿で部屋をとった。そして1階の食堂では味わうようにお茶を飲む二人の姿があった。
一人は久々に飲むお茶の味を確かめるようにゆっくりと飲み、もう一人は珍しそうになんどかカップを覗き込み確かめるように飲んでいる。
その周りには二人をそっと見守るようにしながら軽食を取る3人がいる。
「わざわざすまないな。俺たちまで奢ってもらって。」
「いいのですよ。私が招待したのですから。私に恥ぢをかかせないで下さい。それに、あなた方には助けてもらったお礼もありますし。」
「そうか。じゃあ遠慮なく頂くよ。」
食事を取りながら周りを見渡せば、夜ということもあり数名の客が会話を弾ませながら飲食している。
こんなにも気を緩め、のんびりとした時間を過ごすのは久々である。隣の爺さんの笑顔が心なしか何時もより明るく見える。
俺は、お茶を嬉しそうに飲んでいる二人をみながら、思い出したように会話を切り出す。
「そういえば、今まで逃げることばかりで考えていなかったけど。ここは隣国で間違い無いよな?」
「あぁそうだ。山脈を挟んで国境は分かれている。山脈の麓から先に位置するこの場所は隣国で間違いない。」
ヘンゼルのきっぱりとした答えに、流石はこの世界の住人であると感心する。二人はある程度の知識を持っているらしい。
だったら・・・
「なぁ、ここはどういった国なんだ?」
その言葉に一瞬だが周りの空気が固まる。
俺の質問にヘンゼルは驚きとも呆れともとれるような顔で言い出す。
「何を言っているんだ?もしかして分からずに国境を越えたのか?命掛けで?」
「ヘンゼル、失礼ですよ。彼らにも理由があるのでしょう?それは私たちも同じこと。」
「!・・・・す、済まなかった。」
ユーリアの言葉に思い出したかのように悲しい顔し、慌てて謝るヘンゼルに対して爺さんが咄嗟にフォローを加える。
「実は我々は遠くから旅をしていたおり、厄介事に巻き込まれましてな。さらに田舎者でモノを知らぬのです。気になさらないでくだされ。」
「・・・そうでしたか。皆さま申し訳ございません。私どもの非礼をお許しください。」
ユーリアまでもが必死に頭を下げてくるが、別に気分を害した訳ではない。そもそも何もしらずに命懸けで国境を越えて来た俺たちはあまりに無謀であるのだ。初めからそれを承知で来ているのだ。
「いや、別に気にしていないから大丈夫だよ。自覚もあるしな。」
「・・・済まない、そう言ってくれると有難い、では私の知っていることを話そう。今いるこの国は『イリオス王国』と言い、比較的差別も少ないため多くの種族が共存している場所だ。歴史では、昔は王国とも争っていたが約100年前に両国で和平を結んでおり、今は友好関係になっている。そしてなにより特殊なのは、この国では隣国からの脱走者を受け入れることが多いということだ。」
「そうか!だからあんなに密入国しようとした人がいたのか。」
炭鉱に入るときのことを思い出せば結構な人がいたのを思い出す。密入国者が後を絶たないのであれば、あのような犯罪業も成り立つのも道理だろう。なんとも許せないことではあるが。
そして、ヘンゼルの話は俺達にとっては吉報である。脱走者の受け入れに寛容である国なら、とりあえず俺たちの身は安全であるだろう。
「ついでに、この辺りで調べ物や情報を集めるにはどうしたいいんだ?やはりギルドの組織力を使った情報網か?それとも情報屋でもいるのか?」
「お前たち、田舎者の割にそう言ったことには詳しいんだな・・・・まぁそうだな、両方とも手段として考えられると思うが。」
そうか・・・これで俺達の置かれた状況や、俺達を捕まえようとした王子が何をしようとしていたのか調べることも可能だろう。情報を集め、そこからどうすべきかが今後の行動方針になるだろうし。
俺がそんなことを考えていると、ユリが言葉を切り出す。
「ところで、ユーリア達はどうするのかしら?もしかして聞いたら不味いかしら?」
その言葉に神妙な顔になる二人。命懸けで国境を越えてきた二人だ。きっとそれだけ重要な理由があるのだろう。本来なら聞辛い話題であるが、どうやらユリは彼女たちのことが心配らしい。短い間であったが共に死線を乗り越えてきたのだ。もはや他人とも思えないのだろう。
「質問に質問で返すのは非礼なのだが、貴方たちはどうするつもりだろうか?」
畏まったようにヘンゼルが訪ねてくる。どうすべきかとも思うが、とりあえず正直に考えてたことを話す。別に今更、彼女らが敵だとも思っていない。
「えっ、俺たちか? そうだな・・まずは情報を集めなくてはならないだろうから。とりあえず『冒険者ギルド』に加入しようと考えているんだが。」
「えぇ良い判断だと思うわ。ずっと情報を集める機会が無かったもの私たち。まずはそれについてゆっくりと話し合う必要がありそうね。」
「ふむ、そうですな。それとコウ様もお嬢様も長旅で疲れているでしょうから少しゆっくりと休まれると良いでしょうな。」
俺たちの会話を聞いて不思議そうにヘンゼルが聞いてくる。
「冒険者?皆様は既にお金に困っていないように見えるが?それに情報とは・・・しかし、それならこちらも都合が良いのかも知れません。お嬢様、どうでしょうか?彼らなら信用できるかと思います。」
「そうね。私もそれが良いと思います。彼らに協力を依頼しましょう。それと、冒険者に依頼するのなら報酬が必要ですね。ヘンゼル!」
「はっ!」と答えたヘンゼルは懐の革袋から何かを取り出して机の上に置いた。そこにはブルーに輝く小く透明な石があった。どこかで見たことのある石に、その名前をヘンゼルが告げる。
「サファイヤです。これでどうでしょうか?」
「えっ?ちょっとサファイヤってかなり高額に売買される宝石じゃないの?」
「はい。恐らく売り飛ばせばかなりの金額になるかと思います。」
突然机の上に出された高額な鉱石に、俺たちは呆気に取られたのだった。
【次回更新予定10/23 00:01】
今日から連続更新です。
既に完成した原稿が3日分あるため。
そして、ここから物語は転換していきます(;´Д`)
それと、一日80アクセス数有難うございます。
著者の想像を遥かに超える人が読んでいることに驚愕する今日この頃です(;´Д`A




