国境沿洞窟内(2)(更新済み)
3人は真っ暗な鉱山内を走るが、どこまで行っても闇が続くだけである。
「まいったわ。まだ『暗視』は取得していないのに。目立つことは避けたいけどしかたないわ。初心者用の明かりを使うしかないようね。」
ルリが魔法詠唱を試みると、手にもつ傘の先端から小さな明かりが灯る。
その光りは豆電球の様に小さいが数メートルの視界を確保できた。
「わあ、不思議ですわ。先ほどもそうですが、もしかしてそれは古代器具でしょうか?」
ユーリアが目を輝かせて聞いてくる。ルリは聞き覚えの無いその単語に首を捻るしかなかった。
「それは初耳だわ。どういったものなの?」
「古代器具とは、遺跡などで発見される遥か太古の道具のことです。その仕組みは難しく今の文明では再現が困難だとされています。そしてどれもが貴重で高額であり、ほとんど王立研究所や一部の収集家しか所持していません。普通、平民とは一生縁の無いものです。」
ヘンゼルの説明を聞いても、やはりルリに思い当たる節は無かった。もしかしたらこの世界特有の物なのかもしれない。
「へぇ~そんな物があるのね。興味があるわ。でも御免なさい、これがそうかまでは分からないわ。貴方たちの言っている古代器具がどのような物か私は全く知らないの。その話は後にしてまずは先を急ぎましょう。二人も直ぐに追いつくはずだから。」
「二人を信頼しているのですね。」
「まぁ・・・そうね。命を預けるくらいには信頼しているわよ。貴方たちもそのように見えるけど間違っているかしら?」
「その通りだ。間違いは無い。」というヘンゼルの相槌を横に、彼女らは更に速度を上げ走り出す。
しかし途中で思わぬ事態に遭遇する。
「困ったわ。まさか分かれ道があるとはね。さて、どうしたら良いかしら・・・・」
彼女らの目の前には2本のY字型の分道があった。どちらも同じような形と大きさであり区別がつかない程だ。
何方が出口に繋がっているだろうか。もし間違えれば最悪、後続に捕まる可能性もあるため正しい方へ進まなければならない。加えてコウや爺が自分達の後を追えるようにもしなければならないだろう。
(何か良い考えは・・・)
「もしかして、道に迷ったのですか?でしたら私に良い考えがあります。」
答えは思わぬ方向から出てきた。ルリは不思議そうに尋ねる。
「えっと、ユーリア分かるの?」
「はい、恐らくは力を貸して下さると思いますが・・・」
その一言を聞いた瞬間に機敏に反応したのはヘンゼルであった。彼は慌てたように言う。
「待ってくださいユーリア様!まさか人前で御技を晒すおつもりですかっ!?」
「えぇそうよ。ヘンゼル、この力はもともと人を助けるためにあるのですよ。今使わずにいつ使うのかしら?」
ヘンゼルはそれでも迷う様にユーリアを見つめる。その微かに揺れる瞳には不安の色が浮かんでいる。何かを堪えるように何度か唇を噛んだあと、ルリに向かって真剣に懇願する。
「ルリ殿、これからここで見聞きしたことは誰にも話さないで下さい。お願いいたします。」
ルリには内容が分からなかったが、ユーリアが深く頭を下げて懇願してくる様子から、余程大切なことなのだと察する。
「ええ、大丈夫よ。絶対に誰にも言わないわ。それで何をするつも-----------
ルリがユーリアに問おうと振り向けば、彼女は目を瞑り、両手を祈るように握り締めて静かに呟きだしていた。その姿は教会のシスターが神に必死に祈りを届けるように神秘的なものであった。
「世界の精霊達よ-----古の盟約に基づき我の力と成れ-----正しき道をここに」
ゆっくりと誰かに願いを届けるように紡がれた言葉、それを言い終えて静かに動かないユーリアの周りからは、気のせいだろうか、目に見えない力を循環を感じる。それがなんなのか、確実にあるのかは分からないが、何となく皮膚がそれを感じ取るのだ。
ユーリアはそっと眼を開けると笑顔で伝える。
「分かりましたわ。左が外につながっていますよ。」
「分かるの?」
「ユーリア様は人に見えぬ者達と意思疎通が出来るのです。くれぐれもこのことは・・・」
「あなた達にも複雑な事情がありそうね。まぁそれはお互い様だわ。勿論私は秘密を守るわ。リーリア神に誓ってね。」
「!!!!!えっ!?」
「!!!!!今なんと!!」
二人に向かって、癖として身についていたゲーム内での冒険者が良く使う誓い文句を言ったしまう。本当に単なる気まぐれから出た言葉であるが、二人の表情が激変する。
ユーリアは驚くほどこちらを大きな目で見つめ、口に手を当て信じられないものを見るように凝視している。
ヘンゼルに至っては驚愕の顔と同時に口が開いたままであった。
二人はどうしてそんなに驚いているのだろうか。私が何かまずいことをいったのだろうか・・・・
作者は第一部が完結した推敲前の文章が手元にあるのに・・・なかなか投稿しない男です。来月から加速して投稿する予定です。完全に趣味で書いている小説なので、出来れば読者数が増えない方が良いとか考えているダメ人間・・・




