~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「もう、どうでもいい。」
安仁屋さんは、ご主人の前では、普通の奥さんで入れるよう頑張っていた。
もう、安仁屋さんの奇行は、井川社員からの対応依頼でご主人は知っている。
安仁屋さんも、知られていることを知っている。
ぎこちない動きの中で、料理をし、家事をしていた。
ご主人だけは味方と思っていたら、「いい加減にしてくれよ!」と叱責されたショックは、簡単には消えるものではなかった。
そのことに気づいてくれないことが、更に不満のマグマを増幅してしまっていた。
今、安仁屋さんは、生涯で最大の孤独感と孤立を極めてしまっていた。
旦那からは優しい言葉など全くない。
邪魔者扱いには敏感になってしまっていた。
副理事長の集合郵便受の扉を交換するため、旦那に相談したかったが、なかなか話しかけられない。
意を決して、ご主人に「あのね、副理事長さんのところの郵便受なんだけど。」と話しかけたが、
「お前がやらかしたんだから、自費で対応しろよ!」
と、吐き捨てるように言われてしまい、ついに、安仁屋さんの何かが弾けた
「畜生!どいつもこいつも!」と、心の中の安仁屋さんが叫んだ言の葉は、情念のようなものを
感じさせるに充分であった。