第三章 バブニアン騒動1
配送のアルバイトを始めてから13日目。
『ひさしぶりじゃのぉ』
端末機の画面越しで小さく手を振る保子莉の笑顔に、トオルはちょっとだけドキドキしていた。
「ひさしぶり」
緊張する気持ちを表面に出さないように平静を装ったつもりだった。……が、その声はわずかに震え、うわずってしまった。きっと北半球にいる彼女にもバレバレだろう。それでも保子莉はからかうこともせず、普段と変わらない応対だった。
『どうじゃ、元気にしておったか? 何しろ、こうしてトオルの顔を見るのも三日ぶりじゃからのぉ』
ニコニコ顔の猫耳彼女。きっと仕事が早く片付いたからなのか、いつも以上にご機嫌だ。フリーサイズのTシャツを一枚着ただけのラフな格好。下半身は何も履いていないのか、Tシャツの裾から覗かせた太ももが気になり、目線がそっちばかりにいってしまう。
「ほ、保子莉さんも元気そうで、なによりだよ」
真面目な挨拶を交わしつつ、端末画面に映る猫耳彼女をチラチラ見ていると
『久しぶりにトオルの顔を見れたからのぉ。当然じゃ』
しかも今日の仕事は件数が少なく楽じゃったから。と、Vサインを突き出して満面の笑みで応える猫娘。
――僕の顔を見たから、元気になった?
それは、いったいどういう意味なのだろうか。もしかして好意からくる発言なのだろうか。
――どっちなんだろう?
正直、真偽のほどが分からなかった。
「仕事、大変だったんだね」
お疲れさま。と労い、保子莉チームの仕事状況を尋ねれば
『まぁ、配達量自体は他のチームと変わらん。じゃが知っての通り、こっちは酷寒じゃからのぉ。うっかりブリザードの中で鼻水を晒してしまったら、あっという間にが凍ってしまったわ』
「えっ、保子莉さんも鼻水垂らすの?」
文句なしの美少女だ。ズズズッとだらしなく鼻を啜る姿など想像し難かった。
『わらわかて鼻水くらい出すわ。まぁ、トオルの前だったら意地でも垂らさんし、そもそもそんな恥ずかしい姿、トオルに見せられん』
どうやら今のラフな格好よりも鼻水のほうが恥ずかしいらしい。そうなると、ますます見てみたくなるのだが。
『もっともティッシュ持参でわらわの鼻をチーンしてくれるならば、見せてやらぬこともないがのぉ』
画面越しに小さな鼻を突き出す保子莉に、トオルは思わず笑ってしまった。
――何だか、今日の保子莉さんは可愛いなぁ
もし本人が目の前にいたならば、頭を撫でたいくらいだ。
『何が可笑しいのじゃ?』
画面の向こう側で前屈みになって首を傾げる彼女。見れば、Tシャツの丸首の隙間からチラリと覗かせる柔肌が視界に飛び込んできた。
――ノ、ノーブラ?
白い太ももばかり気を取られて気づかなかったが、明らかに肩紐らしきものがない。丸首から見える浅い胸の谷間。見えそうで見えない彼女の胸元に、いつしかトオルは画面越しに向かって覗き込むように首を伸ばしていた。
『鼻の下がだらしなく伸びておるぞ』
両腕で胸を隠し、上半身を捩る保子莉に、トオルは慌てて目線を反らした。
「そ、そんなことないよ」
本当はもっと眺めていたかった。と、言うのが本音ではあるが。
『まぁ、トオルならば……見せてやらぬこともないが』
誘うような目つきで丸首部分を引っ張ってみせる保子莉。その艶っぽく迫ってくる雰囲気に呑まれ、トオルの性欲が一気に高まった。
通信終了後、溜まった夏休みの課題を片付けようと考えていたのだが……どうやら、この調子では今夜も片付けられそうもない。
――ダメだダメだダメだ! 保子莉さんの誘いに乗ってはダメだ!
