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街中(3)

朝になり俺は直ぐに雑貨屋へ向かった。そこは街唯一の商店だった。俺は店で必要最低限の金貨だけを換金し、ついでに食料や物品を買い足す。有難いことにアイテム収納においてモノが腐ることがなかった。

その後、酒場の裏にある井戸の前で水を被った。ここでは大きな都市以外は水を被るか、桶にお湯をためて使うかが一般的なのだと言う。外の風は暖かく太陽の木漏れ日が目に入る。

俺が一通りの要件を済ませ、部屋に戻るため酒場の廊下を歩いていた時だった。そこで少女と鉢合わせしたのだった。

彼女もこちらに気づくと、目を晒し、言いにくそうにゆっくり問いかけてきた。


「ねぇ・・・ちょっと良いかしら?私、昨日のこと覚えていないのだけれども、何かあったのかしら。」


俺はその質問に一瞬ドキリとしたが、出来る限り平静を装い答えた。


「あぁ、食事をしている間に急に眠ったんだよ。きっと疲れていたんだろうな。その後、執事の爺さんが君を運んでいって寝かせたんだよ。特に何もなかったぞ。」


執事からは何も無かった様に振舞うよう頼まれていた。その理由は教えてはくれなかったが、きっと少女を心配させないためだろうと俺は解釈した。俺の言葉に少女は安堵したように言う。


「そう何もなかったのね、だったら言いわ。爺も起きているかしら?出来れば今後の方針について話し合いをしましょう。」


俺達の部屋に3人が集まった。俺は椅子に座ると近くに立っている執事と、ベットに腰掛ける少女に向け話しかける。


「昨日酒場の爺さん達が言っていたがもう直ぐ隣国だ。俺はこのまま予定通り山脈麓を目指すべきだと思う。一時的でも隣国に逃げれば、この国も簡単に手出ししてこないだろうし。そこで安全を確保してから情報収集や今後の事を考えても良いと思っている。」


「そうね。私の意見も同じよ。今のところ一番良い方法だと思うわ。問題は国境沿いの警備をどう抜けるか、かしら?確か・・通れるのは行商人と冒険者と聞いたけれども、今の私達はどちらにも登録していないわね。さらに、果たして無事に登録出来るかどうかが問題よね。私達が手配されていれば、登録時に見つかる可能性も高いと思うわよ。」


「そうですな。その危険性も考慮すべきでしょうな。行商人と冒険者、どちらかを選ぶのであれば我々は冒険者を選択した方が良いでしょうな。」


その通りだ。二人の話しだと行商人の経験は無いらしい。仮に行商人として通過するにも馬車や荷、馬などの偽装も必要になってくるだろう。一方、俺達は冒険者の経験は豊富であった。たた・・・


「問題はこの世界の冒険者が私達の知っている冒険者と同じかどうかが不明な点ね。登録の仕方も違うだろうし、そのリスクも分からないし、不安要素は多いわね。」


「そうだな。・・・他に方法を考えるなら、城の時のように『飛行』により強行突破するか、または山脈を越えるか・・・山脈の魔物のレベルはかなり高かったはずだ。それに、『飛行』が途中で切れたら俺たちは結局、山脈の中を突破することになるだろうな。それに『飛行』で通過するにしても、どの程度の軍事力が国境に配備されているかが問題になってくるが・・・・」


俺の話を聞きながら執事が、「山脈の突破・・・」と一言呟く。


「あら爺?どうしたの怖い顔して?」


執事はただ何事も無かったように、「いえ、何でもありません。」と返事する。


「そう?なら良いのでけれども。いずれにしても、まずは国境の街に入ってから街の様子を見る必要がありそうね。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


話がまとまった後、俺たちは直ぐに出立の準備をすませる。店内ではおかみさんが掃除をしていたので、料金を渡すと、「頑張んな!」と、背中をバンっと強く叩かれた。そして、


「あぁ、そうだ!あんたたち国境の街に向かうんだってね。だったらそこに荷を運ぶ人がいるから、乗せてってもらうと良いよ。まぁ、多少はお金が掛かると思うけどね。話をつけてやろうか?」


おかみさんは笑顔で言った。その申しでは有難かった。徒歩よりも早いだろうし俺達は少しでも早く国境沿いに向かう必要がある。何よりも体力の温存が出来るのは良い。旅路での戦闘など不足の事態に備えるのであれば最適だろう。俺達はおかみさんの提案を受けることにした。


郊外の農場に荷馬車があった。大きな一枚の木板に車輪が四輪装着しており荷馬車には麦が積まれていた。俺たちはその後方に座り、山脈までの道を進んでいった。


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