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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と生命最強決定戦 十三月目

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偽善者と一回戦第一試合 その01

予め注意を──まだ始まりません



≪──まさかの一回戦第一試合! メルス選手VSウィー選手! メルス様、いきなりのご登場です! ウィー選手は『紅蓮都市』を統治しております眷属のお一人、熱い闘いになることは間違いなしですよ!≫


「えー……」



 抽選結果、いきなりの激戦が用意されてしまう……なぜだ。



《凶運だからでは?》


「……全部を運のせいにしたら、なんだか負けな気がしてきた。でもこうなると、逆に分かりやすいよな──この後、全部眷属と戦うことになるんだし」



 眷属が負けることはないんだから、ある意味俺が楽をできたのは最初だけだった。


 しかし、一回戦の対戦相手はウィー。

 赤色の世界にある、セッスランスと呼ばれる滅んだ国のお姫様。

 職業『大将軍』に就き、戦略に富んだ頭脳の持ち主でもある武人。



「幸い、一回戦は何をしても問題ない。勝てばいいんだ、勝てば……」


《それもそうですが》



 さすがの言い方に、アンさんも訝しげなご様子だ。

 まあ、俺もこの台詞(セリフ)を訊いたらそりゃあ怪しむからな。



「思考制御が持つか分からないが、相手が眷属なんだから致し方なかろう。一割の力でどこまで抗えるか挑戦だ」


《というよりメルス様。一割で大陸を壊せる方は、そのような物言いできませんからね》


「だから抑えてるんだろう。そんな異常現象が観測されたら、速攻でバレて世界大戦でもやることになるだろ」



 ステータスを分割することで、どうにか抑え込んでいるこの現状。

 それを応用して、何個か面白いことを考えてはいるんだが……日の目を見るのはいつになることやら。



「──限界突破はいいんだっけ?」


《全解放時の使用は控えていただきたいですが、5割程度までならば問題ありません。もし、それ以上の解放時に使えば……おそらく肉体に影響が及ぶかと》


「それぐらいなら大丈夫だ。眷属とぶつかることを考えれば、多少のリスクは必要になるだろう」



 舐めプが決して通用しない相手なんだ。

 すぐに<物質再成>で戻せるのだから、策の一つとして覚えておこう。



「それじゃあ行ってくる。苦戦は間違いないけど、それなりに体を張ってくるからな」


《……御武運を》



 そうなればいいんだけど……やっぱり俺って、凶運だからな。



  ◆   □   ◆   □   ◆


≪──お待たせしました! 第一試合、選手入場です!≫


 わー、と上がる歓声を耳にしながら、彼らは舞台へ上がっていく。


「……ここまで盛り上がるものなのか。父上にこういった舞台には上がらないよう言われていてな、新鮮な気分だ」


 ウィーゼルは思い出を振り返り、少しずつ近づいてくる対戦相手に話しかけた。


 紅色に輝く髪は、三つ編みに編みこまれ後頭部の辺りで纏めてある。

 他者を寄せ付けない強めの印象を少し感じさせる相貌は、フッと緩んでいた。


「耳を澄ませてみれば……どいつもこいつもウィーを応援してやがる。なあ、俺ってさっき、世界を統べる者とかカッコイイ宣伝をされてたよな? もっと敬われてもいいはずだよな?」


 一方の対戦相手であるメルスは、観客たちの声援に顔をしかめていた。


 白黒雑じりの髪をガシガシと掻き、心の中で罵倒を重ねながら遠い目をする。

 恨むべくは、自分であることをよく知っているため反論ができないのだ。


 観客も観客で、メルスが聞こえていると理解して言う者がいるから厄介であった。



「放蕩王ともあろう者が、それくらいでへこたれては名折れだぞ」


「……だって、みんなして俺のこと負けるって思ってるんだもん。見ろよ、あの倍率を」


「ふっ、あれは光栄なものだろう」


 彼らの視線の先では、彼らの試合結果を予想するギャンブルのオッズが堂々と表示されていた。


 ウィーゼル・フォナ・セッスランス──倍率:1.1

 メルス──倍率:1.5


「ツッコみづらいよ、あの数字。けど、明らかにウィーの方が倍率が低い。つまり、みんなお前が勝つことに期待してるんだろう?」


「……そういうことでは、ないんだろうな」


 彼女は理解していた。

 メルスが勝利すると解っているから……それとからかうために、自分へ賭けたのだと。


 今や絶対的な信頼を勝ち得たメルスが敗北するなど、国民たちは誰一人として本当の意味で思ってなどいない。

 彼がこれまでどのようなことをしてきたのかは、彼ら自身がよく知っているのだから。


「むしろメルスに賭けた方は、いろいろな事情があるのだろう。人数と金額を調整しておけば、倍率など自由に操作できる」


「……ふんっだ、いいもん。俺に賭けてくれた奴を後悔させないよう、絶対に勝ってやるからな」


「それならば、私も応じよう。なんせ、メルスよりも賭けてくれた人数が多いのだし」


「ぐふっ……!」


 実際のところ、国民たちはどちらが勝っても構わないように賭けを行っている。

 福祉を国が保証しているため、国民たちは生きるために必要な金銭を切らしたことがほぼ無くなっていた。


 しっかりと働けば、その仕事内容に応じて金銭が与えられる……ある意味夢のような職場で大人たちは働いている。


 そんな環境なため、大金を使ってもその分バリバリ働けばすぐに黒字に戻ってしまう。


 ……こういったときぐらいしか、お金で遊ぶことができなくなっていたのだ。



 閑話休題(じごうじとくだった)



 場は静まり、息を呑んで会場の中心を前のめりで覗き込む。

 圧倒的な力の奔流がぶつかり合い、今や今やと始まりを望んでいた。


 それを見た進行役は、隣で座る少女から了承を得て──魔道具に口を当てる。


≪──準備ができたようですね? それでは一回戦第一試合……開始です!≫


 そして、幕は開く。



オッズ云々は以降の話で登場する予定はございません

ただ、そうしたことが行われた&国民の財布事情を書きたかったが故です

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