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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
第〇二章 過去は可変と簒奪し嗤う

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02-36 復活の王都

加筆・修正しました(2019/03/26)



「にわかに信じがたい……じゃが、そう言って終わらせることもできぬ話じゃな」


「いや、こっちも信じてもらおうと思っているわけじゃない。たとえ思われずとも、こっちはやることを決めているからな」


「のぅ……この国を手に入れて、そちはいったい何をするのじゃ?」


 さすが王、俺のわけの分からないような話でも、とりあえずの仮定(IF)を考えてくれる。

 そのうえで、王としての決断をしてくれようとしていた。


「さっきからの話の続きだが、要するにこの世界は過去のモノだ。だが、映像の世界とは少し違う……見て分かったと思うが、すでに歴史は変わっている」


「では、なぜ儂らは生きておる」


「それこそ、神の選択ってわけだ。未来から来た俺たちの干渉もまた、その神様によって決められたことだ。それにより、あの世界とは異なる分岐となったんだ……」


 もちろん、あのままの可能性もあったんだけどな、と重ねて伝えておく。

 実際、何もしなければ運命も大きく変化することはないだろう。


 俺たちプレイヤーの干渉が、いっさいの変化を齎さないということはないだろうが……国が亡ぶという大きな未来であれば、確実にそのままである。


「なあ、ネイロ王国の南には何がある?」


「何、とは……あそこには何もない、不毛な土地ではないか」


「あそこにはいずれ、神々によって町が造られることになる。誰が管理するでもない、あくまで形だけの中立が保たれたな」


「あの地を……そのような場所へ」


 イベントエリアとしての過去の王都に、高山を越えたフィールドは存在しなかった。

 透明な壁がそれを拒絶し、箱庭の中であると強く示していることを確認済みだ。


「それはいいや。ちょっと、気になったから訊いてみたことだ。十年の未来、神々はいくつもの可能性を想定していた。今、俺たちが居るこの世界がそのまま十年経った未来。映像で見せた、防衛が失敗した未来……他にもたくさんな」


「十年後の者たちは、どうなっておる。ここに居る者の中には、死んでいる者もいるじゃろうが……長命種であれば、十年という月日などどうってこともなかろう」


「そう、俺が言いたかったのはそれだ。あくまでここは、切り取られた過去の世界。それなら、十年という月日はいったいどのようにして俺たちの時代に反映される?」


「! まさか……」


 そう、運営が親切に十年分の時間を加速させてくれるという可能性もある。

 創作物でも王道だが、VRの時間を速める機能を使えばそれもできると思う。


 だが、明らかに異なる未来がもう存在しているのだ。

 仮にそうであったとしても、見えてくる答えが存在する。


「同一の存在ではない、ということかのぅ。儂らはメルスたちが立ち去れば、神によって葬り去られる。そして儂らの記憶を持つ異なる儂らが、メルスたちの時代を生きるのか」


「まあ、生きている予定の奴だけだと思うけどな。ジークさん、自分はどう思う?」


「死んでいるのではないか? 儂も年じゃ、それぐらい分かっておる」


「……そうか。まあ、こっちに関しても後回しにしておこう。ジークさんの判断だ、俺にはどうしようもない」


 生死に関する問題、というよりは寿命の問題だからな──今はまだ、抗えないのさ。

 俺たちの話題には誰もざわつくことができない……一言一句を聞き逃さず、自分の未来がどうなってしまうかを知ろうとしている。


「して、メルスよ。結局のところ、国を譲れば状況が変わるのかのぅ?」


「譲る、じゃない俺のモノにするんだ。とはいえ、一時的にだけどな。さっきも言ったんだが、俺たちが居なくなればおそらくここは消される。だが、この国を俺が所有したならどうなる? 時間が延びるんじゃないか?」


「それでも延命でしかないのか」


「まあ、すでに策は用意してあるんだ──世界は一つじゃない、それは言ったよな? だからこの地を、別の場所に移す」


 さすがに黙っていられなくなったのか、このタイミングで大臣の一人が騒ぎ出す。


「馬鹿な! そのようなことを、貴様一人でできるはずがなかろう! いったい、どのようなペテンを行う気だ!」


「……俺は空間魔法が使える。そして、今この世界は過去ではなく現在の世界に繋がっているんだ。だから──魔法陣を使い、別の地にすべてを転移させる」


「んなっ!」


「信じられないか? だが、どう思ってもらおうと俺には関係ない。ジークさん、俺は許可を貰いに来たんじゃない、ただそうすると宣告しに来たんだ。このままだと捨てられるなんて、好きじゃなかったからな」


 台詞(セリフ)はあれだが、いちおう最大限の敬服を行って頭を下げておく。

 これで許されずとも、俺は実行する……偽善者は善人じゃない、独善ではなくあくまで彼らの困っている姿を見て、救おうとしているんだよ。


「……そちを、信じよう」


「国王様!」


「このままでは、儂らに道は無い。嘘と言い切ることもできぬ、何より外部との連絡が取れなくなっていることは知っているだろう」


「そ、それは……」


 ジークさんも、とっくに分かっていた上で話していたようだ。


 そう、ここがイベントエリアだとしてそれ以外の場所はどうなっている?