マグマのように噴き出す煩悩を振り払い、埋もれかけた理性を引っ張り上げるトオル。同時に挑発する彼女を牽制した。
「も、もしかして保子莉さん、発情期なの?」
ほんの冗談のつもりで返した言葉に、猫耳彼女の尻尾は硬直し、笑顔が消えた。
「ど、どうしたの? 保子莉さん?」
小刻みに肩を震わせて睨む保子莉に、トオルがビビっていると
『サイテーな男じゃな』
「へっ?」
意味が分からず首を傾げていると、保子莉の眉がさらに吊り上がった。
『気分を害したから、もう寝る!』
そう言って、一方的に通信を切ってしまった彼女。その突然の豹変振りに二度目の「へっ?」を繰り返すトオル。そして慌てて保子莉に呼び出し(コール)をかけたのだが……応答することはなかった。
「何で怒ったんだろ?」と、不機嫌になった理由が分からないまま、悶々と夜を過ごすこととなるトオルだった。
翌日の夕方。
仕事を終えたトオルは格納庫で荷捌きをしながら、長二郎に相談を持ちかけた。
『いやぁー。いくらなんでもデリカシーないわー。なさすぎだわー』
他の従業員と一緒になってエテルカと夕食を取っている親友。どうやら向こうでは外でバーベキュー大会を繰り広げ、大いに盛り上がっているようだ。
「いや、だから何度も言うように、ほんの冗談だったんだよ」
配慮に欠けた発言だった。と昨夜ひとりで反省していたのだが……まさか親友にまでダメ出しされるとは。
『それでもお前が悪いわ。冗談でもそんなこと面と向かって言わねぇし、言えねぇよ』
弾みで口を滑らしてしまったんだよ。と悔やんでいると
『もしかして欲情してるの? って訊いてるようなもんだろ』
自分で言うのもなんだが、その言い方はちょっと酷いと思った。
『トオルの場合、たまに毒吐くような冗談を言うからキツくなるんだよ。俺みたいにいつもテキトーに生きてれば、笑って済ませられるのにな』
単純に、いい加減なだけではないのだろうかと思っていると、長二郎がコンガリ焼けた輪切りの肉を食い千切って言う。
『この肉うめー! ……んで、どうすんよ?』
「どうしたら、いいかな?」
きっと長二郎のことだ。きっと良いアドバイスをしてくれるに違いない。と期待していたのだが……
『ボブ子のBLの時は、知らなかったと言って誤解は解けたけどよぉ、流石に今回のセクハラは助けられねぇわ』
前回は不慮の事故。今回は故意による過失。つまり情状酌量の余地がないということらしい。
「そっか……。やっぱりダメか……」
このまま彼女に愛想を尽かされたままでは、あまりにも辛すぎる。辛すぎて夜も眠れやしない。
『とりあえずもう一度連絡取って、素直に謝れよ。もう、その一択しかないだろ』
それで果たして許してくれるだろうか。
『さぁな。保子莉ちゃん次第だろうな』
親友の曖昧な返答に、ガックリと項垂れた。もし彼女に見限られでもしたら、それこそ、もう……
――って、どうなるんだ?
疑問と同時に不思議な感情が湧いて出た。もし彼女がトオルから離れ、いなくなったらどうなるのだろうか。少なくとも、あの笑顔を見ることはできないだろう。だが、果たしてそれだけなのだろうか。ボーッとしてそんなことを考えていると、画面越しで長二郎が首を傾げた。
『どした、トオル?』
「いや、何でもない」と、まずは彼女に謝ることを長二郎に伝えた。
「相談に乗ってくれて、ありがとう」
また何かあったらよろしくとだけ言って、トオルは通信を切った。
――とりあえず、早く保子莉さんに謝ろう
しこりとして残らないうちに誤解を解き、そしていつも通りに笑って欲しかった。
だが、そんなときに限って
『大変申し訳ございません、トオルさま。ただいまお嬢さまは外出中でございまして』
保子莉への直通電話が繋がらず、やむなく執事のお爺さんに連絡を取ったのだが……まさか、肝心な本人が不在とは。
――もしかして、機嫌を損ねて居留守を使われているのでは?
