~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「もう、耐えられない!」
主人の頭を、一心不乱に孫の手で猛打してしまい、主人は気絶しそうになる寸前、
気力を振り絞り、腕を振り払い、「やめろ!」と安仁屋さんを押し飛ばした。
安仁屋さんは後頭部を机の脚で打ち付け、我に返った。
主人の頭からは血が流れ顔に滴り落ちて来た。
主人は安仁屋さんの不安定な気持ちや、最近の様子を考えたら「自分が支えてあげないと!」と思いつつ、かれこれもう数年夫婦関係が途切れていて、たんなる同居人と言った感情の中に居た。
主人は血をタオルで止めるように拭きながら「一回、沖縄に帰れ。落ち着くまで帰ってこなくていいから。」と言って、風呂に向かった。
「いてぇっ!」
主人はお湯を頭に浴びた瞬間、傷口にお湯が染みて飛び跳ねた。
その瞬間、怒りが込み上げ、「んもぅうんざりだぁ!」と、風呂で暴れた。
それを聞いて安仁屋さんは、ますます落ち込んだ。
「沖縄に帰ろうか…。」
本当にそう思い始めていた。
風呂からあがった主人は、体を拭くと自室に籠りってしまった。
安仁屋さんは、時間の経過とともに、また被害妄想が頭の中を占拠し、
幻聴が聞こえだした。
そして、バルコニーの向こうから、地球外生物らしきものが、
真っ直ぐ、一直線にこちらに向かってきて、それは、やがて、
バルコニーに飛来し、なんと、そのまま、窓硝子を難なく通過し
今、目の前に現れようとし……。