 そんな場所まで構築されているわけもないので、この国より外にある場所との連絡なんて取れるはずがないのだ。


「メルス、この国を……いや、民たちを救ってほしい。そのためであれば、老骨など好きに使い潰してくれ」


「……ああ、分かっている」


 そう言うと、ジークさんは大臣の一人に一枚の紙を持ってこさせた。

 その内容をしっかりと見て把握し、ジークさんの覚悟を認識する。


 理解力のある国王様なもんで。

 だからこそ、俺もここまでして偽善をしたいと思えたのかもしれないな。


 紙を大臣を介してジークさんに返すと、魔力を紙に流して詠唱を行い──叫ぶ。



「我、ネイロ王国第二十九代王、ジーク・ヴルム・サウンド! 新たにメルスを王とし、継承することを宣言する!!」



 渡された際に魔力を少し吸われたが、それによって認証がされたようだ。

 小さな光がジークさんから抜け、紙を通ってから俺の胸の中に入ると──紙が一瞬輝きその文面を書き換えていった。


「受け取れ、メルス──いや、第三十代ネイロ王国国王よ」


「ああ、任せておけ」


  ◆   □   ◆   □   ◆


 第三世界


 少々無茶をしたが、可能な限り広さを確保した新たな世界を“空間創造(ガーデン)”を用いて準備しておいた。


 成長する{感情}が内包する能力は、それらの魔法の維持魔力を換算しても、それ以上に俺へ異常な回復量をもたらす……まさにチートだよな。


「まあ、賭けには勝ったからいいんだけど」


 オンゲーでも、イベントエリアはすぐに削除されるというわけではない。

 再利用するにも少々の間があるし、特殊なコードを入力することでそのエリアに潜り込むことができる……なんてゲームもあった。


 そのため、俺もすぐに世界が消されることは無いと踏んでいた。

 VRMMOという世界初のゲームなので、少しだけ心配であったが……策はそれとは別に用意してあったので、気にしていない。


「それじゃあ、歩きますか」


 ゆっくりと、丁寧に意識しながら何もない第三世界を練り歩く。

 初めは世界の端まで行く円を、そしてそこから模様を描くように……陣を構築するように足跡を刻む。


「まあ、要するに魔法陣でござる」


 その規模の関係もあって、円の中に刻む線の数は膨大な量となっている。

 その一本一本に適切な量の魔力を籠め、一ミリのズレも許されない繊細な操作が求められることに……加護のお蔭でセーフだが。


「結構大変だけど、そういう地道な作業も時には必要だよな。うん、偽善者らしく活動できていればいいけど……」


 少なくとも、彼らの救いを求めることさえできない危機のために偽善者は働けている。

 仮にとはいえ、王の座まで受け取って実行しているんだ……必ずやってやるさ。


「さて、これで準備は万全……かな?」


 一度勢いよくジャンプし、物理法則を軽く無視した飛躍をする。

 上空から見えた魔法陣は、創作物でもよく描かれるような複雑な模様となっていた。


 一種の芸術とも呼べるようなそれを、今回消費することで術式は完成する。

 創造にも多くの魔力を消費したが、それ以上に魔力を使う必要があるこの儀式──それだけ人の命を賭けたこの魔法に、対価が必要なのだと強く認識してしまう。


 どれだけ嚥下しようと溢れる唾、緊張感に震える体。

 それを押し切り、魔法陣の補助を受けて詠唱を始め──発動する。



「……■■■■──“時空転移(テレポート)”!!」



 空間を、そして時をも超える時空魔法。

 個人にしか使えなかったその魔法を、魔法陣によってその影響範囲を拡張した。


「あがががっ……!」


 もちろん、その代償はひどいものだ。

 創造に慣れていた俺ですら、魔法陣に吸い込まれる膨大な魔力量に恐怖を抱いた。

 魔力と共に体の熱をも奪われ、意識は少しずつ薄れていく。


 いったいどれだけの無茶を、自分はしようとしているのだろうか……。

 摂理に反する所業には、必ずこのようなことが起きるのだろうかと。




 魔法陣は魔力を糧に起動し、世界を眩く白い光で包み込む。

 何もない真っ新な空間は、魔法陣の駆動に合わせて揺れ動く。


 それは、世界が軋む音だったのだろう。

 異なる時空を繋げ、存在する箱庭を奪おうとする盗人に対する最大限の抵抗。

 許されざる行いに対し、拒絶の意を示した最後の足掻き。


 歯を食いしばり、魔力を絞り出す。

 少しずつ光っていく魔法陣を掠れる視界で確認しながら……持ちうるすべてのスキルを組み合わせ──想いを、願いを込めてその幻想を叫ぶ。


「さぁ、我が下へ現界せよ!」


 魔法陣が過去最大級に光を放つ。

 因果を捻じ曲げ、非ざる過去を、在らざる今へと繋げていく。

 起きるはずのないこの現象に、人はなんという名を与えるだろうか。


 ──『奇跡』だとは、誰も思わない。



■■■にとって、今回のイベントは実験です

祈念者たちが及ぼす影響が、どれほどのものなのか……それが現実に反映された場合の成果がどういったものなのか

それが判明すればこのイベントエリアは不要となります

■■■は慢性的な■■不足なため、可能な限り■■は再利用して維持しておきたいのです

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