試しにどこへ出掛けているのかと問えば
『実は先日の配送分に不備がありまして、急遽そちらのクレーム対応に向かわれました。電話に応答できないのは、おそらく気象状況と地形による電波障害によるものかと思われます』
聞けば、何でも従業員二人を引き連れて、客先に向かっているとのことだった。しかも悪いことに現地への道のりは地殻変動が頻繁に起こっている場所で、その影響により、通信障害を引き起こすバブンガスが大量に噴き出しているとのことらしい。
――どうりで繋がらないわけだ
トオルは保子莉たちの安否を気遣いながら、再合流の予定を聞いてみた。
「いつ頃、戻ってきますか?」
『予定通りクレーム処理が完了すれば、明後日までには、こちらに戻られると思われます。なので、もしよろしければ伝言を承っておきますが、いかがいたしましょうか?』
昨日のセクハラ発言を告げるわけにもいかず……明後日に、もう一度連絡することだけを告げた。
『心よりお待ちしております』
と白髪の老人は柔和な笑顔を浮かべ、端末画面から消えた。
すぐにでも謝りたい。なのに本人は仕事中。巡り合わせの悪い空回り状態に、トオルは苛立ちまぎれに髪の毛を掻きむしった。
二日後。
いつものようにトオルたちはそれぞれの任をこなしていた。西へと走るディアのライドクローラーを中心に、トオルと再生体はそれぞれの配達先へとライドマシンを走らせていた。
そして最後の荷物をお客さんに手渡してから
――ディアさんは、どの辺だろう?
村を出る直前、端末でもってライドクローラーの位置を再確認した。予定では南西方向を走っているはずなのだが……なぜかトオルよりも後ろの位置で停まっていた。
――おかしいな? そんなはずはないだろ?
背後の南東方向を垣間見ながら移動履歴を確認すれば、ライドクローラーは一時間前から立ち往生したままだ。
――トラブルでもあったのか?
考えられる要因はふたつ。ひとつはライドクローラーの故障。ふたつめは走行不可能な地形状況。しかし、地にタイヤを着けて走る必要のないライドクローラーだ。谷底のような大きな地割れでも起きない限り後者はありえなかった。
――そうなると、故障か?
原因究明や修理の出来るメカニックマンの同乗もなく、ましてや一軒家のような大型マシンだけに、何をどうすればいいのか分からなかった。
――どうする?
もし走行不能となれば、大幅に予定が遅れてしまう。そうなれば保子莉や他の配達チームに多大な迷惑をかけてしまうだろう。
――自力で何とかしなきゃ
と地図を見直した瞬間、ライドクローラー付近一帯にポツポツと『×(バツ)印』が広がり始めた。
――まさか?
慌てて『×』をクリックすればバブンガスが大量発生していた。連鎖のごとく度重なる不慮の出来事に、トオルは目を見開いた。
――これじゃ、ディアさんと連絡も取れないじゃないか!
通信状態を不能にするバブンガスの存在。もう最悪だった。
――頼むから繋がってくれ!
ダメ元でライドクローラーのディアに呼びかけてみたが、やはり繋がらなかった。
――再生体は? 再生体はどこにいる?
今日の配達量は少なかったはずである。ライドクローラーの近くで、まだバブンガスの影響を受けていない場所にいるならば、状況を伝えてもらえるはず。……と位置を確認してみれば、再生体はすでに拠点へと戻った後だった。
――これじゃあ、再生体と連絡が取れないじゃないか
唯一の通信手段も断たれ、トオルは頭を抱えた。
――こうなったら直接、この目で確認するしかない!
