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国境沿洞窟内(3)(更新済み)

「おいっ!!お前は一体何者だっ!!」


突然ヘンゼルが剣を抜き放ちユリに向かって構えた。その目は殺気に満ちておりとても冗談で行っている行動でないことが分かる。

一体何が彼をここまで怒らせたというのだろうか。


「一体どうしたの?私、何か悪いことでも言ったのかしら?」


ルリに彼が不機嫌になるような事を言った覚えは無い。しかしその目には強い光が宿っており、静かに話を聞いてくれそうな雰囲気でもなかった。

出来ることなら穏便にすませたいと思いながらも、気付かれない様に自然に傘を下段に構える。彼女の剣筋と強さならば先ほど見て理解している。

今の私よりはレベルが上だろう。しかし防げない訳でもなく最悪逃げれば良いし、一方的に負けるとも考えていない。少しの間であれば撃ち合うことも可能であろう。

それに、

(逃げるのには慣れているわ。)


「何をぬけぬけと!私たちを捕まえにでも来かっ!!」


彼女の殺気がより一層強くなり、今にもこちらに切りかかろうとした瞬間・・・


「ちょっと待ってヘンゼル!!剣をとめなさいっ!」


ユーリアの大きな声が響く。それは先ほどまでの彼女からは考えられないほどの大声であり、その真剣な目からは怖さまで感じるほどだ。

普段は大人しい彼女が叫ぶ姿に、二人は驚いてキョトンとする。そんな二人の様子を見てからユーリアは優しい声で言う。


「冷静に考えてみて。彼女が本当に私たちの敵なら既に危害を加えているわよ。だって、いくらでもチャンスはあったもの。さっきだって私たちを置き去りにして逃げれば良かったのに、助けてくれたわ。」


「・・・・うっ・・そうか、確かにそうかも知れない。しかし、先ほどの言葉はどうして」


「もしかしたら私たちの勘違いか、もしくは他に何かあるのかもしれないわ。結論を急ぐには早過ぎると思わない?」


ユーリアが落ち着いてゆっくりと説得すると、ヘンゼルは困った様に視線を彷徨わせてからユリの目を覗き込んだ。

そして、静かに剣を鞘に戻したのだった。


「なんだか、誤解が解けたようだけど説明してくれるかしら?一体どうしたのかしら?」


「あぁ、悪かった。あまりに思いがけない言葉を聞いたもので・・・・実は・・・・」


ヘンゼルが落ち着きを取り戻し、自身の行いを反省しながらも理由を話そうとしたとき、


「「「Guuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuーーーーーーー」」」


悍ましい異形の声が響き渡った。

右の坑道の穴、その暗闇の奥から低く唸るような声が空気を叩きつけたのだった。

その音は地鳴りのようでもあり、落雷の轟音のようでもあった。


「なっ!!一体なんだこの音は!!!」


「身体が、震えるわ。」


突然の怪音に取り乱す二人に向け、ルリが小さく呟く。


「・・・・これは、もしかして魔物!」


この音が人為的なものでないのなら魔物しか心当たりは無い。そしてここは坑道である。ならば出現する魔物は洞窟等に生息する種族であるはずだ。

ルリは瞬時に過去の経験から該当する魔物を思い出そうとする。しかし、こんな声に聞き覚えなど無かった。


「変ね。私の記憶に無い魔物なんているはずないのだけれども。一体・・・・」


「「「Guuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuーーーーーーーー」」」


「「「!?」」」


地を這うような憎悪に満ちる賎陋な声に、3人の顔が引きつる。

同時に考えることは一緒であった。


「ねぇ、直ぐに逃げたほうが良いと思うのだけれども。どうかしら?」


「あぁ、同感だ。今は全力で逃げた方がいいな。」


「わ、私も同じ考えです・・・・」


さて、意見が綺麗に一致したところに問題が一つだけ残っていた。


「それより、どうしましょうか?後続に私たちの道を知らせないといけないのだけれども・・・あぁ、そういえばすっかり忘れていたわ。ここは日本じゃなかったのよね。だったら問題ないかも知れないわ。ねぇユーリア、出口ってここから左方向かどうかまで分かるかしら?」


聞かれたユーリアは不思議そうな顔で答えた。


「えっ?えぇ、ここからだと左方向のはずですが・・・」


「んっ?どういうことだ?」


「そう、良かったわ。問題が解決したから先を急ぎましょう。コウと爺なら確実に私たちを追ってくるわ。」


「「???」」


二人は不思議そうな顔をしていたが、ユリはそれに構わず左の道へ足を進めていった。

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