1-2. 入社試験です。①
「わあああああああ、ぎゃああああああああああああ!!」
「五月蠅い黙れ。少しは静かに運転出来ないのか」
「だって私! 十七ですよ! まだ運転免許も持っていないのに……!!」
「はははははははは! 運転免許を持っていないからどうしたというのだ! 運転技術さえ持っていれば運転免許などどうだっていいのだよ! ふうーははは!」
「駄目だこいつ早くなんとかしないと!」
「そんなことを言っている場合か?」
後ろからサイレンが聞こえてくる。嫌な予感しかしない。
「まさか……警察ですかあ!?」
「そりゃあ、法定速度を大幅にオーバーしていれば警察が来るのも当然だろう! 捕まりたくないだろう? 捕まりたくないのならば、飛ばせ。飛ばせ。飛ばし尽くせ!」
「最悪だ……最悪だ、この人……!」
しかし。
アクセルを踏み続けるしか、今の私には残されていない。
だから私はアクセルをべた踏みする。
限界までエンジンに負荷をかけて、速度を上げていく。
プルルル、と電話の着信音が聞こえる。
「はい、もしもし。ああ私です。ですが、運転をしているのは私ではありませんよ。私だったらこんな手荒な運転をする筈が無いでしょう。ええ、そうです。では、またお会いしましょう。総理」
スライドさせて電話を切る。
「そ、総理?! 今、総理って言いましたか!!」
「何だ、今の高校生は総理大臣の名前も知らないのか。無学は良くないぞ。知識はできる限りパンパンに詰め込んでおかないとな。それと、これで君も政府のブラックリスト行きだ。良かったな? ちょっとした犯罪者よりも格上の立ち位置に立つことが出来て」
「そんなの嬉しくありません!! いったいどこまで突き進めば良いのですかっ!!」
「カーナビが教えてくれる! カーナビの言うとおりに進めば良いのだ!」
そもそもこんなスポーツカーにカーナビがついていることが面白おかしい話ではあるのだが。
いやいや、でもでもっ、そんなこと関係ないっ! 私が今やらなくてはいけないことは背後からやってくる警察から逃げ出すこと! もし警察に捕まってしまったらスピード違反に無免許運転、場合によっては家にある死体についても何らかの嫌疑をかけられるに違いない。それだけは勘弁願いたいし、出来る事なら逃げ出したいことだった。
だから、私はアクセルをべた踏みする。
その警察から、その嫌疑から逃れるために!!
◇◇◇
しばらく進むと、郊外にある洋館を指していることが分かった。カーナビの言うとおりに進むと、確かに森の奥にひっそりと佇む洋館が姿を見せてきた。これが、『悪の組織』の本部だとでもいうのだろうか。
「驚いたかね? こんな森の奥深くに洋館があるという事実に」
「はい、ちょっとだけ、ですけれど……」
止めろと指示された場所に車を止めて、私は車を降りる。黒スーツの男とメイド服の女性は洋館にすたすたと入っていった。私も仕方なくその後を追うことしか出来ないのだった。