決断するや否や、リヤボックスから防護服と防護マスクを取り出して身にまとった。そして用心のためゴム弾仕様のサブマシンガンを肩にぶら下げた。
――バブニアンが現れないとも限らないしな
予測のつかない不安を抱えながらライドマシンを発進させるトオル。HUDのナビが示す予想到着時間は約40分ほど。
――そんなノンビリ走ってられないんだよ!
トオルは苛立ちまぎれにアクセルスロットルを開け、南東の方角へとライドマシンを傾けた。
バブンガス対策の施されたライドクローラー。機密性さえ維持していれば中の人間には影響が及ばないと聞いているし、また万が一、車内に浸透しても瞬時に空気清浄機能が働くだけに何の心配はないはず。だが、ライドクローラー自体の故障となると『安全』という保証がない。
同時にもうひとつの心配事が、脳裏を掠める。
バブンガスに免疫を持つ盗賊『バブニアン』の存在だった。知能は低いらしいのだが、バブンガスに紛れ、群れで襲ってくるというのだ。それだけに動かなくなってしまった『拠点』は、格好の標的だ。
――それこそ、配達どころじゃなくなってしまうぞ
前傾姿勢になって速度を上げ、ライドクローラーの故障原因とバブンガスの対処法を巡らせていると……やがて煙のような瘴気が地表に漂い始めた。
――想像していたよりも、広範囲に広がってる
防護マスクのフィルターを通し、酸っぱい臭いが鼻腔の奥をツンと刺激した。
――マスクをしてても、長い時間嗅いでいたくない臭いだ
地を這うガスの上を走っていると、遥か前方にライドクローラーが見えてきた。その姿はまるで雲海に浮かぶ孤島のようだった。ここまで、わずか20分での到着。上出来だ。あとはライドクローラーの故障の原因を突きとめて、一刻も早くこのガス地帯から離れれば……と考えていた矢先、拠点を取り囲むように何かが蠢いていた。盗賊バブニアンたちだ。身長はケイニャほどの背丈。ヒョロッとした体格と、焦げ茶色の肌から伸びた四本の腕に握られた石斧で、ライドクローラーの装甲を乱暴に叩いていた。
――いったい何匹いるんだ?
遠目から見る限り五十体……いや、もしかしたら百体はいるかもしれない。どちらにしても気持ちの良い光景ではない
トオルはマシンの速度を落とすと、左手にサブマシンガンを構え、ライドクローラーの側面へと回り込んだ。
「どけ、どけ、どけぇ!」
叫び散らすトオルに、悲鳴のような雄叫びを上げて息巻くバブニアンたち。トオルはサブマシンガンを乱射させて盗賊を蹴散らすと、ブーストモードを使ってライドクローラーの屋根へと飛び移った。
「兄者!」
ライドマシンをドリフト停車させて見れば、防護服とマスクをつけた再生体が『魔剣ヴェルファー』でもって、ワラワラと這い上ってくるバブニアンを払い除けていた。
――くそっ! 何だよ、この数はっ!
気味悪い上におびただしい数のハブニアンに、トオルもサブマシンガンでもって加勢する。
「再生体! ライドクローラーに何があったんだ!」
「ディア殿がいなくなった! 今、中にいるのはケイニャ殿だけだ!」
『ネーヴェル』でカマイタチを起こし、バブニアンを牽制する再生体。その度に得体の知れない紫の血液が宙に舞った。
――ディアさんがいないだって?
どういうことかと、背中合わせになって訊ねれば
「分からぬ! ケイニャ殿に事情を聞こうとした途端、地震と共にバブンガスが噴き出してきたのだ」
「それは後で訊く! それよりライドクローラーは故障してないのか?」
「まだ確認できていない!」と剣を振るう再生体。どうやら確認する間もなくバブニアンたちが襲ってきたようだ。もし故障していないのであれば、動かして盗賊たちを引き離してしまえば良いだけなのだが、肝心の操縦者が不在では、それもままならなかった。
――守りは再生体に任せて、クローラーを動かすことに専念するか?
