~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「亭主とは言え…。命がけの脱出」
疲れ切った中でも亭主として、主人として、「沖縄に帰って、リフレッシュしたら。」と話した。
すると、既に、精神の不安定さから、奇怪な行動になっている安仁屋さんが、亭主の本意を汲み取れずに、もう「カッコ悪いから、沖縄に帰れ!」と言われと勘違いし、安仁屋さんの思考能力は、冷静な判断が出来なくなっていた。
そして、亭主の方をゆっくり向いたとき、亭主は、この世のものとは思えない妻の形相を見ることになった。
安仁屋さんは、もう、人間の言語として聴きとることは不可能な奇声を挙げた。
「ひょろろろろぉぉぅ。」
舌が人間の動きを超え、宇宙言語のような発声に繋がる口腔内への貼り付きとなり、世にも恐ろしい言語となって部屋に響いた。
もう亭主は限界だった。
自分として、亭主として、やるべきことはやった。
もう、その自負は確立していた。
そして、今、目の前にいる、完全に気の触れた妻の姿に、落胆し、涙しながらも、心の中で「ごめん。」と呟き、部屋を出る決意をし、それは一刻を争った。
もう、家内は、愛する女性ではなくなり、命を脅かす恐ろしい存在と化していた。
このままでは寝首を掻かれる。もう脱出しなければ。
平常心を失い、奇怪な行動でリビングを歩き回る妻を置き、急いでスーツケースを取り出した。
追いかけられないうちに、包丁で部屋に入って来られる前に、亭主は恐怖で失禁していた。
スラックスの前をずくずくに濡らしながら、震える手と足で、スーツケースに衣類を詰め込んでいた。
取り敢えず衣類と、印鑑や、居るものを詰め込み、仕事に行くバッグを肩にかけ、サンダルのまま必死に玄関扉を駆け抜けた。
取り敢えず、亭主は、生きて脱出できた!と安心した。
しかし、その安心は、5秒と持たなかった。
何故ならっ!




