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殺されて井戸に捨てられたチート怨霊がイケない勇者とハーレム美少女達にコワーイお仕置きイッパイしちゃうゾ!  作者: 谷尾銀
外伝・勇者のいない夜に ~ディオダディ砦の恐怖談義~

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【15】荒野の五人


「……その荒野は、あの悪名高き旧ウボア帝国領で度重なる戦闘と大規模戦略魔法の使用により、死の大地となった場所だ」

「旧帝国領……確かに、ろくでもない場所ね」

 ティナがガブリエラの言葉に皮肉めいた笑みを浮かべながら応じた。

 ウボア帝国とは三百年ほど前に世界の凡そ半分を勢力下とした大国であった。強大な軍事力を持ち合わせ、非道な武力統治と異民族弾圧により、世界を恐怖に陥れた。

 しかし、レジスタンス軍の四人の若者により、皇帝が討たれ、その大勢力は瓦解した。

 このウボア皇帝は先代の魔王と呼ばれ、彼を討った四人のうちの一人はナッシュと同じ勇者だったのだという。

 その旧帝国領だった土地のいくつかは、三百年経った今を持っても荒れ果てたまま放置され、深刻な魔法障害や魔物の脅威に見舞われる魔境として存在していた。

「そんな土地を私は四人の仲間たちと更に南へと抜けて、海沿いにあるルーネイという港町を目指していた」

 そのガブリエラの言葉を聞いたミルフィナは目を丸くする。

「 まさか、生き残ったのは、あなたも含めて五人だけ?」

「いいや……」

 ガブリエラは懐かしげな表情で首を横に振ったあと、言葉を続けた。

「生き残った味方もちゃんといた」

「良かった……」と、サマラがほっとした様子で胸を撫で下ろす。そんな彼女の反応に、冷笑を浮かべてガブリエラは再び口を開いた。

「ただ、このときは、他の味方がどうなったかは解らなかった。当然ながら、生き残りは自分たちだけで、他の自軍の仲間は全滅したという可能性は常に頭の中にあった」

「で、その味方たちはどうしたのよ?」

 ティナに促され、ガブリエラは答える。

「聞いた話によれば、仲間たちは生き残りをどうにかまとめあげ、南西と南東に部隊を分けて、彼らもまた南のルーネイを目指していた。私たち五人はその場に長く留まらず、すぐに南へ逃げたものだから、完全にはぐれてしまっていたんだ」

「じゃあ、再会できたんだね」

 サマラの言葉にガブリエラは首肯する。

「ああ。だが、私がルーネイに着いたとき、団員の数は半分以下に減っていた。私の育ての親だった団長も、この戦いで命を落とした」

「ガブリエラ……」

 悲しそうな顔をするサマラに向かって、ガブリエラは左手をかざし「そういうのはいい」と言い放つ。そして自嘲気味に微笑んだ。

「兎も角、あとにも先にも、あれほどこっぴどくやられた事は、私の記憶にはない。そして、そのルーネイまでの道程は最悪だった。先の敗戦があったから死は違う意味を帯び、常に我々の隣で寝首をかこうと息を潜めていた。ただ、幸運だった事もあった。それは水だ。ちょうど雨季が終わった直後だったので、水を得るのには苦労しなかった。だが、まともな水源はなかったので、水溜まりの泥水で喉を潤していたがな」

「うぇ。マジで?」

 ティナの言葉にガブリエラは軽く微笑みながら頷く。

「ああ。戦場じゃ、良くある事だ。もちろん布で()したものだぞ?」

「それは、そうよね」とティナが得心した様子で相づちを打つと、ガブリエラが鼻を鳴らした。

「しかし、もう少し時期がずれていたら本当にやばかっただろうな。水は全部干上がっていただろうし、あそこには動物もいない。鳥も飛んでいない。水を蓄えるような植物もない。あるのは、かさかさに乾いていて毒性のある野草や低木だけだ」

「じゃあ、食べ物はどうしていたのよ?」

 ティナは呆れと興味本意が半々といった様子で問う。

 そんな彼女の態度を気にした様子もなく、ガブリエラは質問に答えた。

「食料は軍馬がいたからな」

「ああ……」とミルフィナは嫌そうな顔をする。ガブリエラがくすりと笑った。

「……保存食として予め持ち合わせていた羊の干し肉で間を持たせ、走れるところまで走らせた。その干し肉が切れてから捌いて食った。食い切れない分は煙で(いぶ)して干し肉にした。だから、充分に水も食料も持つはずだった。何事もなければ、誰一人欠ける事なくルーネイに着けるはずだった」

 そこで、一息吐くとガブリエラは静かに目を瞑りながら、言葉を紡いだ。

「……しかし、そうは上手くいかなかった」


 ◇ ◇ ◇


 ……最初に一緒だった四人の仲間を紹介しよう。

 私を含む全員が同じ分隊に所属していた。

 まずは、その隊のリーダーのザックだ。

 彼は経験豊富な傭兵で、剣術には私も一目置いていた。冷静で判断力に優れた頼れる分隊長だった。

 次に元冒険者のスレイルとゾイル。

 スレイルはベルフリンクルという国で、猟兵(レンジャー)をやっていた経験もあるらしい。野営の知識と経験が豊富で、彼には本当に助けられた。

 ゾイルは体格のよい禿頭のメイス使いだった。お喋りで陽気な男だったが、頭に血が登り易いところもあった。ただ、妙に抜け目ない部分も持ち合わせていた。因みにスレイルとゾイルは、うちの傭兵団に入る前からの顔見知りらしい。

 そして、ユージン。

 彼は私より二つ歳上だったが新兵で、私の方が戦場では先輩だった。

 そのユージンが死んだ。 

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