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大壁都市(3)

すると、突然後ろから声を掛けて来た人がいた。


それは、一般的な町人の格好をした男であった。


「なぁ、あんたら、実はさっき冒険者ギルドで見ていたんだが、もしかして、訳有りか?もしかして、壁を抜けたいのか?」


俺たちはその冒険者を注意深く見つめる。隣で、少女が布に手をかけるのが見えた。


「まぁまぁ、そんな怖い顔するなって。俺は敵じゃない。どうだ?話だけでも聞いてみたらどうだ?聴くだけなら問題ないだろう。それから好きに判断すれば良いだろう。それにあんたらだってこのままでは困るんだろう。」


確かに男の言う事も一理ある。俺たちは国境を抜けたいが良い手が無いのも確かである。相手は一人でこちらは三人である。何かあっても無理やり何とかすることだって出来るだろう。俺たちは互いに顔を見る。そして二人が頷くのを確認して男の話にのることにした。


「分かった。話だけでも聞こう。」


「おぉそうか!流石、話が分かる!絶対後悔させないぜ。ここじゃなんだから、ちょっとだけ俺についてきて欲しい。」


男に連れられ、俺たちは街の隅にある小さな酒場に案内された。中には客が2人ほどしか居ない。その酒場の一番奥の席に着くと男は酒を一杯だけ注文し、俺たちにも奢ると言い出したが、俺たちは断った。男は残念そうにして話し始めた。


「さて、まずは確認したいんだが、お前たちはどうしても壁を突破したい。しかし、事情により通れないってことで間違いないな。安心しろ誰にも他言はしない。それに、ここからの話は俺もいろいろやばいんで内密にして欲しい。」


俺は考えた挙句、首を縦にふった。男は身を乗り出し静かに話し始めた。


「そうか俺も安心した。実はな、この街から深夜に出る一台の馬車があるんだ。そしてその馬車は、訳ありの旅人を裏道から隣国へ案内している。俺は彼らの知り合いでな、なんだったら紹介してやってもいいぞ。」


つまりは密入国の斡旋業者なのだろうか。


「心配はいらない。実際に何人もの人を無事に届けてきた。俺たちなら確実にお前らを隣国へ連れて行ってやるぜ。この都市ではそれ以外にあの巨大壁を抜ける手など絶対無いぜ。」


男の話はかなり怪しいし犯罪である。しかし、すでに俺たちが王城から抜け出した時点で犯罪者となっている可能性も高い。今更、罪が少し増えても変わらないような気もする。


「あぁ、俺も商売なんだ。リスクを背負ってる。その分の金はいただくぜ。ただ、今回は参加者が多いから少しは安く出来る。今回だけ一人10万シークエンスでいいぜ。本来はその2倍はかかるぞ。」


そして男は少しうつむきながら悲しそうに続ける。


「世の中、法律を守るだけでは生きていけないのも分かる。重税や圧政による農民の脱走、豊かな国で幸せに暮らしたいと言う気持ち。俺にも小さな子供と妻がいるからな。幸せを求めたいというのは一緒だ。俺はお前たちを救う。お前たちは金で俺と家族を救う。どちらにとっても良い話しだと思うぞ。大丈夫だ。みんなやってることだ。今まで何百人も無事に隣国に渡ってる。俺達が責任を持って確実に隣国まで運んでやるぞ。金はその時でもいいぞ。どうだ?」


話の内容が内容なだけに俺一人では判断出来ない。


「少し仲間たちと向こうで話しあってきてもいいですか?」


男は機嫌良さそうに「いいぞ、いいぞ、じっくり話し合って決めるといい。」と言ってくれた。

俺たちは違う席に移って、声を潜めて会話した。


「私、あそこまで胡散臭い話し聞いたことないのだけれども。」


「はっはっは。お嬢様の言うとおりですな。正しく詐欺師っぽい話しでしたな。それでコウ様はどうするおつもりですかな?」


「俺は、奴の話に乗っても良いと思う。」


「へぇ~、それは何故かしら?」


少女がこちらを試すような目で見つめてくる。


「今の俺たちの手は、山脈の強行突破、巨大壁の強行突破と密入国だけだ。この中なら間違いなく密入国が一番リスクが低く、そして成功率も高いだろう。確かに奴が信用できないのも分かる。しかし、俺たちも元は冒険者だ。不足の事態に対応することぐらいできるだろう。」


その言葉に少女は少し微笑しながら答える。


「・・・分かったわ。貴方の言うことも正しいわね。今は証明書もないけれど確かに私たちは冒険者よ。あらゆる危険を乗り越えてこその冒険者だったかしら。」


それは俺たちの知っている世界の冒険者のあり方であり心得でもあったものだ。俺もこの世界に来て忘れかけていたものだ。


「おふた方ご安心を。もしもの時は私がなんとかしますぞ。」


俺たちの行くべき道が決まった。俺たち3人は密入国にて隣国へ脱することにした。


男に参加の意思を伝えると、男はとても喜んだ。

そして簡単な手はずを伝えられた。決行は明日の早朝、指定された地図の民家に時間厳守で来ること、荷物は人より巨大なもの以外ならなんでも大丈夫とのことだった。


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