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街中(2)

空回りする思考を遮るように、酒場のおかみさんが言った。


「参ったね・・・なんとかしてあげたいけど、こっちも商売だからね。この街にも換金出来る場所があるんだが既に閉まってるんだよ。」


おかみさんの言葉に俺達が困っていると、目の前から言葉が差し込まれる。


「まぁ~、これも旅の縁ってやつじゃよ。わしらは飲んだくれのじじぃ達だが、旅人の珍しい話しを魚に、つまみの一つぐらい馳走する余裕ぐらいあるわい。かみさん!この子らにパンとシチュー3つずつ持ってきてくれ!」      


その言葉に、やれやれというように微笑みながら、「分かったよ。あんたら美人の前で格好つけるのは良いけど、歳も考えたほうが良いよ!」といい、笑いながら奥に引っ込んでいった。言われた爺さん達も「ほっとけ!わしら生涯現役じゃい!」と笑いながら答えている。


そして直ぐに俺たちの前には、美味しそうな湯気と匂いが立ち上がる皿が並べられた。そこには、俺達がここ数日に食した冷たいパンやハムとは違い、暖かさがあった。何故だろうか少し目尻が熱くなった。ふと隣を見れば、何故か少女が鼻を啜る様な仕草と共に顔を逸らしていた。執事は机に頭が着きそうなぐらい深く礼をして言う。


「皆様方、我々の為にありがとうございます。心から感謝致します。」


俺や少女も同じように慌てて頭を下げると、彼らはニカッと笑いながら言った。


「いいってことよ。困ったときはお互い様だろ。ところで、君ら何処から来たんだね?」


未だ此方を見ないようしている少女に代わり俺が答えた。


「えぇっと・・・俺達、遠くの国から、ずっと遠くから旅をしていまして、先ほどこの街に辿りついたところなんです。それで、急いでいたんでまだ、お金を換金していなくて・・・・」


それに執事が続く。


「はい、その通りです。そして、旅路にて日雇いの仕事や手品なんかを披露しつつきたのです。」


と、すかさず袖からステッキを出し入れしてみせた。


「おおーーーー!あんたら大道芸人だったのか!!もっと見せてくれ!!!」


驚く爺さん達に、何故か執事は指を消したり有り得ない方へ曲げたりしていた。その芸達者ぶりに俺も目を丸くして驚いた。一体、執事とは何だろうか、俺の中で謎が深まるばかりであった。

一通り芸を披露し終えた頃、爺さんは話した。


「はっはっは!とても面白かったぞ!酒の宴の余興としては最高じゃの~君達見たいな旅人ひさしぶりじゃわ・・・少し前まではたまに見かけたんじゃがな。ここいらは国境に近いから他国からの様々な旅人が通ったものじゃ・・・」


国境という単語に俺たちは顔を一瞬見合わせる。俺は直ぐに焦るように聞いた。


「あのっ!・・・俺たち、実は違う方向から旅して来んで知らないのですが、この辺りの国境を越えるにはどうすればいいんでしょうか?」


その問いに、爺さんたちは酒を口に含み軽快に答える。


「あぁ、物見見物か何かかのう? そ~さのう、もっと山脈付近に近づけばその麓に街があるんじゃ。国境を警備している街がな・・・、そこから、隣国に抜けることが出来るぞ。ただ、最近は少し警備も強化されているらしいが、最近あの辺りを通るのは冒険者か行商人ぐらいと聴くがのう・・・」


「冒険者か行商人か・・・・」


俺の言葉に爺さんの一人が反応する。


「あぁ、聞いたことあるじゃろ?どちらのギルドも世界規模だからな。」


さらにもう一人の爺さんが付け加える。


「おぉー、あんたら冒険者に興味があるのか?ありゃ、大変らしいぞ・・・腕の強さがモノをいうからな。弱ければ儲からんし、生活も大変、そして場合により死ぬ、その代わり・・・」


それを引きつぐように隣の爺さんが続けた。


「その代わり・・・強ければ儲かる!あっはーーーーそれがロマンってやつじゃよ!はっはっは、まぁ、興味があるんなら、登録してみるのもいいかもしれん。その国境の街に行けばギルド支部があるはずじゃ!」


爺さん達は陽気に会話しながら盃を打ち合せ、勢いよく口に運んでいく。


『国境』、それは俺たちの今後の方針を決める手がかりであった。国境を超えれば逃げ回る心配も無くなるだろう。そこで今後どうするかゆっくり考える事も可能だ。その先がどのような国であれ、最低でもいきなり殺されることは無いはずだ。

執事と目を合わせると、彼も真剣な表示で深く頷いた。きっと同じ事を考えていたのだろう。

そして、ルリの方を向くと・・・・彼女は机上に頭乗せボンヤリしていた。


「・・・って、おいっルリ!大丈夫か、一体どうしたんだ?」


俺は少女の右手にあるモノに気づく。コップを握っていた。しかしよく見ると、それは彼女のモノでは無く爺さんの物であった。あまりに似ていたため間違えたのだろう。

執事もそれに気付いたのか険しい形相で言う。


「これは参りましたな・・・少々、厄介な事になるかもしれませんぞ・・・」


「おい、それはどう-----------っ!」いきなり俺の服が何かに引き寄せられる。

それは彼女の手であった。その勢いのまま、彼女の顔の前まで引き寄せられる。最近、筋力値も上がったためか力強かった。

気づけば互いの吐息が当たるぐらい顔面同士が接近していた。彼女はじっと俺の顔を覗き込んでいる。

彼女の顔は少し朱色に染まり互いに瞳を見つめ合う形になってしまった。それは一瞬のようでとても長く感じた。俺の目には少女の、細長い黒糸の眉、そして大きく薄赤い潤んだ瞳がルビーの宝石の様に煌めいているのが見えた。小さな鼻と口からは静かに吐息が漏れていた。そして彼女は・・ 