と上面ハッチを垣間見るものの、再生体ひとりではバブニアンたちの数が多すぎだ。
――いったい、どうすればいいんだ?
眼下に沈むバブンガスと群がるバブニアンを垣間見ながら躊躇していると、突然トオルたちの足元が揺れた。リアクターエンジンの始動。同時に前進し始めたライドクローラーに、宙に浮いていたライドマシンが地滑りするようにズルズルと後方に流されていく。
――いったい、誰が動かしているんだ?
トオルはサブマシンガンを撃ちながら、再生体に命令した。
「僕は一旦、下に降りるから、ここを頼む!」
「任された!」
剣を振るって承諾する再生体を残し、トオルはライドマシンごと地上へと飛び降りた。そして前進するライドクローラーの前へと回り込んで二階部分の操縦席を見上げれば、懸命になって運転する幼女の姿があった。
――ケイニャ? ケイニャが運転しているのか?
しかし、誰も運転の仕方を彼女に教えていないはずなのだが。するとトオルの存在に気付いた幼女が、窓ガラス越しで口を大きく開けて指先を前方に向けた。
「このまま走ります!」
声は聞き取れなかったが、口の動きを見る限りたぶんそんな感じだ。それに応えるように、トオルもサブマシンガンを前方に振ってみせる。
「行けっ、ケイニャ! そのまま突っ走れ!」
この先は障害物のない平原だ。どんなに速度を上げたところで事故などの心配はない。バブニアンたちの走る速度はせいぜい10キロ程度だと聞いている。ゆえに足代わりになる動物を持たない盗賊たちを振り切ってしまえば襲われる心配もなくなる。
「もっと速度を上げさせないと!」とライドクローラーを先導するトオル。後ろを見れば、バブンガスに下半身を埋めたバブニアンたちが必死の形相でトオルたちを追ってきていた。
――あとは引っ付いているバブニアンを振り落とさなきゃ
トオルは後方に下がると、再生体と共にサブマシンガンを使ってライドクローラーの側面にへばり付いているバブニアンたちを撃ち払った。
フィギィーーー!
至近距離での攻撃。強烈なゴム弾を喰らって甲高い悲鳴を上げながら、次々と地面へと落ちていく盗賊たち。そしてあらかた排除を終えると、トオルはブーストモードを使って再びライドクローラーの屋根へと乗り移った。
「再生体! 外は僕に任せて、ケイニャのフォローを!」
「了解だ!」と這い登ってきた二匹のバブニアンを薙ぎ払い、上面ハッチから車内に潜る再生体。ケイニャだけでは心許ないが、再生体が補助をすれば、彼女も安心して運転に集中できるだろう。
――今度は反対側!
トオルは閉まったハッチを見届けるや否や、再びライドマシンで地に降り、サブマシンガンを連射する。無駄弾を撃つこともなく、縦横無尽に這い逃げるバブニアンを容赦無く撃ち落とし……そして最後の一匹を仕留めると、ライドクローラーの後方に回り込んでバブニアンの追跡に備えた。
――もう少し行けば、バブンガスもなくなりそうだな
ナビの気象情報を確認しながら、トオルは、しばらくライドクローラーの護衛を務めることにした。
やがてバブンガスの霧が晴れ始め……ノイズ混じりに通信が回復した。
『聞こえるか、兄者?』
耳元に伝わる再生体の声に、トオルはクローラーの前方に出て操縦室を見上げた。
「あぁ、聞こえてる」
『今、後方ハッチを開ける』
ライドマシン収容の指示に、トオルは首を横に振った。
「いや、まだ油断するのは早いと思う」
収容はもう少し様子をみてからにするのが賢明だろう。と、トオルは外の警護を続けることを買って出る。
「しばらくは、このまま行こう」
『了承した』と意思表示する再生体に、トオルも親指を立てて見せた。