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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と生命最強決定戦 十三月目

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偽善者と一回戦第四試合 後篇



「シャインの奴、アレを見つけてたとは。結構低確率に設定してただろ?」


《はい。変更なさいますか?》


「せっかくだし、あとでキャンペーンという形で確立を上げてやれ。その間は安めに叩いとけよ」


《畏まりました》



 俺たちが話しているのは、シャインがちょうど発動させた石についてだ。

 実はアレ、超激レアな鉱石で、プレイヤー間で超高額の取引がされている一品である。


 名前は『天治癒石』。

 持ち主の致死傷すら癒すことができる、まさに天使の慈愛(エンジェルキッス)とも呼べる逸品。

 ……実際、通称はそんな感じだ。


 そんな鉱石、第四世界(ラントス)でも取れます。

 鉱石採掘ダンジョン──『奇石の採掘場』の中で、ごく僅かのみではあるが。



「ちなみに、奇石とは奇妙な石という意味が本来のものであるが、今回のネーミングの場合は奇跡の石という意味だぞ」


《解説、ご苦労様です》


「シャインがどこでそれを加工したかはしらないが、たぶん街のどっかだろうな」



 そういったサービスも行き届いている。

 ウチのダンジョンで稼げるポイントを消費することで、どんな店でもびた一文払わずにサービスを受けれるようにしていた。


 中には鍛冶のプロフェッショナルみたいな人も居るので、激レアアイテムだろうと武器に組み込むことができる。

 ……あっ、錬成の可能性もあったか。



《しかし、アレは主様の使用する鉱石には劣るとはいえかなり低確率に設定したはず……もう少し下げますか?》


「いや、今回参加者が使ったアイテムは、全部確率を上げておこう。キャンペーンとでも謳っておいて、なんだか分からない課金勢のテンションを再現してくれ」


《……畏まりました》



 ここは頭で考えるのではなく、心で感じる部分である。


 ガチャを引き、いつの間にか使うポイントが枯渇している経験はよくあるだろう。

 無意識的な本能が目的の品を求め、理性を切り離し体を動かすあの現象だ。


 それを行い、さらにアレを──



「って、今は試合観戦の最中だった!」


《そちらは後ほど、アンとコアに協力してもらい微調整を行っておきますのでご安心を》


「悪いな、仕事を増やして」



 ただでさえ、激戦を重ねてダンジョンにかなりの影響が及んでいる状況。

 ダミーコアやモンスターに一部を肩代わりさせているものの、レン自体がやらねば維持できないことがかなり多い。


 対神とはいえいろいろとやらかした弊害だろうか……本当、あとで労わないと。



  ◆   □   ◆   □   ◆


「これは『天治癒石』って言って、魔力を籠めたら治癒力を高めてくれる石なんです」


「ですが、どうして刺す必要が?」


「直接使った方が効果が高いから……ですかね? ご主人様なら、そうしますし」


「……そんな感じがしますね」


 実際のメルスは、そんなことをしなくてもすぐに<物質再成>で修復するが……二人のイメージではたしかにやりそうだった。


「天治癒石を剣に組み込み、魔剣『治天死』は完成しました。持ち主に癒しを、敵対者に死を……いい剣でしょう?」


 魔力が籠められ、剣は再度温かな光を周囲に放つ。


 仕掛けが分かったところで、剣が離れなければ回復手段を奪うことはできない。

 たった一本の剣とはいえ、シャインもそう簡単に手放す気はなかった。


(さっき“闇迅脚”が使えたってことは、あの光には射程距離がある。けど、それでも攻撃としては使えない……どうにか“光迅”だけで乗り切らないと)


 フィレルの背後で今も輝く光の環。

 破邪の力を持つ光によって、悪しき力が元で目覚めた闇の力は使うことができない。


 シャインは名前に合わない力に頼ることを諦め、本来使うべきであった“光迅”だけで勝負を挑む。


「──“光迅翼”!」


 翼を再度生みだし、勢いよく地面を蹴る。

 超低空飛行で接近し、近接戦闘を行う。


「“光迅鎧”、“光迅剣”、“回転斬(ロールスラッシュ)”」


 光の鎧を身に纏い、その恩恵で身体能力を高める。

 片手半剣に力を入れると、足を軸にして一回転する。


「“猛虎烈爪(タイガークロー)”」


 フィレルは虎の咢を両手で形取り、振り回される剣を受け入れる。

 自身の元まで剣身が届きそうになったその瞬間──高速で指先が動く。


「“光迅盾”」


 それをシャインは盾を生みだし、自身の心臓の辺りを防御することで阻む。

 同時に翼をはためかせ、さらに加速した状態で剣を突きつける。


 自身は爪の一撃を防ぎ切る絶対的な自信があるため、行った賭けの一撃。

 ──フィレルの限界がこれだけであったなら、それは成功しただろう。


「“血霧化”」


「っ……」


 自らの姿を霧へと変えたフィレルは、その体勢を維持したまま回転を終えたシャインへ近づくと──爪を振るう。


「その技……吸血、鬼?」


「切り札は、ここぞという時に切らねばなりませんよ? もっとも、眷属の皆様は把握していますので、ここでしか切り札に成り得なかったんですがね」


「──ははっ、完敗だよ」


 盾も鎧も貫かれ、シャインは心臓を抉り取られる。

 これまで吸血鬼としての力を解放したことで、すべてを破壊するだけの膂力が発揮されたからだ。


≪試合終了! 勝者──フィレル選手!≫


「ふふっ、吸ってみたかったですね」


 握っていた心臓は粒子と化し、血もまた空気へ溶けていく。

 消えていく粒子を眺めながら呟く彼女の瞳は、紅に染まり爛々と光っていた。



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