「ねぇ、あなた・・、私の酒が、飲めないっていうのかしら!」


突然、俺を睨みつけ激しく肩を揺らしたのだった。そこには単なる酔っ払いの姿があった。爺さん達の方も、「あちゃー、その酒はこの店で一番強いやつじゃ。嬢ちゃんには強すぎたかの~。」と笑いながら傍観していた。俺が助けを求めるように執事を見ると、彼はサッと顔を横に向けた。

そして、彼女は机をバンッ!バンッ!と叩きながら続ける。


「な~に~その顔!冴えない顔してるわね~・・。そんなんだからっ、女心も分からないのよっ!私此処まで歩き続けたせいで服汗だくなのよ?分かるかしら?普通お風呂に入ったり、洗濯しないといけないと思わないのかしら!常識よね!だから・・・」


そこで俺はやっと、街に入る前の会話を思い出した。


「あぁ・・なるほど悪かった。もっと早くに気づくべきだったよ。」


そんな俺の姿を見て、爺さん達が呆れたように言う。


「お主、甲斐性なしじゃの~」


「鬼畜じゃの~」


「女心も分からぬのかの~」


「うっさいわ!」・・・あんまりな言葉に、つい突っ込んでしまった。


 そして彼女は目を細めて静かに言う。


「本当に分かってるのかしら?私・・嫁入り前なのよ!もし汚れちゃったら・・・あなたが・・・・」


その言葉に俺の鼓動が大きく跳ね上がり、彼女と同じように顔が赤くなった。

しかし、その続きを言うことはなかった。彼女は机上に持たれかけ動かなくなったのだ。そして顔からはスースーと吐息が漏れている。そこへ、何処からか此方の様子を見ていたのだろう、おかみさんがやって来た。


「困ったことになったわね。君ら泊まる所に当てはあるの?この街に宿はここ以外無いわよ・・」


その言葉に俺は困った顔をし、執事は首を左右に振った。それを見ておかみさんは腰に手を当て、大きく溜息をついて言う。


「はぁ~分かったわ。こんな泥酔状態の可愛い子、外に放り出す訳にもいかないしね。特別に後払いでいいわ。上の2部屋を使いなさい。突き当たりの両側よ。あんたら二人は1部屋で十分だろ。」


そう言って仕事へ戻ろうとするおかみさんへ「ありがとうございます。」と感謝を述べると、彼女はただ背中越しに手を振って答えた。そして執事は振り返り、頭を下げ言う。


「皆様方、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。そして今夜は有難うございました。ここらで我々は失礼します。」


その言葉に爺さん方は終始笑いながら答えた。


「おお~、いいってことよ!儂らは暇人だからな!いつでも酒の相手してくれや!儂ら大歓迎じゃからな!」


そして執事は優しく少女を抱えて去ろうとする。そんな執事に俺は話しかけた。


「なぁ、執事の爺さん・・・さっき見て見ぬ振りしただろ・・・」


執事は急に明後日の方を向いて、目を逸らしながら真剣な声で話す。


「何を仰っているのですかな。私は執事として礼節に欠けるようなことなどしませんぞ。先ほどは、そう・・・ハエが飛んでいたのですよ。」


明らかな嘘を言い、早足で彼女を連れて消えていく。

俺も爺さん方にお礼を言って休む事にした。部屋に入るとベットが1つだけあった。近くには予備の毛布が有るだけだ。俺はポケットから寝袋を出し床に敷いた。そろそろ休もうかと思った時、扉から入ってきた執事は、手でそれを制してきた。一体どうしたのだろう。


「どうしたんだ?」


「コウ様はベットをお使い下さい。私が床で寝ます。」


執事は優しく微笑みながら言う。先ほどの謝罪のつもりだろうかとも思ったが、違う雰囲気だ。執事は此方に身体を向け深々と頭を下げて言った。


「この世界に来て、お嬢様が無事で居られるのはあなたのお陰です。あなたの助力がなければ、今ごろ我々は都市を脱出することも叶わなかったでしょう。それと共に、お嬢様に付き合ってくれていること、深く感謝いたします。」


そんな執事に対し俺は何でもないように言い返す。


「お礼を言われることじゃないさ。二人と一緒にいるのは俺がそうしたいからだ。それに俺だって、二人に何度も助けられたんだ。お互いに助け合った結果だろ。」


執事はずっと頭を上げない。このままでは平行線である。おそらく、この義理堅い執事は何をいっても譲らないような気がした。


「分かった、今回は行為に甘えるよ。・・・俺も二人に感謝している。二人があの時、逃げることを言い出さなければ、きっと俺は後悔した結果になっていたと思うよ。此方こそありがとう。それに、これからもよろしくお願いします。」


俺も軽く礼を返し、ベットで毛布を被ると「こちらこそよろしくお願い致しますぞ。」と近くから一言声がした。

この世界に来て心から感謝をする機会が増えたように思う。それだけ俺が沢山の人に助けられているということだろう。お互いに支えあい信頼できる関係、俺が半年もの間、欲しくてたまらなかった仲間。心から欲しかったモノがこの世界に来てようやく手に入れることができたのかもしれない。

・・・そして俺たちはこの世界に来て、初めてまともに屋根の下で安眠したのだった。


実はこの小説は後ろから書いているのだ(´Д`;)。つまり結末から逆行している・・・そして、所々重要な場所以外は・・・虫食い状態なのだ・・・それを補完するのが辛い・・(´;ω;`)・・・

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