03-13 眷族特訓 その06
加筆・修正しました(2019/08/20)
「メル、ス……?」
「──ッ!!」
それは事故だったのかな?
上級鑑定まで進化させて、看破スキルもあげたくなったから借りて試していた。
そのとき、ノイズだらけのお兄ちゃんを視たらどうなるのかが気になって覗いちゃったら……お兄ちゃんにそれがバレたみたい。
突然頭が痛くなって、お兄ちゃんのステータスがお兄ちゃんみたいにノイズだらけに。
だから最初の方に見えた部分だけ、どうにか読んでみた……まだ名前を教えてもらえていなかったのを、このとき思いだした。
「お兄ちゃんは、メルスって名前なの?」
「……そうだよ。隠しているつもりは無かったわけじゃないけど、今は私の存在を知られるわけにはいかなかったのさ」
「どうして?」
「オブリちゃんは、突然現れて力をくれるような人をどう思う? 私だったらこう考えるさ──『NPCがクエストをくれるって』」
このゲームでは、NPCじゃなく自由民って言うみたいだけど……金色のお姉ちゃんが教えてくれた──『みんな生きている』と。
だから、そんな風に思われるのはきっと嫌だって分かるもん。
わたしだって、そういう扱いを学校で受けていたから……言ったことには従って、わたしから話しかけても無視される。
都合のいいことだけ言われてた……けど、それに満足しているわたしがいた。
「都合のいい人間はいっぱいいるし、それを利用するのが人間だよ? だけど、私は誰かのために働くなんてごめんだから。自分のために、誰かに関わる──誰でも無い自分がやりたいって決めたことを、私はやるんだ」
「カッコいい!」
「そうそう、カッコイイ……って、へっ?」
「わたしも自分のために、『ありがとう』って言われるようなことがしたい! 誰かがわたしに『ありがとう』って言うなくてもいいから、そう言われるようなことをわたしがしたいだけなんだ!」
チーちゃんはお兄ちゃんも『ありがとう』が欲しくてやってるんじゃなくて、自分が助けたいから助けてるって言ってたっけ?
うん、チーちゃんの言った通りお兄ちゃんは『お兄ちゃん』みたいだ。
「メルスお兄ちゃん! わたしのことは呼び捨てにして……あと、お兄ちゃんのことをメルスお兄ちゃんって呼んでいい?」
「……オブリ、さっきも言ったけどあんまり名前はバレたくないんだ。だからそのままお兄ちゃんって呼んでくれ。そっちの方が……その、ほ、本当の兄妹っぽくないか?」
「う、うん! そうだね!」
分かってくれる人が居た!
金色のお姉ちゃんやチーちゃん、それにお兄ちゃんにティンスお姉ちゃん。
みんなとってもいい人だし、学校のみんなとは違っている。
「コホン! さて、話を戻すよ。私のことはあとでいろいろと教えるけど、とりあえず今はスキルを強くしてみよう。オブリちゃん、ある程度鑑定系のスキルを磨いたら、次は回復魔法を鍛えてみて」
「うん、分かった!」
「良い返事だよ。それじゃあ、私はティンスの下へ向かう。……どうやらさっきの反射行動が影響を及ぼしているみたいだ。まあ、当の本人には効いていないみたいだけど」
「?」
そういえば怒られると思ったとき、少しだけ体がビクッとしたっけ?
でも、たしか『妖精には魔力に対する強い耐性がある』って言われてた気がするなー。
それからはいろいろなことをやっていた。
ティンスお姉ちゃんといっしょに、いっぱい魔物を倒してレベルを上げる。
お姉ちゃんに回復魔法をずっと使って、レベルを上げさせてもらったよ。
そしてすぐに種族レベルと職業レベルの両方がMAXになって、どれだけ頑張っても経験値が増えなくなった頃──
「はーい、ここで一度ストップだよ。二人のレベルがマックスになったから、一度進化と転職をしに行こうか」
「行こうって……『始まりの町』に?」
「ううん、そっちじゃなくてね。他にもそれができる場所はちゃんと在るし、そっちの方が使っている人が少ないんだよ」
ここに連れてきてもらったときみたいに、お兄ちゃんが指を鳴らすと足元に綺麗な模様が出てきた。
今度はどこに行くんだろう? ちょっとワクワクしてきたな。
「『リーン』って国なんだけどね。とってもいい人たちばかりの国だから、絶対に攻撃しちゃダメだよ」
「それって、普通よね?」
「……さて、期待しているよ」
模様は強く光って、わたしたちをまたどこかへ連れていってくれる。
目に映るもの全部が真っ白になって、なんだか頭にチリチリする感覚が伝わる……これが魔法の力なのかな?
◆ □ ◆ □ ◆
『ようこそ、リーンへ!』
チカチカして見えないけど、わたしたちを歓迎してくれる声が聞こえてくる。
みんなとっても楽しそうで、その声だけでいい人だってなんとなく思った。
「──ッ! オブリちゃん!」
ティンスお姉ちゃんが叫んだ。
なんでだろうって思っていたら、ぼやけていた目の前がくっきりと映るようになった。
「どうしたの、ティンスお姉ちゃん?」
「どうしたって、魔物じゃない。すぐに警戒しないと──」
「大丈夫だよ。うん、みんないい人みたい」
「人って……まさか、期待ってこのこと?」
お姉ちゃんが後ろに居るお兄ちゃんの方をジロッて見ると、お兄ちゃんは何も言わないで首を縦に振る。
「まあ、そういうことだな。さすがはオブリだ、俺を見抜いたからには本質を視るだけの素質があると信じていたぞ~」
「えへへ~、そうかな~?」
「……急に素を出したわね? さっきのヤツは、そのオブリちゃんが見抜いたってのと、もしかして関係ある?」
「その通り。天才オブリちゃんの冴え渡るアイデアが、俺のステータスを見抜いた。だからこれ以降は、可能な限り情報をオープンにしてやる……ここに来た以上、どうせバレるからな」
お兄ちゃんはわたしの頭を撫でながら、お姉ちゃんとお話ししている。
周りに居る魔物のみんなは、それをとても羨ましそうに見ている……あれ、わたしも見られているのかな?
お話している時間が長かったからか、見ていた男の子の一人が、
「──メルス様!」
「おう、どうしたんだ?」
「この人たちは誰?」
「来るとは言ってたけど、そういえば紹介していなかったな……二人とも、挨拶してやってくれ」
お兄ちゃんにそう言われたから、ティンスお姉ちゃんといっしょに挨拶をする。
「わたしはオブリガーダ、オブリって呼んでください」
「ティンスよ。いちおうこの男の配下? みたいな感じね」
「……まあ、いいか。そんなわけで、これから見かけても悪人じゃないから報告しなくていいぞ。それじゃあ──解散!」
『はーい!』『はい!』
大人の人も子供の人も、みんなこの場から離れていく……お兄ちゃんって、いったいどういう人なんだろう?
そんなことを思っていると、遠くから誰かがやってくる。
「メルス様、お出でであればワレも呼んでいただきたかったのですが……」
「お前まで居なくなると、なんだか統治的な問題がな……まあ、来ちまったもんはもう仕方ないが。二人とも、こいつはリョクで俺の従魔だ。リョク、こいつらはオブリとティンスだ。互いに仲良くやってくれ」
おでこから、角が出ている緑色の髪が生えている大人の人。
お兄ちゃんにリョクって言われたその人はわたしたちを見て、頭を下げてくる。
「初めまして、お二方。『鬼人王』のリョクと申す者だ」
「オブリだよ!」
「ティ、ティンスです……『鬼人王』って、その……」
お姉ちゃんが何かに驚いているみたいだけど、そのキジンオウって何か驚くことなの?
お兄ちゃんの後ろから来たリョクさんだけど、お兄ちゃんは呆れたみたいな顔をして後ろを見て──
「おいおい、ティンス。俺にはそこまで驚かなかったのに、リョクには……って──誰だよお前……」
「「えっ?」」
「申し訳ありません、我が主。この進化した体をまだお見せできておりませんでした。遅れたのもそれが理由、肉体の同調を行おうと迷宮に向かっていたため……」
「あ、ああ、分かった……そうだな、うん。それについては何も咎めない。にしてもリョク、見違えたなぁ……」
リョクさんは魔物だから進化する。
お兄ちゃんは昔のリョクさんの姿を知っているけど、今の姿と違っていたから分からなかった、ってことかな?
「我が主に焦がれた結果、このような姿となりました。よりいっそう、我が主の貴さを味わえるこの歓び! ……誠に感謝致します」
「そ、そうか……さて、せっかくだからリョクには指令を与えよう。この二人に国を案内して、神殿へ連れていってほしい。もうレベルが最大まで達しているんだ」
リョクさんはお兄ちゃんの指令を訊いて、力強く頷く。
けどとっても楽しそうで、顔が緩まないように気を引き締めているみたいに見える……マジメな人なのかな?
「メルス様はその間、どちらへ?」
「そうだな、ここまで頑張った二人にご褒美でも作っておこうと思ってな。ついでに今のリョクに合わせた武装も考えておこう。それなりに時間が掛かるから、案内はゆっくりしてくれていいぞ」
「ハッ!」
「それじゃあ二人とも、あとはリョクに任せておけ。俺はパパッとお前たちのオリジナル武器を……って、そういえば武器種を訊いてなかったな」
そう言われたので、わたしとお姉ちゃんは使いたい武器の種類を伝える。
ふむふむと頷いたお兄ちゃんは、すぐにまた足元に綺麗な模様を浮かべてどこかに移動していった。
──なんだか、お兄ちゃんと逢ってからワクワクすることばっかりだよ。





